選挙と株価
とうとう、衆議院選挙が公示されました。政権が変わる可能性のある選挙として、海外の投資家も注目しています。選挙の結果は、株式市場にどのような影響を与えるか、第三者の視点で考えてみます。基本的には、日本では国政選挙があると、株価は上昇します。ただし、上昇は投票日まで。開票結果によって、株価は上か下へ、動いていきます。
安倍政権継続なら長期上昇
今回も、日経平均は勢い良く上昇しています。国政選挙で株価上昇という過去の習性に従っているのですが、それともう一つ、自公与党が過半数を取って、安倍政権が継続されるという予測があるからです。2012年以来、内閣支持率と株価が連動することから、安倍政権は、株価連動内閣といわれてきました。株式市場は、アベノミクスを好意的に受け止めてきたのです。
そして、今回も安倍政権の継続と長期化を望んでいるように見えます。現在の日経平均は、2年ぶりの高値を更新しましたが、開票結果が予測通りに、自公与党の過半数獲得であれば、さらに上昇して、日経平均3万円奪還が現実的となってきます。
自公与党が負けたなら?
しかし、自公連立が負けた場合には、どうなるのか?アベノミクスも終わるわけですから、当然に、日経平均は大きく下げることでしょう。しかし、その下げが長期化するかどうかは、だれが勝ったのかによって、違います。希望の党の保守系野党が勝つのか、立憲・共産などの左派が勝つのか、それによって、日経平均下落後の動き方は変わってくるはず。
アベノミクスの終焉が株価にプラスも
自公与党が負けて、アベノミクスが終焉を迎えたら、株価は暴落するに決まっていると思うかもしれませんが、そうとも限りません。というのも、アベノミクスのすべてが株式市場から好感されているわけではないからです。アベノミクスのせいで、株式市場が歪められているという指摘もあるのです。だから、自公敗戦でも、その負け方によっては、株式市場は新たな活力が生まれてくる可能性があります。
市場を歪める日銀のETF買い入れ
現在の日本の株式市場における負の政策とは、日銀によるETF買い入れです。日銀は、物価上昇2%を実現するための金融緩和策の一つとして、このETF買い入れを、もう6年も続けています。日銀が東京証券取引所の全体を買っているのですから、それは株価上昇要因となり、悪いことなど何もないように思われるかもしれませんが、さにあらずです。
マーケットが政治に期待していること
マーケットでもっとも大事なことは、自由と公正です。日銀の購入資金は、経済合理性を追求しない、硬直的な資金ですから、株価の下落を阻害します。下がらないものは上がりませんから、積極的な投資家の意欲を挫くこととなっているのです。日銀が「人為的な株高」を演出していると批判されるゆえんもここにあります。欧米は、金融緩和の出口を模索しだしていますが、日銀の金融緩和及びETF買い入れには、想定される期限がありません。終わりなき株価操作といえます。
もし、自公与党が負けて、政権が交代して、日銀総裁も交代することになれば、このETF購入政策も変更(減額や中断)されるかもしれず、そのことを、投資家(特に海外投資家)は前向きに受け止める可能性があるのです。ということで、自公敗北でも、株式市場が持ち直すかもしれないことは、考えておくべきでしょう。
選挙後の3つのシナリオ
自公与党が勝てば、株価は続伸。負ければ、急落。しかし、保守系野党の希望の党が勝った場合には、その後の経済政策や日銀人事をよります。金融市場に対する対応がより良いものと受け止められれば、株価は再上昇を実現する可能性はあります。リベラル系と称される立憲・共産・社民の第三極が勝利すれば、株価は再び長く暗い低迷に入ってしまうでしょう。とはいえ、昨年の米国大統領選挙後のように、株式市場の反応は、必ずしも予測可能ではありません。想定外の動きであっても、開票後の市場の受け止め方を受け入れて、それについていくことが基本的な対応です。軽々な予測で、過度なリスクを負わないように、ご用心ください。
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