疲労回復法

運転すると肩こり・腰痛がツラい人の簡単ストレッチ

車の運転をすると、肩こりや腰痛がひどくなったり、肩こりからくる頭痛に悩まされたり……。そんな人は、車の運転に心理的な負担を感じがちです。長距離運転はもちろん、日常的な距離でも、運転中の座り姿勢で肩こりや腰痛を発症したり再発したりするのが不安という声もよく聞きます。車の運転前・休憩時間・運転後に手軽にできる軽減エクササイズをご紹介します。

檜垣 暁子

執筆者:檜垣 暁子

カイロプラクティック理学士 / 肩こり・腰痛ガイド

車を運転すると肩こり・腰痛症状がひどくなる

肩こりや腰痛が不安な人は、車の運転での悪化しないか心配になる人もいるようです

肩こりや腰痛が不安な人は、車の運転での悪化しないか心配になる人もいるようです

乗り物で移動するのは便利なものですが、肩こり・腰痛持ちの人にとって、それらは不安要素のひとつになっているようです。中でも「車での移動」は、私が受ける相談の中でも多い印象があります。車を運転する仕事をしている人、通勤など普段から頻繁に車を運転するという人、週末や長期休暇になると家族でドライブをすることが多い人など、車の活用頻度・パターンはさまざまです。

車の運転時に生じる肩こりや背中の張り、腰の疲れなどの不快な症状には、症状のつらさ、パターン、痛みの頻度、楽に感じる時間などに個人差がみられます。体調により不調を訴える箇所が複数に渡るケースもあります。

また、車だけではなく、デスクワークで長時間座る生活を送り、肩こり・腰痛が悪化しがちな人も、車の運転中や運転後に症状が強まることがある、と訴える声が聞かれます。

車の運転が原因となる肩こり・腰痛

先週ぎっくり腰になったばかりであるという人と、慢性的に腰痛であるという人との違いなど、車に乗り込む前のコンディションによっても不安感や症状の感じ方は異なると思います。これまでに肩こりや腰痛が気になる方々から伺った悩みには下記のようなものがありました。同様の症状を感じたことはありませんか?

■車の運転で心配・気になること
□ 車を運転すると腰痛が酷くなるので、運転することが怖くなった
□ 車の運転をしている途中で、肩に力が入ってくるのがわかる
□ 車の運転が終わりしばらくすると、体がガチガチにこっていることに気付く
□ ペダルを踏む側の脚が疲れる
□ ペダルを踏まない側の脚を動かしたくなる
□ 運転しているうちに肩こりや腰痛を感じるようになる
□ 座席からの乗り降りがツライ(腰や股関節周りに違和感)
□ 運転する時に心臓がドキドキするように感じる
□ 運転後、思った以上に目が疲れたと感じることがある

上記のような不快感がある場合、体のどこかに力が入り、少なからず緊張状態であると考えられます。緊張状態が解けず疲労回復が難しくなると、運転中の状況把握やハンドル操作、アクセルやブレーキの操作のスムーズな動作などへも影響を及ぼす可能性があります。そのため、このような傾向が感じられた場合、心身のリラックスを促すことが必要であるサインだと受け取りましょう。

運転中の緊張や身体への負担を和らげる3ポイント

また、上記の症状を含め緊張状態を招く症状は、車の運転に対する「気持ち」が関係している場合があります。

□ 運転自体が苦手
□ 疲れるイメージが強い
□ 久しぶりの長距離運転などの特別感がある
□ 自身の体調が悪くならないか不安
□ 初めての道や混雑した道を通る
□ 気が進まない場所へ行く
など

一方で、休憩の少ない長時間ドライブや運転の姿勢、下肢血液循環の低下など、重力的な負荷によって、筋肉疲労を起こし、腰や下肢のだるさとなるケースもあります。自律神経活動(緊張とリラックスに関する神経)の変化を分析すると、助手席に乗るよりも運転している方が、ストレスが大きくなる傾向が見られた研究報告もあります。また、長距離運転において運転開始240分以降には疲労が表れると言われています。

元々、腰の調子が悪いという人は、運転開始まもなく、腰の不快感が表れる話も聞かれます。こうしたことを考えると、やはり心身の緊張状態が長時間続くことは、可能な限り避けた方が望ましいと言えます。

■首・肩・腰への負担を和らげるポイント
  1. なるべく筋肉のコリを和らげた状態で、運転をスタートしましょう
  2. 同じ姿勢で座り続けているため、なるべく1時間ほどで休憩をはさみ、少し体を動かすことが出来ると理想的です
  3. 運転は想像よりも疲労していると考え、運転後は緊張がほぐれるようリラックスさせましょう

運転前・休憩中・運転後の肩こり・腰痛軽減ストレッチ

1~5まで、順番に行っても良いですが、時間が足りない時などは、ツライ部位を選んでも良いです。車に乗る前には、1~3を優先的に行い、座り姿勢が楽になるよう備えましょう。

