インターンシップという名の「会社説明会」
インターンシップと採用の関係
毎年就職活動を開始する大学3年生には、各大学で就職ガイダンスが開かれ「自己分析」や「業界研究」などのテーマで就職活動に必要な情報が提供される。私も毎年講師として学生の前に登壇する機会が多いのだが、最近必ず聞かれる質問が
「インターンシップに参加した方が採用には有利ですか?」
というものだ。
私の答えはいつも「必須ではないけど、有利に働く場合もある」という曖昧な返答だ。それは今の企業の採用活動に置けるインターンシップの位置付けを表している。
その大半が「1Dayインターンシップ」という名の「会社説明会」
HR総研の調査によると2018年新卒採用活動では大手企業の72%が何かしらの形で「インターンシップ」を実施している。「インターンシップ」は直訳すると「就労体験」という言葉になるのだが、実際に最も多く行われているのは「1Dayインターンシップ」という2~3時間のセミナー型のプログラムで決して「就労体験」と言えるものではない。
企業にとっては早期に学生とコンタクトが取れ、業界や自社についての情報を提供できるという点において、「早期母集団獲得」をする上で有効な方法となっている。
世の中的には「インターンシップ(就業体験)」と謳ってはいるものの、実際には「会社説明会」になってしまっている、というのも1つの現実だ。
しかし、たとえ就業体験はできなくても、その業界についての情報や現場社員から直接話を聞ける機会としては学生にとっても参加するメリットは大きい。インターンシップを通じて知らなかった業界や企業と巡り会えたという学生も毎年数多くいる。
本格的に就職活動が始まる前に業界や企業について知れる機会なのであれば学生にとっても気軽に参加できるはずだが、もし「採用に直結する」と言われると、参加するにしてもしないにしても不安な気持ちになる。
果たしてインターンシップへの参加は採用に直結するのだろうか?
「志望企業との早期接点」が最大の参加メリット
インターンシップは会社の深い情報に触れる機会
建前的には「採用活動とインターンシップは別」とは言ってはいても、実際はインターンシップに参加した学生が、その後のその企業の選考に進み内定を得ることは多い。HR総研の調査では約7割の企業が「内定者の中にインターンシップ参加者がいる」と応えている。
しかし、「インターンシップが選考に直結しているか」というと、答えは「NO」である。
同じ調査で、大手企業の中でインターンシップを「選考に結びつける」と回答したのはたった18%だった。ほとんどのインターンシップは「早期に企業のことを知る機会」にはなっても、決して「選考が有利になる機会」ではないのだ。
では、なぜ7割もの企業の内定者の中にインターンシップ参加者がいるのか?
それは志望する業界や企業を「インターンシップを通じて早期に見つけること」が、何よりもメリットがあるからだ。
多くの学生が就職活動の早期に志望する業界や企業は「有名企業」や「人気業界」であることが多い。そのため上辺の情報やイメージだけで志望してしまいがちだ。その状態で難関企業の選考を通過するのは難しい。
インターンシップを通じて早期にそういった業界や企業と出会うことが出来れば、一般的な情報だけではなく、多くの社員から現場の苦労話を聞くなど、より「現実的な情報収集」が可能になる。
憧れが先行する「キラキラ期間」を経て、より冷静にその企業について調べたり、自分との相性を考える「じっくり期間」を持つことが、結果的に選考時に「この学生はしっかりと自社について調べ、考えた上で志望している」と評価されるのだ。
インターンシップは参加することがゴールなのではなく、多くの企業との早期接点を通じて自分が働きたいと思える業界や企業を探すことができるのが最も貴重な参加メリットなのだ。