散歩

紅葉を求め、向島百花園、そしてレトロな商店街を歩く

東京23区内の紅葉は11月中旬から12月の中旬となる。色づき始めた紅葉を求めて、向島百花園へうかがい。大正通りというレトロな商店街から玉ノ井跡などをめぐった。

増田 剛己

執筆者:増田 剛己

散歩ガイド

東京23区の紅葉シーズンは11月中旬から12月中旬。というわけで、やっと色づき始めた紅葉を見に、向島百花園へ出かけてみた。東京でも高尾山や昭和記念公園など、西の標高が高い場所では早く紅葉が始まる。

東京都内でも早く紅葉する高尾山へ行ってきました

編集部のM美さんと待ち合わせたのは東武スカイツリーラインの曳舟駅の西口。
向島百花園へは西口が近い

東武スカイツリーライン 東武亀戸線曳舟駅


駅前に地図があったので、向島百花園の場所を確認。徒歩でだいたい6分くらいだ。
スマホのマップもいいけどこういう地図のほうがわかりやすかったりするね

曳舟駅から向島百花園は徒歩で6分ほど

歩き始めてすぐの場所にあった「曳舟児童遊園」。小さいけれど、1955年(昭和30年)に開園したそうで、歴史のある公園だ。
公園の外壁が船の形になっていた

曳舟児童遊園 墨田区東向島2-25-7

「海抜がマイナス0.4mだって」などと話していると、なにやら興奮気味に遊具にカメラを向けている。

40kg未満の人しか乗れないようです

エビ天のように見える遊具

「ネットでエビ天のように見える遊具が話題になっているんですよ」と言う。へえ、知らなかった。人によって散歩の目線が違うんだということを改めて感じる。しかし、この遊具を見ると、たしかにエビ天だ。

ほどなく、向島百花園に着いた。
入り口のモミジは少しだけ色づいていた

向島百花園 東京都墨田区東向島3-18?3

入園料は150円。入り口にあるモミジは、最盛期には真っ赤に色づくが、この日はまだまだだった。

向島百花園ができたのは江戸の町人文化が花開いた文化・文政期(1804~1830年)。骨とう商を営んでいた佐原鞠塢が知り合いの文人墨客(ぶんじんぼっかく)と協力してつくった民営の公園だ。

1938年(昭和13年)に所有者より東京市に寄付され、翌年より有料の公園として開放された。

江戸時代、最初は、たくさんの梅が植えられていたそうだ。今も梅で有名な公園だ。というわけで、まずは梅紅葉(うめもみじ)を鑑賞。
黄葉(こうよう)ともいう黄色に色づく葉

白加賀という梅。葉が黄色く色づいている


こちらの紅葉はニシキギ。ニッサ、スズランノキと共に世界三大紅葉樹といわれているそうだ。
ニッサ、スズランノキとともに世界三大紅葉樹なんだそう

低木なので間近に紅葉が見られるニシキギ 

向島百花園はいろいろな種類の植物が植えられているので、紅葉も様々な種類のものを鑑賞できる。こちらは、ハゼノキ。

けっこう高い樹だ

葉が赤く色づいたハゼノキ

俳句の季語にもなっているハゼノキの紅葉をを下から見上げると空の青とよく合うね。
紅葉するハゼノキを櫨紅葉(はぜもみじ)とよび秋の季語になっている

ハゼノキを下から眺める

これから紅葉するものもあれば、いまが最盛期のものもあって、長い期間楽しめる。まだまだだけど、少し色づいてきているのがイチョウ。

どことなく、風格のある老木だ

まだ緑色の部分も多いイチョウ!

とても味のあるイチョウの樹。樹齢はどのくらいだろう、かなりの老木のように思える。

きっと長い年月、ここに立っているのだろう

黄葉するイチョウはなんとも素敵

ひと通り、紅葉を鑑賞したあとで、園内にある「茶亭さはら」で甘酒をいただいた。この茶店、なんと文化年間から営業しており、いまのご主人で8代目だそうだ。

体が温まるね

一杯300円の甘酒はとても美味

甘酒をいただいて、近所のレトロな商店街を目指す。向島百花園を出て、振り返れば、その一帯が赤く染まっていた。園内からは気づかなかったが、確実に紅葉は進んでいる。
向島百花園は外側から見ても美しい!

向島百花園を出て、振り返ったら、紅葉が見えた

大正通りという昔ながらの通りを目指す。名前の通り、大正時代に出来た通りだろう。全国には同じ名前の通りがいくつもある。

大正通りにあったレトロな食堂。風情がある。
早朝からお昼過ぎまでの営業

柏屋食堂 東京都墨田区墨田1丁目5-14

この写真を撮った直後、お店の方が出てこられて、暖簾をしまわれた。こちらの柏屋食堂さん、午前6時半から午後1時半までの営業のようだ。

その並びにあるこちらのお店へ入った。
いい感じのおそば屋さん!

