9月1日は「防災の日」
住まいの取得にあたって「災害対策」は不可欠で最も重要なテーマです。なぜなら、私たちは我が国のどこに住んでいても災害に遭うリスクがあるからです。そこで今回の記事では、9月1日の「防災の日」に関連して、住まいと暮らしの災害対策、特に「心構え」を中心に考えていきたいと思います。大地震など大きな災害はいつ発生するのか分かりませんが、住まいや暮らしについての心構えがあることで被害の広がりを食い止め、復興のスピードを高めることができるはずです。「防災の日」の由来とは?
まずは、「防災の日」について確認しておきましょう。「台風、高潮、津波、地震等の災害についての認識を深め、それらの災害に対処する心構えを準備する」ため、国により1960年(昭和35年)に制定されました。1982年(同57年)からは9月1日を含む1週間が「防災週間」と定められています。(参照:総務省統計局 なるほど統計学園HP)由来となったのは1923年(大正12年)9月1日に発生した関東大震災です。東京都を中心に千葉県や神奈川県、茨城県、静岡県など広域に被害が広がった地震災害でした。10万人超の死者・行方不明者を出し、37万棟超の住宅が被害に遭ったといわれています。
2011年3月に発生した東日本大震災では、死者・行方不明者が約1万8000人、建物の全壊・半壊が約4万棟でしたから、比べてみるとその被害の大きさが分かります。関東大震災当時は、住宅の多くが木造でしたから被害が大きくなったのです。
災害の拡大抑止に効果が大きい防災の心構え
関東大震災以降、様々な大規模災害が発生しましたが、その度に我が国は被害を乗り越えてきました。それには「防災の日」の制定以降はもちろん、それ以前から人々の中に確実に養われてきた災害への備えや意識が作用したのだと思われます。ちなみに、関東大震災の被害を広げる要因となった火災については、明治時代や江戸時代以前より人々は高い危機意識をもっていました。例えば、江戸時代には火災の火元になった家には、死罪を含む大変な罰が課せられていたといいます。
関東大震災を含むかつての住宅や建物は、技術や素材の発達が不十分だったなどの問題から十分な火災対策ができませんでしたから、「火災を起こすことは罪」という意識、心構えを徹底することで災害の広がりを防ごうとしていたわけです。そして、そのような意識付けは現代にも受け継がれ、災害の広がりを抑える効果をもたらしています。
原発事故を伴った東日本大震災の混乱でも一定の秩序が保たれたことにもつながっているはずです(色々な見解はありますが)。あの当時、世界からその様子が賞賛されましたが、助け合いの精神を持てたのは、私たちの中に一定の防災の心構えがあるからです。つまり、このことからいえることは、防災の「心構え」は大変重要であるということです。
阪神淡路大震災以降大きく進化したハード面の対策
もちろん、心構えだけでは災害を防ぐことはできません。ですから、住まい1軒1軒、建物1棟1棟における災害対策が重要になるわけです。ここで、住まいづくりにおけるハードの部分について簡単にまとめておきます。現在、大きく三つの技術が存在します。【耐震技術】
地震の揺れの力を受け止め、建物が全半壊しにくくする技術
【免震技術】
地震の揺れの力を建物に伝えづらくし、建物の揺れを軽減する技術
【制震技術】
地震の揺れの力を軽減し、建物のダメージを少なくする技術
これらの技術は1995年(平成7年)1月17日に発生した阪神淡路大震災以降、格段に進歩しました。この他に火災対策も進化。最近では、外壁材などの性能強化といった耐火構造により、木造住宅でも火災対策がずいぶんと高まってきています。
また、太陽光発電や家庭用蓄電池などによる停電対策となるシステムもずいぶんと普及してきました。これは、東日本大震災での停電、さらには計画停電で不自由な生活を強いられたことが反映されたものです。このようなハード面については、詳しくは「災害時に身を守ってくれる住まい『防災住宅』最新事情」をぜひご覧ください。
東日本大震災以降注目が高まったソフト面の強化
