米沢牛・大トロのにぎり 山形県・米沢「時の宿 すみれ」
山形県米沢市街からから車で約15分。「時の宿 すみれ」は、山間の静かな温泉「湯の沢温泉」にある一軒宿。米沢の誉れといえば米沢牛ですが、なにを隠そう「すみれ」は老舗販売店「米沢牛黄木」の黄木家が営む宿。今では三代目の綾子さんが切り盛りをしています。黄木をパートナーとする「すみれ」の夕食は、「米沢牛フルコース創作懐石料理」。その響きだけで涎が出てきそうですね。その名の通り、前菜からメインまで米沢牛を余すことなく堪能できます。特筆すべきは「大トロのポワレのにぎり」。まんべんなく脂が入った肉を噛みしめると牛の香りと旨味が口いっぱいに溢れてきて無言になるほどの美味しさです。 メイン料理は、ステーキ、すき焼き、しゃぶしゃぶの3種類から選びます。
「すみれ」は、全国でも珍しい「おふたり様」専用の宿。目の前は大切なアナタとお肉だけ。夫婦水入らずで、恋人同士で、親孝行に。とっておきの宿として覚えておいてもらいたいですね。
飛騨牛のステーキ 神奈川県・箱根「円かの杜」
箱根の強羅地区にある日本旅館「円かの杜」。箱根といえば宿の激戦区ですが、「円かの杜」が他の宿と一線を画すのは、20室という静かな環境と客室のテラスにある露天風呂。そして、夕食に出される飛騨から直送された飛騨牛料理。本当に美味しいところを丁度いい量だけ。一年中いつ訪ねてもいただくことができるのです。その理由は、「円かの杜」の本拠地が岐阜県高山市にあること。グループでは、高山市内に「飛騨亭花扇」と「花扇別邸いいやま」の2店舗を。箱根の強羅地区には「強羅花扇」「早雲閣」「円かの杜」の3店舗の宿を運営しています。
なかでも、「円かの杜」はハイクラス。館内には、まるで森林浴を楽しむかのような露天風呂付きの大浴場、ジャズが流れる蔵バー「こだま」、囲炉裏を囲むラウンジ「欅」など、随所に大人が寛げるスペースが用意されています。そして目を奪うのは重厚な飛騨の家具の数々。箱根で味わう飛騨の味と匠の技。お好きな季節に訪ねてみてください。
大鹿ジビエ 長野県大鹿村 鹿塩温泉「山塩館」
山なのに塩。「山塩館」がある長野県の大鹿村「鹿塩温泉」の泉質は強食塩泉。宿では敷地内に独自の製塩所を設け、温泉を煮出し塩をつくり販売もしています。1リットルから30グラムしか取れない希少性と明治時代に途絶えた塩づくりを平成に入り復活させたことから「幻の塩」とも呼ばれています。山塩館は、平瀬さん一家が切り盛りする全15室の和風旅館。田舎の家に帰ったようにホッとできる昔ながらのお宿です。
塩の他にも有名なのは鹿。人の数より鹿の方が多いと言われる大鹿村では、その恩恵に預かるグルメを「大鹿ジビエ」と称し提供しています。山塩館でも、予約制の別注料理として、鹿肉を使った一皿を提供。鹿肉のロティ―、鹿すね肉の煮込み等、どれも山の宿とは思えないほど本格派の逸品ばかり。信州ワインとあわせれば極上のディナータイムが堪能できます。11月中旬~3月までの狩猟期になると前菜がジビエとなり、メインもジビエから選べるという特別宿泊プランも発売しますから宿へ尋ねてみてください。
お風呂には、もちろん塩分タップリの温泉が注がれています。体の芯まで温まり湯冷めがしにくいのが特徴です。肌を塩分がコーティングしてくれるから保湿も期待できますよ。
山男の肉料理 群馬県・水上温泉「蛍雪の宿 尚文」