長山 東京都墨田区墨田1-5-12

「私、めんくいなんですよ」とM美さん。えっ、くわしく聞くと、うどんやパスタなどの麺が好きだとのこと。
「さっきのエビ天の遊具が頭から離れないので、私は天ざるうどんにします」と言う。
エビ天、しし唐がついている

天ざるうどん 1280円

メニューを見ていると、
「墨東奇譚」の町で新しい味をお楽しみください
という言葉が添えられた、
玉ノ井そば
というのがあった。そうだ、このあたりは永井荷風の小説、「墨東奇譚」(墨にはサンズイがつく)の舞台だ。かつての寺島町(てらじままち)というあたりだ。
わかめ、糸唐辛子、ゆず胡椒、揚げ玉子

玉ノ井蕎麦 820円

玉ノ井蕎麦は温かいものも冷たいものもできるそうで、うどんも大丈夫。わかめの下に揚げた玉子が入っていて、それを井戸に見立てているので、玉ノ井なんだそうだ。とてもおいしくいただいた。

メニューを見ていたM美さん、ナスのお蕎麦があるのを見て、こっちにすればよかったと嘆いている、ナスが好きなんだそうだ。

東向島駅の商店街を歩けば、テレビ番組『じゅん散歩』のロケ隊がいた。と、M美さん、「“寺島なす”のことが書いてありますよ」と言う。M美さんの目線の先には掲示板に貼られたパンフレット。そこには寺島なすの記述がある。「この寺島なす最中を食べてみたいですね」と言うので、「菓子遍路 一哲」さんを探す。東向島駅前商店街にお店はあった。
東向島駅前商店街にある和菓子屋さん

「菓子遍路 一哲」 東京都墨田区東向島4-29-6 アラモード東向島1階

寺島茄子は、かつてあった茄子で、いったん失われていたのだが、種が見つかり、復活したんだそうだ。それを記念してつくられた「なすがまま」という最中。3個入りで、350円だ。
上品なお味の最中。茄子そっくり!

「なすがまま」 3個入りで350円

M美さんが、領収書の宛名を「オールアバウトでお願いします」と言うと、お店のご主人が「ああ、原さん、この前もきたよ」とおっしゃる。和菓子ガイドの原亜樹子さんのことだ。こんな記事があった。
1の付く日に訪ねたい「菓子遍路 一哲」 [和菓子] All About

以前記事にしたこともあるが、せっかくなので、玉ノ井跡あたりを散策してみよう。玉ノ井とは、関東大震災の後から1958年(昭和33年)まで存在した私娼街だ。

たしか、永井荷風がノートに記したとされる玉ノ井の詳しい地図が載せられた説明板がどこかにあったはずだが、見当たらない。オールアバウトの自分の記事を読みながら探してみる。
ちなみにその記事はこちら。
荷風が愛した浅草から墨東、寺島を歩く (全文) [散歩] All About

わからないので、こちらで情報収集をしようとうかがったのは、玉ノ井いろは通りにある「玉ノ井カフェ」さん。
玉ノ井に関する書籍などいろいろな資料がある

玉ノ井カフェ 東京都墨田区東向島5-27-4

店内は玉ノ井にまつわる書籍などが多数あって、閲覧できるし、購入できるものもある。
カフェのメニューを見ると、ホットコーヒーは、玉ノ井や永井荷風をイメージしたものがあった。ほんのり酸味でスッキリした味わいの「玉ノ井ブレンド」。永井荷風をイメージした華やかで甘くほろ苦い味わいの「荷風ブレンド」。
荷風ブレンドはけっこう深い味わいだった

玉ノ井ブレンド(上)400円、荷風ブレンド430円

M美さんが玉ノ井ブレンド、僕が荷風ブレンドをいただいた。
「玉ノ井カフェ」さんの営業は11:00~18:00
定休日は火曜日、水曜日。

お店の方に、説明書きの場所を聞いた。向かい側のマンションの裏側らしい。啓運閣(墨田区墨田3丁目6−14)にあるとのこと。行ってみた。
『墨東奇譚』の取材で描いた玉ノ井の地図も紹介されている

永井荷風の短編小説『寺じまの記』の一節など

隣に「たわし石佛」というのがあった。足元にたわしが置かれている。体の不調な部分に水をかけ、たわしでこすると良くなるそう。
体の悪い部分に水をかけてたわしでこするとよくなると言われている

「たわし石佛」浄行菩薩

M美さん、腰が痛いということで、たわし石佛の腰部分に水をかけ、一生懸命たわしでこすっている。相当悪いのか……。
3日、7日、21日にお参りすればさらにご利益が期待できるそうだ

体の悪い部分に水をかけてたわしでこする

さて、ここから鐘ヶ淵駅をめざそう。鐘ヶ渕通り商店街を歩く。ドラッグストアの前にこんな七福神があった。すかさず、M美さんがカメラを向ける。
六福神しかいない

薬屋さんの前にあった七福神

6つの神様しかいない。布袋様がいらっしゃらないようだ。ほどなく、鐘ヶ淵駅へ到着した。
東京都墨田区墨田5-50-2

東武スカイツリーライン 鐘ヶ淵駅

駅舎に夕日が当たっている。けっこう歩いたなぁ。会社へ戻るM美さんは北千住方向、僕は浅草方向の電車に乗った。

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