このようなハード面の備えはもちろん重要なのですが、東日本大震災以降のトレンドはハードよりはむしろソフト面にあります。ソフトとは要するに、今回の主題である住まいや暮らしにおける災害への心構えです。例えば、室内に大きな家具を置かない、あるいは地震の揺れによっても動かないよう固定をしておくことがあげられます。家具が倒れてこなければ、ケガをする可能性が低くなり、避難しやすくなるからです。同様なものにガラスの飛散防止もあります。
避難に必要な身の回りのものを、いつでも取り出せる場所、つまりどこにあるのか分かりやすい場所に置いておくことも防災ソフトの一つです。そのためには、収納を工夫する必要もあり、近年、様々な工夫が見られるようになりました。
これは、同時に住まいの中に食料や飲み水など必要不可欠なものを保管し、使いやすくするもので、収納と防災の両方を考慮した暮らしを常に行う工夫です。これらにより、避難生活を短くでき、復興・復旧のへの取り組みをしやすくできるわけです。
これらは、住まいづくりにおいてはじめから計画しておくのが一番ですが、皆さんがお住まいの賃貸住宅を含めた既存の住宅でも工夫することによって実現できます。実践されてみてはいかがでしょうか。
もっとも、予め災害対策と収納を両立した設えであっても、問題意識がないとうまく活用できません。日頃からの「心構え」が大切というわけです。ちなみに、私は取材道具一式を入れて普段持ち歩いているカバンの中に、ペットボトル入りの水や軍手などを入れて、最低限の備えとしています。
「防災グッズは何を用意したらいいのか?全リスト」や「万が一の際に慌てないために、誰でもできる災害対策」もあわせてご覧ください。
災害支援を経験した人の方が防災意識が高い!?
最後に、住まいや暮らしにおける防災の心構えに関連する調査発表をご紹介します。積水ハウスが2017年8月10日に発表した「防災についての意識調査」では、 「震災時に支援した」人は住まいの災害対策も実践傾向 震災への関わりによって防災意識や対策状況に大きな差」と指摘しています。詳細は以下の通りです。「直接被災した人」「間接的に被災した人」「支援をした人」「全く関わらなかった人」という四つのグループにわけて災害対策の実践状況を比較すると、「支援をした人」が他のグループの人よりも住まいの防災について具体的に行動している傾向となったそうです。行動しているということは、意識が高いということなのだと思われます。
「支援した人」は、東日本大震災や熊本地震などの被災地にボランティアで足を運んだ人だけでなく、被災地の商品を購入した人も含まれているとのこと。前者は距離や時間の問題があって誰でもできることではありませんが、後者は比較的やりやすいことといえるのではないでしょうか。
被災地の復興には息の長い支援が必要と言われますが、物品購入などを通じ、私たちは息の長い、無理のない範囲の防災の心構えをすることが必要なのではないかと、この調査結果から感じられます。
現在、東日本大震災の被災地には、震災当時の出来事について学べる施設ができており、観光客も気軽に訪れることができるようになっています(例:石巻市復興まちづくり情報交流館 中央館)。そんな場所を訪れてみるのも防災の心構えを強くする契機になるのではないでしょうか。
過半数が防災の日とその由来を知らない…
調査ではこのほか、前述の「防災の日」について、「日にちも由来も知らない」(38.3%)、「防災の日があることを知らない」(14.2%)と合わせ、過半数が防災の日について知らないことも指摘されていました。今更、強調することではないでしょうが、南海トラフ地震などいつ発生してもおかしくは内状況といわれています。また、地球温暖化の影響から、台風の大型化や集中豪雨の被害も懸念されます。
この記事を読んでいただいた皆さんは、これを契機に家族で住まいと暮らしの防災のあり方を話し合ってみてはいかがでしょうか。例えば、避難時にどのように行動するのか、どこに避難するようにしておくかなど、家族の中に共通認識があれば、万が一の際にも安心感が増します。
地域の方々との交流を常に図っておくことも、万が一の際に心強いはず。一人ひとりが防災の心構えを強めておくことが、災害時に我が身と家族を守る最大の備えになるに違いありません。防災の日と防災週間に合わせ、由来を含め、防災について改めて考えてみられてはいかがでしょうか。
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