宿のコンセプトは「山人(やまびと)料理の田舎宿」。このメッセージに違わない山の料理を食べさせてくれるのが群馬県みなかみ町にある「尚文(しょうぶん)」。露天風呂付きのメゾネットタイプの離れが4室と母屋の純和風客室が7室。喧騒から離れて上質な休日を過ごすことができる小宿です。尚文の料理は大きく分けて3種類。地元野菜をたっぷり使って名産の上州豚や赤城鶏をいただく山人料理。田舎の宿らしく炭で食材を焼いて食べる囲炉裏料理。そして、県内最高ランクの増田和牛を味わうプラン。どれも絶品なのですが、私がおすすめしたい大本命はジビエ料理。実は料理長であり宿の次男である阿部達也さんは猟師。自ら山を駆け回り美味いものを見つけてくる達人です。
肉を知り尽くした猟師だからこそ、猪や鹿など肉の鮮度や状態を見分けながら、固体にあった料理法としてサラミやソーセージなどの加工品に仕上げていきます。
これらのジビエは完全予約制。ありつけるのもありつけないのも「山の神の機嫌しだい」とでもいいましょうか。猟師がつくる渾身の一皿に出会える宿です。
山小屋の燻製料理 長野県・山田牧場「スパ&レストラン レッドウッドイン」
ここはスイスか?というほど日本離れした素敵なオーベルジュが長野県高山村山田牧場にあります。その名も「スパ&レストラン レッドウッドイン」。レッドウッドとは、スギ科でセコイヤのこと。宿ではアメリカの国立公園から苦労の末に運んできたセコイヤの巨木を館内の内装にふんだんに使用しているので、海外さながらの雰囲気を楽しむことができるのです。
そんな料理自慢のオーベルジュで出される夕食は、フレンチをベースにした創作料理のフルコース。オードブルにはサーモンや川魚、鴨、チーズなどの燻製からはじまり、ついついワインも進んでしまう献立です。肉料理も仔羊のローストなど本格派。山の上でこんなフルコースがいただけるなんて感激です。地元で採れた野菜や山菜なども味わうことができます。
「レッドウッドイン」のもう一つの自慢は露天風呂。レッドウッドの太い幹をくり抜いた浴槽に温泉が注がれています。夜は星空を、朝は遠くの山々を眺め、朝風呂の後は朝食をゆっくりと。自家製燻製ソーセージとベーコンが味わえます。
鴨すき 滋賀県長浜市「須賀谷温泉」
「須賀谷温泉」がある滋賀県琵琶湖の北東部「湖北」。大河ドラマで何度も登場するほど歴史深い場所。須賀谷温泉は浅井長政の城で知られる小谷城の麓に湧き、信長の妹であり浅井家に嫁いだお市の方も通った温泉だと伝えられています。宿は全19室の和風旅館。石造りの大きな露天風呂があり、お湯は茶褐色で源泉かけ流し。歴史上の姫達も堪能したことでしょう。湖北の冬の名物は鴨鍋や鴨すき。いまでは禁漁ですが、漁師の網にかかったものを売ったのが鴨食文化の始まりだとか。宿では11月中旬から3月まで予約制で鴨鍋を出しています。
皿に盛られた鴨肉は、ロース、もも肉、ササミ、山椒が振られたタタキ。昆布ダシの鍋にでシャブシャブ風に頂けば実にやわらかく、骨ごとたたいたタタキは団子状になりコリコリとした食感。ネギとの相性も抜群です。
創業四百年の味ぼたん鍋 兵庫県・丹波篠山「近又」
城下町・丹波篠山にある料理旅館「近又」。時代の偉人達が訪ねており、現在の宿主で13代目となる由緒正しき旅館です。その近又が受け継いできた冬の味覚が「ぼたん鍋」。コースは、赤身肉、ロース肉、ロース肉+塩焼き、の三種類から選びます。やはりおすすめは脂身があるロース肉。〆の「特製丼ぶり」がありますので、鍋に脂が残ってトロリとしたほうが美味しいのです。
