どうして「子育て」はうまくいかないんだろう?

落ち込む母

仕事は好きだったし、それなりに評価もされてきた。なのになぜ「母親業」はうまくできないんだろう……。

今の時代、ほとんどのママが社会で働いた経験があると思います。産休に入ったり、出産を機に退職する際に、「あなたがいなくなるのが不安」と言われてきたような女性が、子育てにおいて陥りやすい悪循環があります。

職場で「まじめで優秀」と評価されてきたママはおそらく、

【1】 遅刻や欠勤はおろか、約束の時間の5分前には準備を整え
【2】 タスクをそつなくこなして、ミスも少なく、涼しい顔で業績を上げ
【3】 嫌な上司への不満や怒りも上手にコントロールして、感情の起伏を職場で出すこともなく
【4】 同僚との関係も良好

という感じではなかったでしょうか。

なので、子育ては初めてだけど、新しいプロジェクトを任されたと思えばいい。頑張ればどうにかなる。そんなふうに思っていたかもしれません。

そんな「まじめで優秀なママ」が、どうして子育てで煮詰まってしまうのでしょう。


仕事のやり方が通用しない子育て

先に挙げた【1】~【4】は、こんなふうにまとめられるかもしれません。

【1】 時間管理ができ、見通しを立てて仕事ができる
【2】 実績をあげられる
【3】 感情コントロールができて
【4】 コミュニケーションが上手

努力をして培ってきたものが、子育てにおいては通用しない。そんなふうに感じているママは多いかもしれません。なぜなら子育てとは、

【1】 夜泣きの時間も、おっぱいの時間も、オムツが濡れる時間も予測できない
【2】 何が実績になるのか、よくわからない
【3】 産後のホルモンの乱れで感情が乱高下する
【4】 赤ちゃんが何を思っているのかサッパリわからない

というものだからです。「できる女性」だからこそ、赤ちゃんに振り回されている自分に戸惑うのかもしれません。感情をコントロールできないと自己評価も下がります。


まじめに取り組みすぎていませんか?

育児に関わる父親が増えたとはいえ、未だに子育てにおいては母親が多くの負担を負っています。「母親なら、母性で楽々できるはず」なんて無邪気に思っている男性も少なくありませんし「子育てはひとりでやってきた」という上の世代の女性たちからのプレッシャーもつらいものがあります。

2017年、仕事・家事・育児のすべてを母親がひとりで回す「ワンオペ育児」が問題になり、「つらいよ、ひとりでは無理があるよ」と思っているママたちの多さが可視化されました。

「子どもを預けて働くなんてかわいそう」「家事をしっかりやらなくてだらしない」と、まるで子どもを犠牲にして趣味で働いているかのような扱いを受け、「ならば、子育ても家事も完璧にしないと」と、追われるような毎日を送っているママたちは少なくありません。

まじめで優秀なママほど、なにもかもに全力を注いで息切れしがちです。また、疲れてくると「人に頼むより、自分でやったほうが早い」と思ってしまいがちになり、ついついひとりで抱え込んでしまいます。そして周りはそれを当たり前だと思い……。既視感ありませんか?


まじめで優秀なママにありがちな思考

心理療法のひとつである「認知行動療法」では、自分や周りを追い込みがちな「認知のゆがみ」に焦点を当てます。認知の「ゆがみ」というと、悪いもののように思ってしまうかもしれませんが、要は「考え方のくせ」のことで、誰しも多かれ少なかれ持っているものです。

まじめで完璧主義な人に多いものに「べき思考」「白黒思考」があります。

まじめで完璧主義というのは、長所です。仕事ができる人は、たいていそういう傾向を持っています。ただ、それが行き過ぎると、自分や周りをしんどくさせてしまいますので、思い当たるところがないか、チェックしてみましょう。


チェック1)「べき思考」

「~するべき」「~して当然」「~なんてありえない」という考えです。自分の中に「○○はこういうもの」という確固たるイメージがあり、それに当てはまらないと落ち着かなくなってしまいます。

「母親なら、完璧な育児をするべき」とまで思っている人は少ないとしても、「女が家事をするべき」「母親なら子どもを愛するのが当然」「自分の子どもを虐待するなんてありえない」といった発言は、ちらちら見聞きします。

「~べき」と自分に言い聞かせているとき、「本当はしたくないけれど、もう限界だけど、『○○だから、しなければならない』と思っている」ことも多いのではないでしょうか。

ゆえに、「べき思考」が強い人は、自分にムチ打って頑張っている分、そうしない人に対して腹が立って「~べきなのに」と、相手を責めたり、見下したりします。

本当はつらかったのにつらいと言えなかった、本当は助けてと言いたかったのに言えなかった人は、同じ我慢を他人にも強いてしまう傾向があります。でも、それはブーメランのように自分に返ってきて、自分の「べき思考」をさらに強めてしまいます。

「べき思考」が強い人は、自分に対しても相手に対しても「理想が高い人」と言えます。しかし、理想と現実のギャップが大きいほど、自己評価は下がってしまいます。

また、子どもに対して「べき思考」が出ると、母子手帳の発育曲線や、発達の目安が気になって仕方がなくなります。「うちの子は、発達が遅れているのではないか」と過剰に不安になってしまうのは、「この頃には、こうなっているべき」という思いがあるからではないでしょうか。

「べき思考」が出てきたら、「~に越したことはない」くらいに考えをゆるめてみましょう。
「早く歩けるようになるに越したことはない。でも、長い目で見ると数ヶ月の遅れなど大したことではない」とか「毎日栄養たっぷりの手作りのごはんを食べさせるに越したことはない。でも、そうできない時もある。数日間でバランスが取れていればOK」とか。

初めての育児は不安がいっぱいなので、どうしても育児書やネットの情報に振り回されがちです。だからこそ、自分と子どもをゆったりと見守ってくれる人とつきあうことが大切です。「この人と話をしていると、母親としてこれでいいのかと不安になる」という人が周りにいるなら、少し距離を置きましょう。


チェック2) 「白黒思考」

物事を「白か黒か」「0か100か」というように判断する極端な考え方です。「完璧な母親じゃないと、母親失格」「9時までに寝かせないと病気になる」「東大以外は大学ではない」といった形で、やがて厳しいルールとなり、どんどん自分や子どもを追いこんでしまいます。

これは「べき思考」とセットになりがちで、時に「3歳過ぎてもおむつが外れないなんてありえない。それは、自分がダメな母親だからだ」といった、非論理的な「確信」に変わったりします。

子どもの発達や発育は親として気になるものですが、子どもの発達や発育を、親である自分の評価に繋げないようにしましょう。

責任感が強いママほど子育てをひとりで抱え込みがちになり、子どもの発達を自分の責任だと思ってしまいます。でも、子どもにはそれぞれ育っていくペースがありますし、子どもと自分の境界があいまいになるのは、あまり健康的とは言えません。子どもは父親の子であり、家族の子であり、地域の子であり、社会の子でもあります。たくさんの人の輪の中で育てることにシフトしていきませんか。


人生も世の中もグレーの濃淡でできています。「白黒思考」が出てきたら、「本当にそうかな?」と、自分に問いかけてみましょう。自分や子どもが「できていない」ことではなく「できていること」に目を向けてみましょう。

何をもって完璧とするかは人それぞれでしょうが、子どもの側からすると「完璧な親」は、窮屈だと思いませんか。「完璧な母親」ではなく「ほどよい母親」を目指しましょう。


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※乳幼児の発育には個人差があります。記事内容は全ての乳幼児への有効性を保証するものではありません。気になる徴候が見られる場合は、自己判断せず、必ず医療機関に相談してください。