第3号被保険者とは? 年金と健康保険料負担がないのが魅力
日本の年金制度のコアとなる国民年金制度ですが、日本に住む人は誰でも20歳から60歳まで40年間強制加入とされ、保険料の支払いが義務付けられています。国民年金の加入の仕方はざっくり3種類あります。- 第1号被保険者……自営業、学生など
- 第2号被保険者……会社や役所に勤める厚生年金加入者
- 第3号被保険者……第2号被保険者に扶養される配偶者
第3号被保険者は他の2種類と大きく違うところがあります。それは「保険料負担がない」ということです。第1号被保険者は毎月1万6500円ほどの保険料がかかりますし、第2号被保険者は厚生年金保険料をお給料に応じて負担し、その中に国民年金分も含まれていますので負担ゼロとはいきません。
一方、第3号被保険者は本人負担は全くの「ゼロ」です。国民年金の第3号被保険者になれた場合、健康保険も被扶養者になれるので、国民年金の保険料と病院にかかる時の健康保険料が無料で済んでしまうのです。これは絶大なメリットです。厳密にいえば、厚生年金の制度全体で広く薄く負担となっていますがそれはあくまで制度上の潜在的な話ですので、実質無料といっても差し支えないと思います。
国民年金の第3号被保険者とは、一般には会社や役所に勤める厚生年金加入者の夫に扶養されている「妻」を指します
国民年金保険料を完全に支払ったことになる
第3号被保険者となっていた期間は、国民年金保険料を完全に支払ったという扱いになります。したがって将来もらえる老齢基礎年金額は、その期間については100%支払ったものとして計算されます。同じように国民年金保険料を支払わない免除については、免除された金額に応じて老齢基礎年金額が減額されるのと比較するといかにお得かわかると思います。また、障害年金や遺族年金をもらおうと思った時、「保険料をある程度納付していること」という条件があります(納付要件)が、このチェックについても納付した扱いになりますので、ここでも非常にお得といえるかと思います。
離婚した際の年金分割にもメリットが
万が一離婚をしてしまった場合、双方の厚生年金を持ち寄って分け合う「離婚分割」という制度があります。第3号被保険者は、この離婚分割にも独自の制度が用意されていて、分割を申し出れば、第3号被保険者期間に対応する配偶者の厚生年金記録を無条件で50%分けてもらうことができます(「3号分割」)。ただし2008年4月以降の期間しか対象とならないなど、制限もありますが、いざという時には心強い制度です。第3号被保険者になるための条件は?
第3号被保険者とは、「第2号被保険者に扶養されている配偶者」ですので、- 第2号被保険者に
- 扶養されている
- 配偶者
1. は、夫が会社や役所などに勤め、厚生年金に加入している必要があるということです。自営業者に扶養されていても第3号被保険者にはなれません。
2. は「扶養されている」ということですが、具体的な条件を見てみましょう。
一般的には夫と同一世帯に入っていて、年収が130万円未満でかつ夫の年収の半分未満、ということになります。世にいう「130万円の壁」というものですね。ちなみに障害者や60歳以上の人の場合は180万円未満となります。
別居の場合でも、年収が130万円(または180万円)未満でかつ夫より年収が少なくて、生活を夫の収入に頼っている場合には扶養されているといえます。
年収の条件については、「いつからいつまで」という考え方ではなく、「今後1年間に得られる収入が130万円(または180万円)未満である見込みかどうか」で判断します。したがって、例えば年収150万円の仕事を始めた場合、130万円以上の収入を実際に手にするまで扶養に入っていられるわけではありません。年収150万円という見込みが立つのは仕事を始めた時点ですから、そこで扶養を抜けることになります。
また、この収入の中には、障害年金や雇用保険の給付など、いわゆる非課税の収入も含まれます。なので、雇用保険をもらう時は、日額3611円(130万円÷360日)未満でないと扶養に入ることはできません。トータルの雇用保険受給額が仮に130万円未満でも、日額が3611円以上の場合は扶養に入れません。
ちなみに、年収が130万円未満であっても、妻自身が厚生年金に加入する場合はそちらが優先されますので、扶養には入れません。
3. は、夫婦の間柄でないと第3号被保険者にはなれないということです。親や子供の扶養に入っていても、第3号被保険者ではないので、その場合第1号被保険者として毎月国民年金保険料を納めます。反対に、事実婚の場合でも条件を満たしていればOKの場合がありますので、確認してみてください。
メリット大の第3号被保険者、注意点も
保険料がかからずに年金を増やすことができる、非常にお得な第3号被保険者ですが、すべてにおいてバラ色の制度ではありません。当然注意すべきポイントもあります。チェックしてみましょう。・年金額は多額にはならない
第3号被保険者の期間は、国民年金保険料をすべて納めた扱いになりますが、20歳から60歳になるまでの40年間すべて第3号被保険者期間だった場合、もらえる年金は老齢基礎年金満額の年額77万7800円(2022年度)となります。決して多いとはいえませんね。保険料を払わずここまでもらえるという意味ではコストパフォーマンスは抜群ですが、限界があるということも知っておかなくてはなりません。
・上乗せ給付は対象外となることも
毎月自分で国民年金保険料を収める第1号被保険者には、付加年金というお得なオプションをつけることができます。また、国民年金基金に加入するという選択肢もあります。第2号被保険者には、当然ながら厚生年金の給付があります。
第3号被保険者には、こうした上乗せ給付をつけることはできません。幸い、2017年1月からは、個人型確定拠出年金(iDeCo)が第3号被保険者にも解禁になり、年金を増やす手立てができました。制度の性質上給付額が約束されるものではありませんが、選択肢が増えたことは大きな改善といえるでしょう。
・本人と配偶者にも年齢制限が
第3号被保険者として国民年金を積み立てることができる期間は、本人が20歳から60歳になるまでです。そこまでで未納や未加入期間があれば60歳以降に任意加入ができますが、任意加入の場合は仮に扶養に入っている間でも、自分で保険料を支払わなくてはなりません。また、本人が60歳になっていなくても、配偶者が65歳になれば原則として第3号被保険者は終了となり、第1号被保険者に移行します。年の差夫婦は要注意です。
注意! 昔の第3号被保険者の記録が漏れているかも
第3号被保険者の制度は1986年からスタートしていますが、昭和や平成1桁ごろの第3号被保険者の記録が漏れている人がちらほら見受けられます。これは、第3号被保険者になった届け出を出し忘れたことが原因です。今でこそ、健康保険の扶養に入る手続きも、国民年金の第3号被保険者になる手続きも同時に夫の会社経由で行いますが、以前は、第3号被保険者になった届け出だけ、妻が自分で市区町村役所(役場)に出さなければならなかったのです。この届け出を忘れた人が大勢いたため、本来は2年前までしか遡れないところ、現在は原則としていつでも過去の分の届け出を出すことができることになっています。夫に扶養されていた期間(1986年以降)が、ねんきん定期便などに反映されていない場合は、速やかに年金事務所に確認の上、手続きを行ってください。
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