映画『覆面系ノイズ』の志尊淳さんに直撃インタビュー
少女漫画誌「花とゆめ」で連載され、単行本が200万部を突破した人気漫画の『覆面系ノイズ』(白泉社/福山リョウコ・著)が実写映画化されました。
幼なじみのモモ(小関裕太)のことが忘れられないニノ(中条あやみ)に6年間ずっと片想いしているユズを演じるのが志尊淳さん。今回は志尊さんに、映画のことはもちろん、デビューのときのこと、これからの俳優人生についてなど、さまざまなお話を伺いました。
ユズと僕の共通点は好きな人に一途なところです
―『覆面系ノイズ』で、志尊さん演じるユズは、ヒロインのニノを一途に思い続けていますが、ユズはニノのどこに惹かれたと思いますか?
志尊淳さん(以下、志尊):いちばん最初に惹かれたのは彼女の声ですね。ユズは、彼女に歌ってもらいたくて曲を書き続けていましたから。あと僕が個人的に思うニノの魅力は、天真爛漫でエネルギッシュなところ。ひとつのことを追求するエネルギーが強くて、その熱い思いが相乗効果を発揮し、周囲に影響を与えていくんです。
ユズは熱い思いを抱いているけど、それを外に向けて発信できないタイプなので、余計、自分の気持ちを発信できるニノのことがまぶしいんじゃないかと思いました。
ユズと自分の共通点は、好きなこと、人に一途なところと語る
―ユズは自分の気持ちを外に向けて出せないタイプですが、志尊さんはどうでしょう? ユズとの共通点はありますか?
志尊:共通点をあげるとしたら、好きな人、好きなことを一途に思い続けられるところです。ただ、僕はわりと好きな人ができたら言っちゃうほうなので、そこがユズとは違いますね。それに6年間の片想いは長いです(笑)。
ユズとニノは高校で再会するまでずっと会っていなかったのに、彼はずっと彼女を思い続けていましたから、それは凄いことだと思います。ただ、彼の場合は、バックグラウンドがあります。幼いときから病気と闘っていて、何に情熱を注いで生きていったらいいのかわからないときに、ニノの声に出会いました。そのときから、彼女のために曲を書くことが生きがいになり、ニノはユズの「由比ヶ浜のアリス」になったんです。
そういういきさつがあっての6年間の思いなのですが、僕だったら、会えないまま、6年間も思い続けるのは難しいかもしれませんね。
ライブシーンのギターアクションはオリジナルです!
―この映画では、イノハリ(in NO hurry to shout;)のギタリストとして演奏シーンも披露していますが、ギターは未経験だったそうですね。かなり練習したのでしょうか?
志尊:クランクインする2ケ月前から週1回、2時間くらい集中して練習しました。まず弦の押さえ方などギタリストの所作を教えてもらって、メジャーコードの押さえ方、そのあとメジャーコードを使う曲で弾く練習をして、イノハリの曲の音源が届いてからは、その曲で練習していました。
あとパフォーマンス練習というのもありまして、ギターを持って動いたときのライブパフォーマンスのバランスを見てもらいました。パフォーマンスは自由だったので、ギタリストの方の動画を見てパフォーマンスの研究をしました。ライブシーンで披露しているのは、僕が考えたオリジナルのギターパフォーマンスです!
―今回、バンドやってみて、音楽の仕事もしてみようという気持ちになりましたか?
志尊:なりませんでした(笑)。親戚に音楽関係者がいるので、僕はやりません。今回の映画でギターを弾くことも親戚には話していないし、アドバイスを求めることもなかったです。たぶん僕が映画でギターを弾くことを知っていたとは思うけれど、向こうも僕が何も言わなかったから、僕の気持ちを尊重して、見守っていてくれたんだと思います。
最初は、芸能界が怖かったんです(笑)
―志尊さんのプロフィールについてお伺いしたいのですが、読者モデルからタレント養成所に入ってデビューですよね。以前から芸能界に憧れていたのですか?
志尊:いいえ、全然(笑)。芸能界に入りたいという夢はなく、遠い世界だったんですが、学生のときにスカウトされることが増えて「できるのかな」と思ったりしました。でも、そのときは芸能界入りする決心はつきませんでしたね。芸能界が怖かったんです(笑)。
雑誌モデルならできるかもしれないと思って仕事をしていたら、編集者の方に「やってみれば」と勧められて「やるならば、ちゃんと自分の身に付くことをやりたい」と思いました。そのとき、雑誌とタレント養成所がコラボしたコンテストがあって、養成所で学べるならばと、応募したのがきっかけです。
グランプリをいただいて、特待生として養成所に通っていました。習い事の延長のような軽い気持ちで始めたんですが、とことんやらないと気が済まない性格なので、必死にやってきて今に至ります。
―流されるままに芸能界入りしたというより、わりと慎重に考えて進んできた印象がありますが、芸能界入りに対して家族の方の反応は?
