食と健康

酸化した緑茶は体に悪い?お茶を水筒で持ち歩く4つの注意点

【管理栄養士が解説】緑茶の酸化と健康への影響、お茶を水筒で持ち歩くデメリットは? 水筒の中で酸化した緑茶は有害で危険なのではと不安に感じる人もいるようです。緑茶の酸化の体への影響と危険性の有無、お茶を水筒で持ち歩く際の注意点とポイントを解説します。

平井 千里

執筆者:平井 千里

管理栄養士 / 実践栄養ガイド

緑茶の成分・栄養素と健康効果

酸化した緑茶は体に悪い?

日本人になじみの深い緑茶。水筒に入れて持ち歩きたいけれど、酸化するからよくないという声も……。緑茶の持ち歩きはNGなのでしょうか?

日本人なら1日1杯は飲んでいるのではないかと思うほど、愛飲されている緑茶。美しい緑色と芳醇な香り、苦味とうま味、甘味の絶妙なバランスで、年齢・性別を問わず多くの人が好きな飲み物の一つに挙げられると思います。

そんな緑茶(浸出液)の栄養は、エネルギーとなる糖質、たんぱく質、脂質をほとんど含まない「ノンカロリー」。一方でビタミンCを豊富に含み、狭義の意味では栄養素ではありませんが、カテキン類、ポリフェノール類、テアニン、サポニンなど健康効果をもたらすとされる成分が豊富に含まれていることで知られています。

おいしさだけでなく、こういった健康効果に魅力を感じて、緑茶を愛飲している人もいるかもしれませんね。

<目次>  

緑茶は酸化すると危険?「宵越しのお茶を飲んではいけない」は本当か

前述のように、淹れたての緑茶には健康効果の高い成分がふんだんに含まれており、芳醇な香りと味を楽しむことができます。そしてカテキン類、ポリフェノール類などは「抗酸化作用」があるため健康効果をもたらすとされていますが、これらは自身が酸化することで他の成分の酸化を抑えています。

すなわち、「他の成分が酸化されるより先に酸化する=酸化しやすい性質をもっている」ということです。そのため、抽出した緑茶は抽出した瞬間から酸化が始まり、風味が変化していきます。

そして、「宵越しのお茶は飲んではいけない」といった古くからの言い伝えもあり、ここから「酸化したお茶は体に悪い」と考える人が現在も多いのではないかと考えられます。しかし実は「宵越しのお茶を飲んではいけない」といわれているのは、浸出液のお茶の方ではなく、急須に残った茶葉の方を指しています。

冷蔵庫のなかった時代は急須の中で茶葉が傷みやすかったため、このような言い伝えができたのでしょう。当然、現代でも暑い時期などは、急須の中に茶葉を入れっぱなしにしていると、すぐに茶葉が腐敗してしまいます。お茶を入れたら早めに急須を洗うようにしましょう。
 

「酸化した緑茶は体に悪い」は誤り!健康を害する危険性はない

「酸化」という言葉は、特に近年は美容的な観点で忌み嫌われているように思います。「酸化=加齢」というイメージを持っている方も多く、あまりよい印象は持たれていないかもしれません。

ただ、緑茶を含む「お茶」に限っての話にはなりますが、実際に抽出した後で時間が経って酸化したものを飲むことで健康に悪影響を与えるかというと、そういうことはありません。

時間が経ったお茶は香りや味はやはり落ちてしまいますが、水筒に入れて持ち歩いたお茶を飲んでいたからといって、健康を害することはありませんので安心してください。

ただし、水筒にせよペットボトルにせよ、本体に直接、口をつけて飲むことが多いでしょう。ここから雑菌が入って中のお茶が腐敗してしまうことは考えられます。

1日持ち歩く程度であれば問題ないという研究報告はあるようですが、さすがに2~3日と入れっぱなしのものを持ち歩くことは、衛生上の観点からやめた方がいいと思います。
 

緑茶の酸化を防ぐ4つのコツ・お茶を水筒で持ち歩く時の注意点

緑茶を水筒で飲む

緑茶の酸化を防ぐには、飲むタイミングに合わせて作るのが一番

酸化しても健康に害がないとわかっていても、「酸化してしまったら緑茶を飲む意味がない」と感じる人もいると思います。確かにポリフェノールやカテキンの健康効果は非常に有意義ですから、これがなくては緑茶を飲む意味が半減してしまうというご意見もごもっともです。

そこで、外出先で淹れたての緑茶を飲むための、簡単にできる4つのコツをご紹介しましょう。

■緑茶を淹れるのは飲む直前にする
水筒には熱湯だけを入れ、ティーバッグの緑茶や1回分ずつ個包装になった粉末茶を別に持って行き、飲むタイミングに合わせて緑茶を作ります。こうすれば外出の度に1度だけですが、淹れたての緑茶を飲むことができます。シンプルですが、お茶屋さんに教えてもらった方法です。

■低温で持ち歩く
緑茶の酸化は温度が高い方が早くすすみます。そのため、お茶を淹れる際に氷で急冷し、冷たい状態で持ち歩きます。この方法で淹れると氷でお茶が薄まるので、最初に濃いめに淹れておくのがよいでしょう。

同様に「水出し緑茶」を冷たいまま持ち歩いても、酸化は遅くなります。水出し緑茶はカフェインが抽出されにくいという話もあるようですので、カフェインの摂取量を気にしている人は水出し緑茶にするのもよいかもしれませんね。

ただし、水出し緑茶の場合は加熱殺菌が難しくなるので、加熱した他の緑茶よりも雑菌が繁殖しやすいのがやや難点。あまりに長時間、持ち歩くことは控えた方がよいかもしれません。

■レモン汁を1滴たらす
レモンに含まれているビタミンCの抗酸化作用を利用して、酸化を遅らせる方法です。味が変わらない程度に入れればOKです。

■焙煎度の高いほうじ茶、番茶などを持っていく
私がよくやる方法です。「ほうじ茶」「番茶」など焙じた茶を水筒に入れて持ち歩きます。どうしても緑茶でないと、というこだわりがなければ、もともと茶葉に火が通っている分、これらのお茶の方が変色や味の変化が緑茶より遅いように思います。

ペットボトルのお茶も手軽ですが、エコで経済的で自分の好きなものを好きな温度で飲むことができる「水筒」は、一度使ったら手放せない人も少なくないでしょう。水筒を利用しようか迷っている人も、ぜひ上手に水筒を使って、外出先の飲み物を楽しみましょう。

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