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オーバーブッキングとは 航空会社の対応と補償

航空会社のオーバーブッキングは、2017年アメリカ・シカゴ国際空港で発生したユナイテッド航空による乗客の引きずり事件によって世界中で大きな注目を集めました。オーバーブッキングは日本でも日常的に発生します。その対応と補償はJALやANAなどでルール化されています。オーバーブッキングの意味や、自分がオーバーブッキングで飛行機に乗れない状況にならないための対処法を知っておきましょう。

シカマ アキ

執筆者:シカマ アキ

飛行機の旅ガイド

 「オーバーブッキング」でのトラブルがニュースに

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2017年5月にシカゴ国際空港でのオーバーブッキングによるトラブルを起こし、世界中から批判されたユナイテッド航空。その後、補償金の上限を引き上げるなどの対応を行っています。

アメリカ・シカゴの国際空港で2017年4月に起きた「オーバーブッキング」に関する衝撃的な事件。その内容は、アメリカのユナイテッド航空が自社便に職員を乗せるために、既に搭乗していた乗客を機内から強引に引きずり下ろし、その様子が映像で世界中にインターネットを通じて拡散されたことで大きな衝撃を与えました。

オーバーブッキングは、アメリカだけでなく世界各地、そして日本でも実は日常的に起こっています。実際にオーバーブッキングが起こった時、日本の航空会社で行われる対応や補償、オーバーブッキングの発生数や乗れなかった人数、そして自分が“乗れなくなる”状況を避けるための方法などをご紹介します。


そもそも「オーバーブッキング」ってなに?

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日本でも日常的に起こっているオーバーブッキング。当日の空港では出発までにチェックインカウンターなどで協力者を募ることがあります。写真は大阪国際空港(伊丹空港)

オーバーブッキングとは、過剰予約のことを指します。つまり、実際の座席数よりも多くの予約が入った状態のことです。それでも通常、航空会社はオーバーブッキングの状態のまま、運航を進めます。なぜなら、予約した人の中にキャンセルもせずに実際に搭乗しない人(ノーショー)がいると、過去のデータから見込んでいるからです。これは便によって異なります。

事前にキャンセルがないと空席のまま運航しないといけないので、その空席分が航空会社の負担になります。そのため、一部の便で予約をオーバーした状況ができるわけです。

日本では、オーバーブッキングであってもトラブルになることはほぼありません。その前に、さまざまな対策が講じられています。


オーバーブッキングは日本ではどのくらい起きているのか

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日本でのオーバーブッキングの数は多くはなく、極めて珍しいケース。過去の予約状況、時期などをもとにオーバーブッキングするかどうかは便によって異なります。写真は東京・羽田空港(国際線)

国土交通省の資料に、オーバーブッキングの数が公表されています。2017年4~6月の場合、日本航空(JAL)で不足座席数が654席、全日空(ANA)では1009座席でした。そして、実際に搭乗できなかった旅客数がJALが224人、ANAが152人。

全輸送人員に対する搭乗できなかった旅客の割合は1万人あたりで、JALが0.32、ANAが0.16という、“かなり珍しいケース”というのがデータからわかります。

国土交通省 フレックストラベラー制度に関する情報(2017年4~6月) ※PDF


オーバーブッキング発生時の日本の航空会社の対応と補償

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もしオーバーブッキングが発生した場合、協力者を募るホワイトボードが搭乗ゲート付近に提示されることがあります。 ※画像を一部修正しています

もし、オーバーブッキングであることが早めに判明していた場合、よくあるのが「機材変更」です。これは、運航予定の飛行機が中型機の場合、座席数が多い大型機に変更するケース。もし、機材変更される場合、予約・決済していて座席まで事前指定していると「使用機材の変更により、ご指定の座席を調整させていただきます」といった内容の連絡がメールなどで届きます。

そして、出発当日になってもオーバーブッキングの場合、「フレックストラベラー制度」が日本の航空会社では導入されています。

フレックストラベラー制度とは、国土交通省の資料によると、「オーバーセールス(提供座席数を上回る予約客を受け付けること)発生時における旅客の取扱いに関する統一的な手続を定めることによって、オーバーセールスに対する公平かつ円滑な解決を実現し、利用者利便の向上を図るものである」と、制度の趣旨が説明されています。

もし座席数の不足が起こる場合、空港のチェックインカウンターや搭乗ゲートで協力者を募るホワイトボードなどが置かれます。実際、空港で協力者を募集する時点で、多くの人が「協力したい」と手を挙げるため、オーバーブッキングの便が出発するまでにほぼ解決します。時には、後続の便との時間差が少ない、単に帰路につくだけのビジネスマン、時間に余裕がある学生らなど、募集する人数を超える協力者が申し出てくるケースも見られます。


日本での協力金はルール化、海外では金額が上がることも

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JAL公式ホームページにある「フレックストラベラー制度」についての説明ページ。

協力した人への謝礼のルールはJAL、ANAとも共通で「後続便の場合は1万円、翌日の便だと2万円」です。各航空会社のマイレージクラブ会員だとそれぞれ7500マイル、1万5000マイルの受け取りも選択できます。

この協力金および協力マイルの増減は、日本の航空会社ではありません。ただ、協力したことによる便の振替に伴うタクシー代などの交通費や宿泊費が上乗せされる場合はあります。

海外の航空会社の場合ではルールが異なります。シカゴ国際空港での事件で批判を浴びたユナイテッド航空の場合、当初は400ドルに加えて1泊分のホテル無料、誰も協力者がいなかったところ800ドルにまで上がり、事件後さらに補償金の上限を1350ドル(約15万円)から1万ドル(約110万円)まで引き上げたことも話題になりました。


ANAで事前登録できる「AMCフレックスパートナー」

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ANAマイレージクラブ会員が対象の「AMCフレックスパートナー」制度。会員ページから簡単に登録できます。


ANAでは、マイレージクラブ会員を対象に、あらかじめ、便の変更などについて協力する意思があることを事前登録できる「AMCフレックスパートナー」があります。

もし登録しても協力義務は発生せず、協力するかどうかは自主的に判断できます。現金での協力金でなく「協力マイル」の選択も可能です。また、オーバーブッキングが見込まれる便の予約を持っている場合、AMCフレックスパートナーに登録していると「後続の便への振替」を個別に提案されることもあるようです。


オーバーブッキングで“積み残し”されるのを避ける方法

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オーバーブッキングで乗れないのを避けるには早めに空港に行ってチェックインするのが大事です。写真は札幌・新千歳空港。


もしも、オーバーブッキングの便に当たった場合、協力者がいれば解決するものの、いなかった場合は誰かが乗れない、つまり“積み残し”されてしまいます。それを避ける方法がいくつかあります。

まず、チェックインを早めに行い、座席も指定してしまうのが最も簡単な方法。また、週末の最終便など混雑しそうな便をあらかじめ回避して予約する、保安検査場を15分前に必ず通過することなどが挙げられます。航空会社の上級会員、乗り継ぎで後続の便にも影響が出る旅程の人、高齢者や小さな子どもを連れた人なども考慮されます。

【関連リンク】

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※海外を訪れる際には最新情報の入手に努め、「外務省 海外安全ホームページ」を確認するなど、安全確保に十分注意を払ってください。

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