和装でおでかけする女子会が人気? 着物を着てどこへ行こう
着物女子会なら気軽に非日常を楽しめる
最近はネットで着物を買うことが一般的になり、以前よりも着物を着て出かけることが、身近に感じられるようになってきました。せっかく着物を手に入れたら、どこかへ着て行きたくなるものですよね。
とは言え、「どこへ行ったら良いの? 何をしたら良いの?」、もしくは「こんなことをして良いの?」と、案外二の足を踏んでしまう方も多いのではないでしょうか。そんな方々に、絶対オススメなのが「着物女子会」です。
着物女子会とは、和装で女性同士がランチやおでかけ、散歩や散策を楽しむプチイベントのことを指します。気軽に非日常が楽しめると、浅草や銀座などの東京都内、京都や伊勢、金沢など和の観光スポットを中心に、さまざまな場所でお見かけする機会が増えています。
着物初心者の女性たちの間ではもちろんのこと、いわゆる「インスタ映え」を求める若い女性たちにも、着物を楽しむ文化が広がる良い機会となっています。実際、SNS上では「#着物女子会」などのハッシュタグもよく見受けられます。
そこで今回は、着物で女子会を楽しむためのとっておきのプランを紹介していきましょう。
おでかけの不安を解消! 着物女子会のメリットとは?
着慣れた人ならまだしも、着物初心者にとって「気崩れしたらどうしよう? 帯がキツくてご飯が食べられなかったりしたらどうしよう? 出先で着物を汚してしまったらどうしよう?」と、心配が先に立ってしまってせっかくの時間を楽しめないのは仕方のないこと。それが、大切な人との大事なデートならなおさらですよね。その点、気心の知れた友人との着物女子会なら、リラックスして過ごすことができます。また、同じ着物好き同士の集まりであれば、情報交換の場として良い勉強の機会にもなって、ますます話が盛り上がります。
着物を着こなす最大のコツは、「回数」で慣れること。失敗しながら自分のものにしていくのが一番の早道です。いつかは着物でデートをと思っている人もまずは女子会で慣れてみて。
誰と行く? 着物女子会のプランニング
着物女子会は、少人数から大勢まで……それぞれの楽しみ方ができるものですが、ある程度の人数を集めるつもりであれば、まず「着物女子会をやろう!」とSNSなどで旗揚げし、同志を集めてみてはいかがでしょうか? 着物を持っていない人も、レンタル着物で参加可能となれば、きっとみんな興味が湧くはずです。または、着物姿がステキな写真のお友達に、「実は私も着物が興味があって!」とメッセージを送ってみるのもいいかも知れません。
もしくは、着付け教室や、お茶や歌舞伎の観劇など、着物を着るきっかけになる習い事や趣味を始めてみるのも手。そこで出会った人達ならばあなたのプランに乗ってくれること間違いなしです。
どこへ何を着て行く? おすすめの場所と着物の選び方
さて、着物女子会をすると決めたら、まずはどこへ行くか、そして何を着て行くかを決めることになります。せっかくならおいしいものも食べたいし、せっかくの姿を撮影できるフォトジェニックな場所で……などとプランを考えるだけでもワクワクしますよね。そんな方々のために、着物で楽しめるプランとコーディネートをいくつか挙げてみました。
着物の種類や格などについての記述については、下記の記事を参考にしてみてください。
◆外出着
外出着は、少し格があるものから趣味として楽しむものまで、一番応用範囲が多いグループです。逆に言えばTPOにあわせて微妙な調整が楽しめます。
・付け下げ(訪問着に次ぐ格の着物。絵羽づけを簡略化したもの)
・付け下げ小紋(訪問着と付け下げの間の着物)
・小紋(友禅)(手描き染め、型染め問わず色彩的な染め物)
・小紋(全体に文様が繰り返されている型染めの着物)
・絞り(古代の三纈〔さんけち〕技法のうちの纐纈〔こうけち〕技法を使った着物)
・お召(織の着物として最高級のもの)
・更紗(南方系のエキゾチックな文様のもの)
◆街着・普段着
街着や普段着としてちょっとした外出などの場合に適しています。
・紬(先染め織物。本来は自分で織って生活着にしていたもの)
・絣(その組み合わせで模様が構成されているもの)
・ウール(手入れが簡単な家着)
・黄八丈(黄色の縞に染められた普段着)
・銘仙(先染めの平織の絹織物)