志尊:養成所に入るときも、事務所に所属するときも両親にはよく相談していました。うちの両親は、やりたいことに対してダメとは言わないので反対はなかったです。ただやる以上は筋を通してやりなさいと言われました。今では一番近くで応援してくれています。
いつも「これが最後の出演作だ」と思いながら演じています
―芸能界入りをしたときは、最初から役者を目指したのですか?
志尊:やるなら役者だと思っていました。でも「僕には役者の仕事しかないんだ」という気持ちではないです。仕事に没頭するのはいいことなのですが、やはりひとつの世界ではなく、違う世界を見て、自分にインプットしていかないと。「これしかない!」というところまで自分を追い込んでしまうのではなく、もう少し心のバランスを取りたいです。
家族は「いつでも帰っておいで」と言ってくれているし、その安心感があるからこそ、ひとつひとつの作品にすごく集中できるんだと思います。僕は毎回「これが最後の出演作だ!」と思いながら演じていますから。
―役者の仕事を続けるうちに、こういう役をやりたいなど欲は出て来ませんか?
志尊:あります。もちろん演じているうちに、「もっとこうしたい」とか欲は出てきますが、やはり僕は「これしかできない」という人にはなりたくないし、選択肢は持っていたい。役者以外でやりたい仕事は特にないのですが、いろんなことに興味はあるし、うれしいことに役者の仕事はさまざまなキャラクターや仕事を疑似体験できるので、役者の仕事で補えるというのは魅力です。
思い出の映画は『クローズZERO』!
―All About映画ガイドなので、好きな映画についてお伺いしたいのですが、最近見て良かった映画、または思い出の映画があったら教えてください。
志尊:僕は映画を見るときは完全に娯楽として楽しみたいんです。そういう意味で思い切り楽しめたのはインド映画『PK(ピーケイ)』です。『きっと、うまくいく』のスタッフが製作した作品なのですが、凄く良かったです。この仕事をしていると、映画を仕事の目で見てしまい、純粋に楽しめないこともあるのですが、僕はそれがイヤで……。やっぱり映画は思い切り楽しみたい! 僕のそういう気持ちを満たしてくれる映画でした。
あと思い出の映画として印象深いのは『クローズZERO』です。学生のときに見て「あ~、ケンカしたい!」と思いました(笑)。あの映画は男のロマンです。僕は『クローズZERO』的な環境で生活していなかったので、うらやましかったですね。泥臭さの中でかっこよさを表現していて、いい意味で影響を受けました。ああいう映画に出られるものなら出たいです。
―『PK(ピーケイ)』はともかく『クローズZERO』は意外でした。では最後に『覆面系ノイズ』を楽しみにしている人に向けてメッセージを。
志尊:登場人物すべて片想いで、好きと言えない気持ちを抱えて闘いながら、光に向かって歩いている感じが、見てくださる皆さんの背中を押すのではないかと思います。
抱えている熱い気持ちをどうするかと迷うことは、何歳になってもありえることだし、ニノ、ユズ、モモたちが、その気持ちにどう決着をつけるのかを見届けてほしい。セリフが少ない分、演じるのは難しかったのですが、メッセージ性がすごく強い映画に仕上がっていると思います。
志尊淳(しそん・じゅん)
1995年3月5日、東京生まれ。2011年に俳優デビュー。2014年『烈車戦隊トッキュウジャー』の主演ライト / トッキュウ1号役で人気俳優に。以来、映画、ドラマ、舞台に活躍中。最新映画は2017年12月1日(金)公開の『探偵はBARにいる3』。また2018年1月5日(金)よりスタートのドラマ10「女子的生活」でNHKドラマ初主演を果たす。
『覆面系ノイズ』
(2017年11月25日(土)より全国ロードショー)
高校2年のニノ(中条あやみ)は、人の心を掴む美しい声の持ち主。彼女は幼い頃に離れ離れになったモモ(小関裕太)といつかきっと会えると信じています。一方、幼なじみのユズ(志尊淳)はニノの声に惹かれ、彼女に歌ってもらいたいと曲を書き続けていました。
ある日、ニノはエントリーしたオーディションでモモと再会。しかし、彼はニノに冷たく、彼女は悲しみに沈んでしまうのです。それぞれの恋する気持ちが交差する中でニノが気づく本当に大切な人とは!?
監督:三木康一郎
出演:中条あやみ、志尊淳、小関裕太、真野恵里菜、磯村勇斗、杉野遥亮
©2017映画「覆面系ノイズ」製作委員会