子供の英語教育/子供のための英語

幼児の英語教育では何を大事にするべきか?

幼児の英語教育では何を大事にするべきでしょうか?日本人の万年コンプレックスともいえる「英語」。私たち親世代では中学一年生から始まっていた英語の授業も、いまや小学5年生から必修に。そのため未就学児からの英語教育が大盛り上がりの感がありますが、何が大事なのかを紐解きます。

斎藤 貴美子

執筆者:斎藤 貴美子

子育てガイド

Eテレ幼児英語番組!発音への情熱が凄すぎる

幼児の英語教育はどうする?

幼児の英語教育はどうする?

日本人の万年コンプレックスともいえる「英語」。幼児の英語教育では何を大事にするべきかについて考えます。

幼児の英語といえば、身近なところでEテレの『えいごであそぼ!with Orton』を見ている方も多いのではないでしょうか?

長年続いた前作『えいごであそぼ!』は、英語ネイティブが歌って踊って絵本を読むということが基本。幼児が何か新しいことを始める時にマストな「楽しいっぽい感覚」で構成されていましたが、『えいごであそぼ!with Orton』になってから、発音に力を入れているな~と感じた方も多いのでは。

私が思うに、その発音への情熱はもはや「あそび」じゃなくて「本気」。

animalはアニマルじゃなく、エェニモル
lionはライオンじゃなく、レイヨン


正しい発音=「複雑な舌さばき」を体に覚えさせるため、厚切りジェイソン演じるジェイソン博士が、あの手この手で「マシン」を考えだし、子役にトライさせる。日本語英語な発音だと、マシンは作動せず、正確な発音ができるまでトライは続きます。
(余談ですがこのマシン、大人目線だと、企画・制作している番組関係者さまの苦労がありありとしのばれ、NHK受信料の払い甲斐があるなと感じます)

そんな『えいごであそぼ!with Orton』を最初に見たとき「この子供たち世代は、サラッときれいな発音ができるようになるのかな?いいな~」と感慨深いものでしたが、番組が続くにつれ、発音への情熱が必死すぎて日本人の英語コンプレックスが立ちのぼっているように見えてきました。

確かに発音というものをテレビで可視化するために、マシンを使って分かりやすく説明するのはよい方法です。でも、あそこまでやらなくても、子供はサラリと真似できるのではないでしょうか?

 

『えいごであそぼ!with Orton』のHPをのぞいてみると

ここで『えいごであそぼ!with Orton』のホームページに総合指導をされている佐藤久美子教授のコメントを発見しました。
抜粋すると

『まだ“聞く力”が柔軟なうちに、ネイティブの英語音を聞いて反復してみてください。発語する力がつくだけでなく、語彙力アップにもつながります。(中略)ぜひご家族のみなさんもいっしょに、楽しく英語音に挑戦してみてください!』

とのこと。

ここで、ハタと思いました。もしかして、この大仰な「マシン」は、大人の発音を意識させ、矯正する意味もあるのかもしれないと……。



「英語はしょせんツール」と捉えるのは古い?

ネイティブの発音にもいろいろある

ネイティブの発音にもいろいろある

現在、ビジネス等で実際に英語を使っている大人を除くと、日本人は日本語しか話せない人が大半でしょう。そういう私のような大人からすれば、英語はしょせん「ツール」であるから、そこまで発音にこだわらなくてもいいんじゃないかと考えていました。

英語ネイティブとひとくちにいっても、例えばTOEIC教材のイギリス、カナダ、アメリカ、オーストラリア出身のスピーカーの発音はかなり違う。でも、それは地域色が出ているのであって、当然じゃないかと。

大切なのは、細部の発音の正しさよりも、グローバル社会で通用する態度や考え方、意見の発し方を大事にし、学ぶべきだろうというものです。

しかし、その考え自体がしょせん「英語を話せないけど、ヨシとしている親世代」だとしたらどうでしょう?


英語の発音にこだわる意味

目的は異文化・異人種の前で意見を言うこと

目的は異文化・異人種の前で意見を言うこと


結論からいえば、「多人種の大勢の前ではっきりモノをいい、理由を述べられる」大人になりたいのであれば、「英語で意見(結論)と、その理由をしっかり説明できるクセ」を身につけると良さそうです。

そして、英語の発音にこだわって、例えばアメリカナイズな発音ができると、子供たちは「英語をきれいに話せてる!」という自信がつく。よって、英語への照れや拒否反応を無くし、習得が早くなるのではないかと思ったのです。

「語学と文化は切り離せないものだ」とよく言われますが、日本語は日本語らしい思考・態度を生み、英語を学ぶと英語らしい思考と態度が身に着くのではないでしょうか?