出典:着物の種類と格
1.カジュアルコーデで下町グルメを食べ尽くす
下町グルメも女子会の楽しみのひとつ
下町といえば、コロッケやたい焼きなどの下町グルメが楽しみのひとつ。皆でワイワイやりながら、食べ歩きをすれば楽しさ倍増です。そんなシーンでは、比較的格の低めな紬の着物はいかがでしょうか。もしくは、さらに気取らず気を使わず楽しめて、もしもの粗相があっても気にならない、濃い目の色合いのもの、家洗い可能な化繊や綿の素材もおすすめ。帯は、軽めの半幅帯を結んで色足袋を合わせれば、神社やお寺の砂利道も怖くありません! 参考記事:『着物に合う「半幅帯の結び方」はお太鼓だけじゃない!』
2.不動の定番はやっぱり「歌舞伎の観劇+銀ブラ」
銀座界隈は商業施設ラッシュ
着物を着て行ってみたいところのナンバーワン歌舞伎。「訪問着」などの格高の着物を着て行かないといけないのでは……という印象を持たれますが、女子会で訪れるのであれば、そんなに堅苦しいことは無用。カジュアルな街着・普段着である「小紋や紬」で十分です。帯結びは結びたい帯結びナンバーワンの角出し(銀座結び)で粋に。
もっと気軽に! という方は、最近人気の寄席で落語はいかがでしょうか。同じ伝統芸能でも、歌舞伎よりも落語の方が気楽な雰囲気がありつつ、着物が似合う和の雰囲気も、充分に楽しめます。
そして歌舞伎や落語の後には、定番「銀ブラ」へ。銀座界隈は、2017年のGINZA SIX、東急プラザに引続き、ミッドタウン日比谷など、商業施設のオープンラッシュ。いずれも、「和」を意識したコンセプトで、ウィンドーショッピングするだけでも楽しめるはず。歩き疲れたらJOTAROカフェで、話題のアイスを食べながらいっぷく……なんていうのもステキかも!
3.着物を武器に、ミシュランの星付きレストランで舌鼓
和食のお店は店員さんとの着物のかぶりに注意。紫、グリーン、ブルー系の無地を避けると安心です。
女子会最大の楽しみといえばグルメ。しかも、ランチであれば、夜は敷居の高そうな高級料亭やミシュラン星付きの拘りのお店であっても手が届きやすいとお考えの方も多いのではないでしょうか。
とはいえ、そういうお店は周りの目も気になるし、どこか気後れしてしまう事も。
そんな時こそ、ぜひ着物を武器として使っていただきたいと思います。これは私も実際に何度も経験していることですが、そういう場所こそ、着物を着ている人(特に女性)に対しての対応は、普段の3割、いや5割増しになります。例えば、汚れない様に、特別な席を確保していただけたり、ナフキンを余分に掛けてもらえたり、とても気分良く過ごすことができるものです。
そして、経験上のお話でもうひとつ、和食のお店へ行く場合のアドバイスを。高級店になればなるほど、お世話をしてくださる女性スタッフが着物を着ていることも多いもの。そんな店員さんたちと着物がかぶってしまうということが起こり得ます。同じではいけない、ということはないのですが、なんとなく気まずい気持ちになるのは否めません。
特に、紫、グリーン、ブルー系の無地はその確率が大きいのでご注意を。その点、おもてなしの側である方が着ることが少ない「紬」の着物であれば、比較的安心です。
4.和のパワースポット京都や伊勢神宮は、気軽にレンタル着物で
観光地の駅前には必ずレンタルショップが
着物を着て女子会をしてみたいけれど、まだ着物を持っていない! という方も、諦める必要はありません。最近は、観光地の駅周辺には、必ずといっていいほど、レンタル着物屋さんがあって、サクッと借りてサクッと非日常を楽しめる様になって来ています。
それに伴って、以前はハレの日(特別な日)や観光客の利用を想定していたレンタル店も、ケの日(日常)の“ちょっとしたおしゃれ”を楽しむためのプランを出しているところも増えています。例え、着物を持っていても、お泊りありのプチ旅行や遠出の女子会なら、荷物が少なくてすくむレンタル着物を利用しまうという手も大ありです。
ただ、場所やお店によっては、外国人向けや若い女性向けのカラフル過ぎる着物しかないお店もあるかもしれません。着物のバリエーションやラインナップについては、事前にホームページなどでチェックできるところを利用すると、より安心かもしれません。
カジュアルでOK! 着物を着る時のヘアスタイルについて
