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オーバーブッキングとは?なぜ起こる?航空会社の対応と補償

飛行機の「オーバーブッキング」は、日本でも日常的に発生します。その対応と補償は、JALやANAなど各社でルール化されています。そもそもオーバーブッキングとは、また自分がオーバーブッキングで飛行機に乗れない状況にならないための対処法を知っておきましょう。

シカマ アキ

執筆者:シカマ アキ

飛行機の旅ガイド

ユナイテッド航空

2017年に、シカゴ国際空港で発生したオーバーブッキングによるトラブルで世界中から批判されたユナイテッド航空。その後、補償金の上限を引き上げるなどの対応を行った

航空会社の「オーバーブッキング」は、2017年にアメリカ・シカゴ国際空港で発生したユナイテッド航空による乗客の引きずり事件によって世界中で大きな注目を集めました。
<目次>

「オーバーブッキング」トラブルが大ニュースに

ユナイテッド航空が自社便に職員を乗せるために、既に搭乗していた乗客を機内から強引に引きずり下ろし、その様子が映像で世界中にインターネットを通じて拡散。大きな衝撃を与えました。

オーバーブッキングは、アメリカだけでなく世界各地、もちろん日本でも実は日常的に起こっています。実際にオーバーブッキングが起こった際に、日本の航空会社で行われる対応や補償とは、またオーバーブッキングの発生数や乗れなかった人数、そして自分が「乗れなくなる」状況を避けるための方法などをご紹介します。

そもそもオーバーブッキングとは? 

伊丹空港

日本でも、実は日常的に起こっているオーバーブッキング。当日の空港で出発までにチェックインカウンターや搭乗ゲートなどで協力者を募ることもある

オーバーブッキングとは、「過剰予約」のこと。つまり、実際の座席数よりも多くの予約が入った状態のことです。

航空会社は通常、座席数を超過する予約があっても、そのまま運航を進めます。なぜなら、予約客の中に、キャンセルせずに実際に搭乗しない人(ノーショー)がいると、過去のデータから見込んでいるからです。ただ、これは便によって異なります。

事前にキャンセルの連絡などがないと、空席のまま運航しないといけなくなり、その空席分は航空会社の負担となります。そのため、予約をオーバーした状況ができるわけです。

日本では、オーバーブッキングであってもトラブルになることはほぼありません。その前に、さまざまな対策が講じられているからです。

オーバーブッキングは日本ではどのくらい起きている?

那覇空港

日本でオーバーブッキングとなる数は多くない。過去の予約状況、時期などをもとにオーバーブッキングになるかどうかは便によって異なる

国土交通省の資料に、オーバーブッキングの数が公表されています。2023年1~3月の場合、日本航空(JAL)で不足座席数が158席、全日空(ANA)では907席でした。そして、実際に搭乗できなかった旅客数がJALが73人、ANAが203人。

全輸送人員に対する搭乗できなかった旅客の割合は1万人あたりで、JALが0.10、ANAが0.24です。つまり「かなり珍しいケース」というのがデータからわかるでしょう。

オーバーブッキング発生時の日本の航空会社の対応と補償

もし、オーバーブッキングであることが早めに判明していた場合、よくあるのが「機材変更」です。これは、運航予定の飛行機が中型機の場合、座席数が多い大型機に変更するケース。

出発までに機材変更となった場合、予約・決済していて座席まで事前指定していると「使用機材の変更により、ご指定の座席を調整させていただきます」といった内容の連絡がメールなどで届きます。
協力者ボード

もしオーバーブッキングが発生した場合、協力者を募るホワイトボードが搭乗ゲート付近に提示されることがある(※All About編集部注:画像の一部を加工しています)

そして、出発当日になってもオーバーブッキングの場合、「フレックストラベラー制度」が日本の航空会社では導入されています。

フレックストラベラー制度とは、国土交通省の資料によると、

「オーバーセールス(提供座席数を上回る予約客を受け付けること)発生時における旅客の取扱いに関する統一的な手続を定めることによって、オーバーセールスに対する公平かつ円滑な解決を実現し、利用者利便の向上を図るものである」
国土交通省フレックストラベラー制度に関する情報

と、趣旨が説明されています。

もし座席数の不足が起こる場合、空港のチェックインカウンターや搭乗ゲートで協力者を募るホワイトボードなどが置かれます。実際、空港で協力者を募集する時点で、多くの人が「協力したい」と手を挙げるため、オーバーブッキングの便が出発するまでにほぼ解決します。

時には、後続の便との時間差が少ない、単に帰路につくだけのビジネスマン、時間に余裕がある学生らなど、募集する人数を超える協力者が申し出てくるケースも見られます。

日本での協力金はルール化、海外では金額が上がることも

JAL,フレックストラベラー制度

JAL公式ホームページにある「フレックストラベラー制度」についての説明ページ

協力した人への謝礼のルールはJAL、ANAとも共通で、「後続便の場合は1万円、翌日の便だと2万円」です。

また、JALが当日7500マイル/翌日以降1万5000マイル、ANAが当日1万マイルまたは1万ANAコイン/翌日以降2万マイルまたは2万ANAコインの受け取りも選択できます(各社のマイレージ会員などのルールあり)。

この協力金および協力マイルの増減は、日本の航空会社ではありません。ただ、協力したことによる便の振替に伴うタクシー代など、交通費や宿泊費が上乗せされる場合もあります。

一方、海外の航空会社の場合、このルールが異なります。

シカゴ国際空港での事件で批判を浴びたユナイテッド航空の場合、当初は400ドルに加えて1泊分のホテル無料、誰も協力者がいなかったところ800ドルにまで上がり、事件後さらに補償金の上限を1350ドル(約15万円)から1万ドル(約110万円)まで引き上げたことも話題になりました。

ANAで事前登録できる「AMCフレックスパートナー」

ANA,フレックストラベラー

ANAマイレージクラブ会員が対象の「AMCフレックスパートナー」制度。会員ページから簡単に登録できる

ANAでは、マイレージクラブ会員を対象に、あらかじめ、便の変更などについて協力する意思があることを事前登録できる「AMCフレックスパートナー」があります。

もし登録しても協力義務は発生せず、協力するかどうかは自主的に判断できます。現金での協力金でなく「協力マイル」の選択も可能です。また、オーバーブッキングが見込まれる便の予約を持っている場合、AMCフレックスパートナーに登録していると「後続の便への振替」を個別に提案されることもあるようです。

オーバーブッキングで“積み残し”されるのを避ける方法

新千歳空港

オーバーブッキングで乗れないのを避けるには早めに空港に行ってチェックインするのが大事

もしも、オーバーブッキングの便に当たった場合、協力者がいれば解決するものの、いなかった場合は誰かが乗れない、つまり「積み残し」されてしまいます。それを避ける方法がいくつかあります。

まず、チェックインを早めに行い、座席も指定してしまうのが最も簡単な方法。また、週末の最終便など混雑しそうな便をあらかじめ回避して予約する、保安検査場を15分前に必ず通過することなどが挙げられます。

航空会社の上級会員、乗り継ぎで後続の便にも影響が出る旅程の人、高齢者や小さな子どもを連れた人なども考慮されます。

<参考>
・「フレックストラベラー制度に関する情報(2023年1~3月)」(国土交通省)
・「フレックストラベラー制度のご案内」(ANA)
・「フレックストラベラー制度」(JAL)
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※海外を訪れる際には最新情報の入手に努め、「外務省 海外安全ホームページ」を確認するなど、安全確保に十分注意を払ってください。

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