語学と文化はリンクしている

「納得させる」英語の文化と、「察してもらう」日本の文化

「納得させる」英語の文化と、「察してもらう」日本の文化

先ほどの結論の理由を説明します。

日本の場合。日本人は単一民族で、言いたいことを表立って言わず、輪を乱さないことに重きを置く文化があり、年上を敬うという儒教的概念も浸透しています。意見を主張するより「察してもらう」文化です

企業を例に出すと、上司より先に帰ってはいけない雰囲気や、年功序列の制度。中小企業だと社長の鶴の一声で可否が決まり、残業はがんばりの証といった雰囲気です。

対して英語圏では、多民族です。個人的なイメージですが、自分の意見を分かりやすく伝え、建設的に解決方法を探ることに重きが置かれているように思います。価値観の違う相手を「納得させる」文化です。

同じく会社の例だと、昇進に年齢は関係なく、過程より結果を見て評価する、残業は不効率の証といった雰囲気です。

そんな英語的文化とリンクしている英語の構造は、周知のように結果を先に述べ、理由があとに続きます。大勢の多人種の前で、言いたいことを分かりやすく端的にリズミカルに伝えるのに、適しているなあと思うのです。


この文化的な面で日本語と英語の違いを端的に表している身近な例が、JR東日本の電車のアナウンスです。
日本語だと「この先、電車が揺れますのでご注意ください。お立ちのお客様はお近くのつり革や手すりにお掴まりください。」

英語だと「We will be changing to another track.If you are standing,please hold on hand-traps or rail.」。
「別のトラックに移動するので」と理由がついてきます。英語文化は多人種を納得させるための「なぜなら」の部分に重きが置かれているように感じますが、考えすぎでしょうか?


日本の雰囲気は変わっていく

友人関係もグローバルになっていくはず

友人関係もグローバルになっていくはず

現在、日本では前述の「昭和ぽい雰囲気の会社」が減ってきて、ベンチャー企業をはじめ英語的組織が増えていると感じます。今後、ビジネス界でその雰囲気は加速していき、日本の組織でもハッキリした意見が必要な場面は増えていくでしょう。

話がやや壮大になってしまいましたが、そんな就労環境の変化を予想すると、幼児から必死に正しい(番組中ではアメリカナイズな)英語を発音させるのにも、なんとなく納得してしまったのでした。

ただしちょっと面倒なことに、現在の日本の学校、親戚・近所付き合いでは「英語を話せない大人」が多く、「あいまいさを好む・察する文化」が根強いでしょう。

そう考えていくと、日常は日本語ぽい文化で過ごしつつ、英語を学びながら英語的思考と態度を展開していく、ということになりそうです。なんだかこれからのグローバル世代は負うものが多いです。


そんなわけで、幼児の英語教育はどうしたらいい?

スペルを覚えないといけない英語

スペルを覚えないといけない英語


さて、元にもどって幼児の英語教育は何が大切で、どうすればいいのでしょうか。発音?楽しく親しむこと?個人的な意見ですが、子供は親のことを真似したがるので、まず親が英語と仲良くすることが重要だと思います。

親も恥ずかしがらず発音をまねて洋楽を歌ったり、英語の絵本を読んであげたりして、とりあえず「特別じゃない言語」という意識を持ってもらい、学習のハードルを下げておく。

そして英語学習の最終的なゴールは「テストでいい点を取ること」ではなく、「異人種の前でも堂々と自分の意見を英語で述べること」だと想定し、とりあえず大人も堂々と外国の方とコミュニケーションを取る姿勢を示せるといいのでしょうね。

2020年の東京オリンピックに向けて外国人観光客が増えているいま、道を聞かれたら、道案内+近くのオススメのお店なんかを教えてあげられたら、かっこいのですが……私もまだその域に達しておりません。

そうなると、英語教育は子供に「やらせる」ものではなく、親も一緒に学ぶべきものとなりそうで……けっこう高いハードルですね。

 


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