お金持ちにも不幸な人はいる?
人は幸せな人生を送ろうと考えて、お金を増やそうとします。誰でも資産家になりたいのです。そこには、お金を十分に持っていれば、幸せになれるという前提の思考があります。しかし、お金は幸せの必要条件ではあっても、十分条件ではありません。幸せなお金持ちはたくさんいますが、お金持ちの全員が幸せとは限りません。
自分の体験の中で出会った、不幸なお金持ちたちの姿から、お金持ちになると陥りかねない、3つのお金持ち不幸症候群を、ご紹介します。
お金で何でもできてしまう
どんなことでも、お金で解決できるようになるのは、うらやましいことかもしれません。しかし、金銭万能主義は、人から大事なものを奪い去ります。たとえば、他人の好意に頼る必要がなくなると、人は人情や親切心をうしないがちです。願望をいつでもお金で実現できるようになると、人は努力や辛抱の気持ちをうしないがちです。何でも自分の思う通りになるようになると、人は熱意とか信念の大切さを忘れがちです。
お金を得ようとして人は成長する場合もありますが、結果としてお金を獲得してしまうと、そこから退化や堕落が始まるというのも人生です。お金があり過ぎて不幸になる人は、けっこういるものです。
お金が減る恐怖にさいなまれる
大金持ちにはケチが多いと言われますが、それは本当です。一つには、倹約家だから大金持ちになったという結果説と、お金をたくさん持っている人ほど減ることに敏感になるという原因説と2種類あります。後者のお金持ちにであるがゆえにケチになるということは、実は精神的に大きなストレスであり、お金持ちであることを楽しめない一因となります。たとえば、投資をして10万円損をしたとします。資産100万円の人から見れば、資産10億円の人が10万円損することなど、気にも留めないことだと考えがちですが、そうでもないのです。
大きなお金を残した人は、それが減ることに強い恐怖を感じます。現役の職業人で、未来に向けて取り返せるという時間の余裕があるお金持ちは別ですが、引退後の大金持ちはお金を失うことに、本当にシビアです。
お金が減る恐怖心は、人を租税回避に走らせます。その典型例が、資産家の脱税事件や海外に資産を逃避させて租税を免れようとする資産フライトです。法を犯してまでも、お金が減ることを嫌っている大金持ちが、世の中には少なからずいることを、私たちはニュースで知っています。
日々資産を失う恐怖にかられていることは、貧乏の不足感に苦しむことよりも、軽微なことだとは限りません。持つ資産が大きくなるほどに、失う恐怖感も大きくなります。
子孫をスポイルしてしまう
恵まれた環境で養育されて、立派な大人に育つ人もいる一方で、恵まれた環境におぼれて、怠惰で自立心の弱い大人になる人もいます。自分でお金持ちになった人たちは、これまで書いてきたようなお金持ちが持つデメリットを理解していて、自分を規律高く制御できる人もいます。お金持ちをうらやむ人が期待するほど、お金持ちは自分のことに対して、無軌道ではありません。自分のことに対しては、おおむね客観的に対処できるものです。
しかし、自分の子供や孫とお金の関係となると、その規律が一気にゆるむ傾向があります。子孫に対して、ふんだんにお金を与えることは、ある意味で賭けです。裏目に出ると、お金をかけるほどに子孫を甘やかすこととなり、厳しい人生を子孫に強いることとなります。
資産家であるという自分の強みを持ちながらも、それをひけらかすことなく、冷徹にふるまわないと、資産は二代か三代で使い果たされてしまうのです。
清貧で人は救われる?
いかがでしたか?お金持ちになることには、良いことばかりではなくて、こうした悪いこともあるということをご参考にしてください。こうしたデメリットがあるから、お金持ちにならない方が良いなんて考えるのは、ひねくれた人の負け惜しみととられかねません。不幸なお金持ちへの落とし穴を知りながら、幸せなお金持ちを目指す。それが、賢明なる道と思います。貧乏は美しいという「清貧思想」に逃げ込むことは、人生を窮屈にしてしまいます。