ところで、着物を着る時に悩んでしまうのがヘアスタイルです。結婚式や公の場など格式高い場所であれば、装い自体も「訪問着」や「留袖」、「振袖」などの格の高い着物になりますから、美容室で特別にヘアセットするということが多いでしょう。しかし、女子会で気楽に……ということであれば、きちっとしたヘアスタイルに拘る必要はありません。
ショートヘアやボブスタイルであれば、そのままでもカジュアルで素敵です。ロングであっても、洋服の時にするアレンジで十分ですが、後ろ衿の抜け(衣紋の抜き)がきれいに見えるヘアアレンジをするとよいでしょう。
ちなみに、ガイドの私もショートカット~ミディアムくらいの長さが多いのですが、普段は自分でスタイリングしています。バランスよくまとめるには、えりあしはタイトにまとめて、上の部分はフンワリとボリュームを持たせるのがポイント。
美容室でヘアセットする出費や面倒さで着物を敬遠してしまうなら、もっと自由な感覚で合わせてもいい! と私は思います。
後ろ衿の抜け=衣紋の抜きについては下記の記事で解説しています。
出典:浴衣のお悩み解決! 浴衣レスキュー
和服を着る場合「着慣れた感」が一番出るのが衿元。特にこの衣紋がキチンと抜けているかどうかで、着物や浴衣が自分のものになっている(ように見える)かが決まってきます。つまり、後ろ衿の抜け=衣紋の抜きというのは、それひとつで着物姿の雰囲気を決めてしまうほど重要な箇所といえます。
にも関わらず、特に初心者の方にはこれをちゃんと自分でコントロールするのが意外に難しく、首にピッタリくっついて男性かお子様のようになってしまっていたり、初めはキレイに抜けていたのに、しばらくすると前に被ってきてしまったという人をよく見かけます。
そもそも、「衿の抜き」ってどのくらい抜ければいいの? というと、女性の場合一般的には格の高い着物ほど、大きく抜くとバランスが良いとされています。
そこからすると、格が低い浴衣はあまり抜かない方が良いということになるのですが、和装は直線縫いでできたものを自分に合わせて着付けていくという特徴のある衣服。体型やヘアスタイル、着物の格、また着物のイメージや自分のなりたい雰囲気などによって変化があっても良いのではと思いますし、何より浴衣は暑い時期に着るものなので、あまりカチカチにやってしまうとそれだけに暑苦しく見えてしまいます。
ですので具体的には指3本~こぶしがひとつ入るくらいに抜くのを基本として、もう少し女っぷりを上げたいという人はあと指2本ほど足してもOK。ただし、この場合は、あくまでも縦方向に抜くことを心がけて下さい。
最後に一言、『着物警察』を恐れるな!
以上、気軽に着物女子会を楽しんでいただく心得をお伝えしました。一方で、着物初心者の方に、「街中で年配の人に、着物の着方やコーディネートに対して注意を受けて、着物を着る自信をなくした」「文句を言われて以来、嫌になってしまった……」という声を聞くこともあります。
いわゆる『着物警察』ですね。こちらはインターネットの書き込みで広まった言葉で、着物初心者が手探りで着物を楽しもうとするところを、「着物というのは、こうでなくては!」と良くいえば親切心、悪くいえば大きなお世話……で取り締まってくる方々のことなのです。リオ五輪閉会式でも、小池百合子さんの着付けや着物の扱いについてさまざまな意見が飛び交ったのも、同じような理由かもしれません(プロが見る、小池百合子の着物姿の心意気とは)。
でも、もし指摘を受けてしまっても、まったく気にする必要はありません。なぜなら、着物はファッション! 自由で良いのです。結婚式などのオケージョンシーンでは、お相手に失礼でないマナーを身に着けるのも気遣いのひとつですが、ご自身が楽しむためファッションは誰にメイワクをかけることもありません。
着物に対しての意識は年々変化してきています。特に10代から20代前半の比較的若い世代の人たちにとって着物は「古いもの」ではなく、自分たちの知らない「新しいもの」として捉えられています。あと数年経てば、この感覚を持った人達の考え方が一般的になることも、不思議ではないのです。
ですから、ルールに縛られず、着物警察に負けないで、もっともっとワクワクして着物を着ることを楽しんで欲しいと思います。