行政書士試験

行政書士試験の振り返りと今後の勉強法

2018年度行政書士試験の結果が発表されましたので振り返ってみましょう。合格者数、受験者数、合格平均点に注意し本試験問題や発表された資料を分析して、2019年度行政書士試験の対策と勉強法を考えます。

山本 直哉

執筆者:山本 直哉

行政書士ガイド

2018年度行政書士試験結果のポイント

過去の行政書士試験を振り返り、資格に合格するための勉強法を考える

過去の行政書士試験を振り返り、資格に合格するための勉強法を考える

1月25日に2018年度行政書士試験の結果の発表がありました。同時に公表された資料を読み解くと、2019年度本試験にむけて、以下の3点に注意が必要です。
  • 合格者がほぼ5000人(4968人)であったこと
  • 受験者数が3万人台であったこと
  • 合格者平均点がほぼ200点(197点)であったこと

まず、合格者が5000人であったことです。需給バランスにより、行政書士会から毎年5000人前後の合格者数が要望されているのでないかとの話もあります。実際、ここ数年、5000人前後の合格者数で推移しています。そして、合格者数の調整を記述の採点で行っている印象をぬぐい切れません。行政書士試験は、基準点に達すれば合格できる絶対評価の試験ですが、実質的にみれば合格者5000人の相対評価の試験と言えるかもしれません。合格枠5000人の相対評価の試験と考えた方が実情にあっているかもしれません。

次に、受験者が4万人を割り込んだことです。近年は受験者の減少に歯止めがかかってきています。そこで、2019年度は、受験者は35000~40000人に落ち着くと思います。そのうち5000人が受かる試験だとイメージしてもらえたらと思います。

最後に、合格者平均がほぼ200点でした。私は平均点が高いとの印象を受けました。おそらく230点前後の高得点の合格者と190点前後の合格者に二分されているのではないでしょうか。高得点の合格者は、司法試験、司法書士試験、公務員試験など他の国家試験受験者だと思います。行政書士試験を相対評価の試験と考えると、行政書士試験だけの受験生は、少し背伸びをした勉強(民法だけ)をしてもいいかもしれません。民法の本試験に関しては、過去問だけでは対応できず、また、問題のレベルが少しずつあがっているように思うからです。
   

2018年度本試験の分析と一般知識の難易度について

なお、試験問題は行政書士試験研究センターでダウンロードできます。

■一般知識の実務化傾向について
2018年度試験について、試験後に話題となったことは「一般知識の難化」です。難化の理由は、行政書士実務を意識した一般知識が多く出題されたためです。たとえば、入管実務と関係の深い技能実習生の出題(問題47)、墓地申請実務とも関連のある墓地等からの出題(問題51)、風営法実務と関係の深い特殊性風俗の出題(問題53)などです。もしこの傾向が続くならば、次は行政書士の主たる業務である「建設業」と「運輸業」からの出題が考えられます。

また、行政書士会がADRに関与している、「外国人の人権」「動物法務」「敷金問題」「自転車事故」も狙い目でしょう。実際、動物法務は「犬」の出題があります(平成25年問題50)。当時、「犬」の問題が出たと一部受験生から非難の声があがりました。しかし、行政書士会は動物問題のADRをしています。また、動物法務に携わる行政書士もいます。私自身も動物法務の実務経験があるので、特に驚きませんでした。行政書士実務を意識した一般知識の出題は、2018年度がはじめてではありません。

注意しなければならないのは、基本的な問題もしっかりと出題されていることです。まず、過去問レベルと言えるのは問題52です。問題50もそれほど難しくありません。この2問は落とせません。次に、事前に準備が可能である個人情報保護法から2問出題されました。そのうち問題56問目は没問になってしまいましたが、問題57は基本的な問題でした。没問による全員正解にも助けられましたが、ここでも2問はとれます。

さらに、長文読解も例年通りのレベルで、3問中3問、もしくは、2問は取れます。このように、基本的な問題をしっかりと得点すれば、一般知識の基準点(足切り)の6問には到達できます。行政書士実務に関連した一般知識の問題に過度に敏感にならなくてよいと思います。
 

行政法と民法の難易度

ここでは主要科目である行政法と民法を主に扱うことにします。行政法は、択一に関しては過去問レベルの問題が多く、易しかったと思います。8割はもちろん9割の得点も十分可能でした。多肢選択式も過去問レベルと言ってよく、易しかったと言えます。ただ、行政法の記述は例年に比べると、難しかったと思います。それは「事例を読み解くことができるか」を試されたからだと思います。要求された知識自体は過去問レベルでした。

「条文と事例の相互変換」は法律の勉強では大切とされますが、法律系国家試験においては、加えて「過去問の事例化」という意識も大切です。いずれにせよ、2019年度の行政法の試験対策は、過去問をしっかりと勉強することで対応できると思います。

問題は民法でしょう。民法の択一は過去問レベルを超えて出題されることが常態化しています。今年も択一で難しい問題が出題されました。しかし、民法の過去問を離れて勉強をしようとすると何を勉強していいか迷ってしまいます。時期の悪いことに、今、書店で並んでいる民法の新刊本はすべて改正民法対応で、現行民法が出題される2019年度試験では使用できません。受験生は予備校を頼らざるをえません。

2019年度の民法の試験対策は、予備校指導の下で、過去問から離れた(ある程度背伸びをした)難しい論点や細かい条文などを習得する必要があるかもしれません。イメージとしては、司法試験の民法で問われる基本的な論点を網羅するような感じでしょうか。

基礎法学と憲法は例年通りの出題でした。商法・会社法は、会社法がやや難しくなった印象を受けます。特別に傾向が変わったという印象はありません。

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