シングルマザーの貧困の実態とは
シングルマザーの家庭は貧困に陥りやすい
離婚に対して抵抗が薄くなってきている昨今、離婚によって幸せになる人もいる一方で、生活していけるか不安という人も少なくありません。特に子どもがいるシングルマザーにおいては、生活苦が深刻化されているのは間違いありません。
厚生労働省によると、ひとり親世帯数は増え続けており、23年間(1988年度~2011年度の調査結果)で母子世帯は1.5倍、父子世帯は1.3倍に増加しています。
84.9万世帯(1988年度)→123.8万世帯(2011年度)
※内、母子のみの世帯は約82.1万世帯で、ひとり親世帯の約85%が母子世帯。
また、母子世帯の平均年間就労収入は181万円で、非正規雇用者(アルバイト・パート)になると平均125万円となっています。ひとり親の家庭の貧困が問題になっていますが、収入の面から見ると切迫した状態といえそうです。
出典:ひとり親家庭等の現状について(厚生労働省・平成27年4月20日発表)
シングルマザーがもらえる手当
手当や助成金、割引はどんどん利用しよう
シングルマザーになると児童扶養手当や各自治体からの手当もあります。代表的なものが以下の2つです。
■児童扶養手当
・子どもが0歳から18歳に達して最初の3月31日までの間にある世帯
・支給額
全部支給の場合には4万2290円、一部支給の場合で4万2280円~9980円(所得に応じて変動)
2人以上の場合
第2子の加算額
全部支給:9990円
一部支給:9980~5000円
第3子以降の加算額(1人につき)
全部支給:5990円
一部支給:5980~3000円
・支給は4ヶ月に1回(4月、8月、12月)
■児童手当
・ひとり親の家庭だけではなくて、支給対象となる子どもがいる家庭が対象
・対象は0歳以上、中学卒業(15歳に達してから最初の年度末)までの子ども
・所得制限があり、支給額が変わる
・支給額
0歳~3歳未満:1人につき月1万5000円(一律)
3歳~小学校修了前:月1万円(第3子以降:月1万5000円)
中学生:月1万円(一律)
所得制限以上:5000円(当分の間の特例給付)
・支給は4ヶ月に1回(2月、6月、10月)
シングルマザーに対する免除や割引
シングルマザーの家庭には、いろいろな免除や割引があります。■医療費の助成
病院などにかかったときの医療費を自治体が負担してくれるものです。通常は保険証があれば自費診察の3割を自分で支払いますが、この分を自治体が負担してくれます。所得の制限はありますが、健康保険に加入していれば申請可能です。
■子どもの教育費に対する助成
ほとんどの自治体で、保育料や給食費などの助成をしています。助成の条件や所得制限などは、自治体によって異なります。
■税金の控除
母子家庭で条件を満たすと、寡婦控除が受けられます。寡婦控除とは所得税の課税対象額を少なくしてもらえる制度なので、結果的に税金が少なくなります。
■JR通勤定期乗車券の割引
子どもの通学定期券ではなく、親の通勤用の定期乗車券に限り3割引きで購入できます。
■上下水道の減免
児童扶養手当を受給している家庭の水道料金を割引してくれる制度です。手続が必要です。
■国民健康保険料・国民年金の減免
ひとり親・母子世帯に限らず、収入が少ない家庭に適応されます。収入に応じて保険料や年金の金額を減額、場合によっては免除してもらえます。
貧困の理由・原因は離婚。シングルマザーが結婚相談所に入会する理由も……
母子世帯がひとり親になった理由・原因は、離婚が80.8%、未婚が7.8%、死別7.5%(2011年度)。23年間(1988年度~2011年度の調査結果)で、離婚母子が約20%ポイント増加 未婚の母が約4%ポイント増加しています。ひとり親家庭の自立を目指し、子育て・生活支援、就業支援、養育費の確保、経済的支援などの施策が推進されていますが、まだまだ母子世帯・母子家庭のシングルマザーは、多くが離婚をきっかけに貧困に陥ることが多いのが現状です。ですから再婚を望むケースも多く、結婚相談所に入会する理由のひとつになっています。
例えば、離婚してシングルマザーになったAさんのケースです。
Aさん自身はお嬢さん育ちで幼少のころからピアノを習い、音大に進み、結婚してからも家でピアノの先生をしていました。しかし、離婚後はピアノの先生だけでは生活していけず、離婚後は10歳の娘を抱えて派遣の仕事をしていました。しかし、1年で3度も派遣切りにあってしまい、派遣会社からも「次の仕事はなかなか見つからない」と言われてしまいます。
娘のために今の状況を何とかしなくては……と悩んだ結果、「もう一度結婚しよう」と結婚相談所への入会を決心されました。入会にもお金がかかりますから、目の前の生活のことを考えるとなかなか踏み切れず、半年も悩んだといいます。
それでもAさんが入会したのは、自分の稼ぎだけでは当分子どもに習い事をさせられない経済状況だったことが理由でした。
結婚をしていた頃はお金に余裕があったので、ピアノやバレー、塾など多くの習い事をさせていたそうです。ただ、公立小学校とはいえ学費もかかるうえ、習い事までとなると生活が苦しくなるのは目に見えていたので、離婚後は全部やめることになってしまいます。習い事をやめれば、友達との交流も絶つことになるので、娘は「また塾に行かせてほしい」と言うのだそうです。その度に「もう少し待ってね」と言い聞かせていたのですが、今のままでは当分無理なのが現実です。Aさんは自分が親から受けた教育を娘にあきらめさせることはできない、という結論に達し、再婚を決意したのだそうです。ご主人がいれば基本的に収入も増えるので、こういった流れでパートナーを見つける人も最近は増えてきています。
一方、お金が続かず婚活を諦める人も……
貧困を理由に再婚を希望して婚活をするケースがある一方で、貧困を理由に婚活を諦めるケースもあります。離婚してシングルマザーとして2人の子を育てるBさんは、やはり再婚を希望して結婚相談所に入会し、数人の方とお見合いをしてきました。順調に話が進むかと思っていたのですが、困った事態が起こります。
なんと「交通費がないからお見合いに行けない」と言うのです。「今月3000円しかないので動けない。給料日までまだ日があるのでとても困ってしまった……」と。結局、お見合い相手に事情を話して彼女の最寄り駅まで来てもらい、お茶代も彼の負担で会っていただきました。けれど、お金がないから今後の活動は無理ということで、結局退会せざるを得ず、結婚相談所での活動を諦めてしまいました。
結婚相談所に入会するにしても、その後の婚活にしてもお金がかかるのは事実です。当然、普段の生活にもお金がかかるので、どちらを取るのかと言ったら、やはり生活になってしまいます。「お金がないとできないことが多いんですね」というBさんの言葉がとても印象的でした。
国民の婚姻率を上げ、子どもの数を増やしたいと国が考えているならば、お金の面での支援など、さらなる充実が不可欠だと感じます。