グルメ業界も「インスタ映え」が重要に
12月に最新版の「ミシュランガイド」「ゴ・エ・ミヨ」が出版されたばかりで、2017年のグルメシーンはまだ記憶に新しいところです。今年も実に多くのレストランやパティスリーがオープンし、意外な食材が流行し、予想外の料理が話題をさらいました。「インスタ映え」が「2017 ユーキャン新語・流行語大賞」の年間大賞となり、グルメ業界でもフォトジェニックであること、Instagram(インスタグラム)を始めとするSNSで拡散され易いことが重要となりました。
おそらく後から振り返ってみると、この2017年はグルメ業界において大きな一つの分水嶺になることと思います。
では、2018年はどういったものが注目されたり、流行したりするのでしょうか。私は以下のキーワードが重要になると考えています。
それぞれのキーワードを説明していきましょう。
会員制・サブスクリプション(定額制)
飲食店にとって、経営的な大きな課題は安定して売上を立てることです。日本ではノーショー(無断キャンセル)やドタキャンが少なくないので、予約も完全に信頼できるものではありません。かと言って、ウォークイン(予約せずに訪れる)の客ばかりでは、シーズンや天候に大きく左右されてしまいます。こういった飲食店の事情と、食通や美食家などのフーディーズの増加とがあわさって、会員制・サブスクリプションの飲食店が増えています。
会員制・サブスクリプションは、権利を購入した会員だけが訪れることができたり、月額や年額を支払って特定回数無料で食べられたりする仕組みです。
独特の寿司を提供する「酢飯屋」、焼かない焼肉として人気を誇る「29ON」、月額制でコーヒーを楽しめる「coffee mafia」、1日1杯のラーメンを食べられる「野郎ラーメン」などが話題をさらっています。
ファンが飲食店を経済面で支え、飲食店がそれに応えるためにファンを優待するビジネスモデルは、まさにグルメが成熟した日本に相応しいでしょう。
会員制・サブスクリプションは、より多くの食の分野に広がっていき、ますます増えていくと考えられます。
食と映像の融合
2017年のガストロノミーの世界ではミシュランガイドで「フロリレージュ」や「オマージュ」が2つ星に昇格したり、ジビエで有名な「Lature」が1つ星を獲得したりしました。「カンテサンス」「レフェルヴェソンス」を始めとするモダンフレンチが主流となり、「ラ フィネス」や「Takumi」といった独自の哲学や強いこだわりを持つレストランが支持されているのも頷けます。「NARISAWA」「TAKAZAWA」を始めとしてイノベーティヴなレストランも増えてきましたが、「フロリレージュ」のようなカウンターで見せるモダンフレンチが注目されたり、「タパス モラキュラーバー」や「セララバアド」のように一斉スタートして食事を展開するエンターテインメント性の強いレストランもひとつのジャンルを形成しています。
さらには、プロジェクションマッピングを使った「エランヴィタール」が2016年11月にオープンすると瞬く間に話題をさらい、プロジェクションマッピングによって食とアートの融合を図った「TREE by NAKED yoyogi park」も2017年7月にオープンしました。
ガストロノミーに映像を掛け合わせたスタイルが知られるようになり、最先端の手法として関心を持たれています。
2018年ではより多くのガストロノミーやもっとカジュアルな飲食店で、食と映像の融合が見られるようになっていくのではないでしょうか。
ウッドプランク・グリル
肉ブームは引き続き続いていますが、黒毛和牛が人気となっているのではなく、赤身肉や希少部位の肉、ジビエなどが人気となっています。赤身肉に関しては、ある一定期間適切に処理して寝かせた熟成肉がもてはやされています。高級ステーキハウスが多い六本木には、2017年6月に「ベンジャミンステーキハウス」が、2017年10月に「Empire Steak House(エンパイアステーキハウス)」がオープンするなど、海外からステーキハウスが日本へ上陸してきました。
ホテルに視点を移してみれば、2017年8月にグランドニッコー東京 台場「The Grill on 30th(ザ グリル オン サーティース)」、2017年9月にホテル雅叙園東京「ニューアメリカングリル カナデテラス(New American Grill KANADE TERRACE)」、2017年12月にはザ ストリングス 表参道「BAR & GRILL DUMB(バー&グリル ダンボ)」、浅草ビューホテル「GRILL DINING 薪火」、品川プリンスホテル「TABLE 9 TOKYO」内に「Grill&Steak」がオープンするなど、ステーキハウスやグリルレストランといった肉料理が熱気を帯びています。
こういった状況で、ヒルトン東京「メトロポリタングリル」が2017年10月から始めた「ウッドプランク・グリル」が特に新しいです。
「ウッドプランク・グリル」とは、グリル台の上に「ウッドプランク」=「木の板」を載せ、その上で仕上げに肉を燻すという調理方法で、海外では人気を博しており、日本でもバーベキューでじわじわと広がってきています。
ウッドプランクに赤ワインやブランデーなど好きなものを染み込ませることによって、自由に風味を付けられることも大きなポイントです。使用する木が何かによってもベースの風味が違ってきます。
「赤身」x「熟成」x「ウッドプランク」と掛け合わせることによって、独自の肉料理を創ることができるので、2018年は様々なウッドプランク・グリルが現れ、肉料理のシーンを彩るのではないでしょうか。
レインボー
冒頭でも述べたように「2017 ユーキャン新語・流行語大賞」の年間大賞に「インスタ映え」が選ばれました。「インスタ映え」の対象には、特定のスポットもありますが、その多くを食が占めています。なかなか訪れることができないファインダイニングよりも、手軽に訪れることができるカフェなどのメニューが対象になり易いです。形が面白いものから、彩りが鮮やかなもの、さらには、とても高く積まれているものや、上から見ると絵のようになっているものなど、「インスタ映え」を構成する要素は様々となっています。
多くの飲食店が「インスタ映え」するメニューを考えている中で、次に注目を浴びそうなものが「レインボー」です。「レインボー」とは七色の彩りのことであり、七色の彩りを持つ食べ物「レインボーフード」、七色の彩りを持つ甘いもの「レインボースイーツ」、七色の彩りを持つ飲み物「レインボードリンク」が、より増えてくると考えています。
ヒルトン東京お台場「グリロジー バー&グリル」のレインボーバーガーや「新宿駆け込み餃子 歌舞伎町店」のレインボー餃子、「ローラズ・カップケーキ 東京」のレインボーケーキや「ニューニューヨーククラブ」のレインボーベーグルなどは既に話題となっています。これらのフードやスイーツはSNSでも反響を呼んでいるので、見たことがある方は多いのではないでしょうか。
最近では見た目にインパクトがあるメニューが多くなっていますが、レインボーは様々な色合いが調和しており、特に目立つので「インスタ映え」にはうってつけでしょう。
海外では既に「レインボー」が流行しているだけに、その流れは日本にも押し寄せてくると思われます。
2018年のグルメトレンド
2017年のグルメトレンドの復習もしつつ、様々な観点から2018年のグルメトレンドを予測しました。ただ、グルメシーンは不確定要素が多く、天候や時事にも左右され易いだけに、グルメのトレンドを言い当てることは実際には難しいのです。しかし、それでも、今後のグルメシーンを考えるのは楽しいことです。グルメに興味がある方は2018年はこれがトレンドになるのではないかと話のタネにしていただければ、より楽しく、よりおいしく食べられるのではないかと私は思っています。