1. 胸部を開いて姿勢が楽になるストレッチ
シートへ座りハンドルを握る姿勢が続くと、結果的に胸部の筋肉にコリが生じる場合があります。日頃からデスクワーク・背が丸くなる姿勢になりがちという人は、特に運転前に胸部を伸ばしておきましょう。

肩こりの程度によりこの動作がとりづらいかもしれませんので、無理しない範囲でスタートしましょう

肩こりの程度によりこの動作がとりづらいかもしれませんので、無理しない範囲でスタートしましょう

両手を組み、手のひらが天井へ向くように頭へ乗せます。息を大きく吸い、ゆっくりと口から息を吐きながら、肩甲骨を寄せる意識をしつつ両ひじを開いていきましょう。(いったん手を下し再び行う×3~5回)

2. 足首をゆっくり大きく回して血流を促す
車の運転は、ペダルを踏む動きはあるものの、足の動きが単調で血流が滞りやすいです。運転の休憩のみならず、前後にも足首を回して筋肉へ刺激を入れておきましょう。

足首を回す際にそれぞれの角度により筋肉が気持ちよく刺激されるようにゆっくり動かしましょう

足首を回す際にそれぞれの角度により筋肉が気持ちよく刺激されるようにゆっくり動かしましょう

休憩の際はベンチに座っても行うことができます。立って行う際は、バランスを崩さないよう壁などへつかまりながらでも構いません。足首をゆっくりと大きく回しましょう。(右回し・左回し各3~5回)

3. 背中の疲労回復に役立つストレッチ
運転が続くと、腕を頭上へ挙げる動作はほとんど無いと思います。肩よりも高い位置に腕を伸ばしてみましょう。肩こりが酷い人は、高い位置に腕が挙がらないかもしれませんので、可能な範囲で行います。(可能な人は、耳よりも後方の位置で腕を挙げてみましょう)

挙げた腕が頭に触れない程度に少しだけ顔を下へ向けます

挙げた腕が頭に触れない程度に少しだけ顔を下へ向けます

両腕を天井方向へ挙げ、手のひらを前へ向けたまま左右の腕を交差します。息を吸い口からゆっくりと息を吐く際に、わずかに顔を下に向けながら、腕を天井方向へさらに伸ばしていきます。腕の付け根付近から背中をリラックさせます。(いったん手を下し再び行う×3~5回)

4. 腰の疲労に影響しやすいお尻をストレッチ 
腰部・骨盤の安定に関わり、立ち姿勢や歩行にも重要な働きをする股関節の筋肉。普段から姿勢のアンバランスが気になる人は、筋肉の過緊張が生じやすい部分です。運転により腰の不調が気になる人は、骨盤に付着している筋肉を伸ばして、腰部の負担軽減に繋げましょう。

うまくストレッチできないという場合は、交差させる際の脚の位置や上半身の傾け方を調整しながら試して下さい

うまくストレッチできないという場合は、交差させる際の脚の位置や上半身の傾け方を調整しながら試して下さい

立ち姿勢で左下肢を後方へ動かし、右下肢と交差させます。息を吸い、口からゆっくりと息を吐きながら、上半身を左下肢方向へ傾け左側を伸ばしていきます。(左右交互に3~5回ずつ)

5. 肩こりや背中の張り感を和らげるストレッチ

頭部・肩甲骨の動きや背骨を支える働きのある筋肉は、運転姿勢を続けることで、肩こりや背中の張りとして感じやすくなります。「3」のストレッチで、両腕を頭上へ挙げる動きがツライ・肩が痛いという人は、この方法をお試しください。

首の痛みに注意しながら、頭を前に傾けていきます

首の痛みに注意しながら、頭を前に傾けていきます

立ち姿勢で両腕を交差させ、頭を前方へ傾けながら、腕を前方へ伸ばしていきます。息を吸い、口からゆっくりと息を吐きながら、さらに可能なところまで腕を前方へ伸ばしていきましょう。(いったん姿勢を戻し再び行う×3~5回)


車の運転による心身の緊張がほぐれるエクササイズをご紹介しましたが、「思っている以上に緊張状態を起こしやすい環境である」「姿勢的に負担を強いられやすい」「気づくと休憩せずに時間が経過している」という点は、車の運転とデスクワークなどの座り仕事にみられる共通項目であると思います。車の運転をしなくても、デスクワークで座り時間が長い、という人もぜひこのエクササイズをお試しください。

参考文献: 
心拍間隔指標を用いた長距離運転時のストレス計測実験と解析-AHSの需要予測にむけて-」土川奏 (芝浦工大 大学院)・岩倉成志 (芝浦工大 工)・安藤章 (日建設計)
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