鍋の味は近又秘伝の味噌味。甘すぎず、辛すぎず、肉にしっかりとまとまりつきます。近又の鍋は最後まで華やか。肉のエキスと野菜がトロリと溶け込んだ鍋の出汁に卵を落とし半熟に。トロトロになった卵と出汁をご飯の上にかけたのが「ぼたん丼」です。ぼたん鍋が食せるのは猪の狩猟が解禁となる11月に入ってから3月末まで。この時季を逃す手はないですね。
馬肉の刺身 長野県・下諏訪「鉄鉱泉 本館」
馬肉の生産量の上位の長野県。「鉄鉱泉 本館」がある下諏訪でも昔から良く食べられてきたといいます。下諏訪は、中山道の歴史ある宿場町で、宿も貴重な木造三階建て。元は料理屋として明治に創業した一家が切り盛りをしています。夕食は、川魚や野菜を中心に板長が腕を振るう料理の数々をいただきますが、何といっても新鮮な馬刺しがおすすめです。自家製味噌を一緒に味わうのも信州スタイル。見た目も鮮やか。モチモチとした食感で噛めば噛むほど旨味があふれ出てきます。
宿のもう一つの自慢は中山道で唯一湧くという温泉。男女別の内風呂で源泉かけ流しで、古来より皮膚病に効くとされているだけに、湯上りの肌はしっとりと落ち着きます。低カロリー高タンパクで鉄分豊富な馬肉を食べて温泉つかる。そんな美活ができる宿なのです。
生肉ジンギスカン 山形県・蔵王温泉「ろばた」
諸説ありますがジンギスカン発祥の地とされる山形県蔵王。部屋に臭いがつきやすいので敬遠されてしまうこともありますが思いっきりジュウジュウのジンギスカンを頂けるのが蔵王温泉にある「お食事処、お泊り処、お湯処 ろばた」。1階の居酒屋には地元の常連さんもたくさん。泊り客は、浴衣を羽織って先ずは生ビールをグビッ。そして、おもむろにラム肉を焼きましょう!「ろばた」のラム肉はサフォーク種で生肉。しかも手切りのため肉厚なのです。半年間熟成させた自家製のタレで食べれば箸もドンドン進みます。
「ろばた」のもう一つの魅力は温泉。敷地内から自然湧出した新鮮な源泉が注がれているのです。つまり、源泉の上に宿が立っているようなものですね。客室は1日限定3室のみ。臭いなんて気にすることありません。源泉にザブッと入ってサッパリしたら布団にイン!居酒屋の宿の特権です。
温泉地熱蒸しローストビーフ 長野県・穂高「中房温泉」
温泉を使った料理には、その湯で茹でる温泉卵や温泉水を利用した温泉粥がありますが、豪華にもローストビーフを食べさせてくれるのが長野県の秘湯「中房温泉」。その雪深さから、真冬は休館となります。「中房温泉」は、北アルプスの表銀座コースの始まりである燕岳の玄関口に位置し登山客に人気ですが、江戸時代から温泉成分の明礬採掘場として栄えるほど温泉の湯量と成分は折り紙付き。宿は、一つの山里のようであり、敷地内には温泉の湯煙が上がり硫黄の良い香りが立ち込めています。内と外、大小合わせて14か所ある浴槽は全て源泉かけ流しです。
宿主の百瀬さん一押しが「地熱蒸しローストビーフ」。信州牛のブロック肉を専用の箱に入れ地中に入れること約4時間。カットされるとバラ色の断面が。分厚く切られたスライスを噛みしめると、衝撃的な柔らかさ。温泉の熱だからジックリやさしく仕上げてくれるのですね。その他にも、同じく地熱で12時間も蒸し上げる若鶏もおすすめ。いずれも要予約です。湯上りの浴衣姿でワインを片手に地熱料理。粋な過ごし方してみませんか?
以上、冬こそ温かい温泉に浸かって山の恵みをいただく旅行を、ぜひお楽しみください。