色彩心理学とは?
好きな色がもたらす効果とは
好きな色とその影響も、色彩心理学の主要なテーマのひとつですが、色の感じ方やイメージは、広く一般論として知られているものもあれば、個人の体験にもとづくものまで幅広く、非常に複雑です。
<目次>
好きな色を大切に! カラーセラピーとは?
個人の体験と結びついた色のイメージは、感情を制御するヒントを与えてくれます。
- 人間の生理的反応に結びついているもの
- 集団共通の文化に結びついているもの
- 個人の体験と結びついているもの
1つめの色彩の生理的側面と2つめ文化的側面には、法則や普遍性を見出すことができるのに対して、3つめの個人の体験から生まれた独自の色のイメージは把握することが難しいです。
特に、色の好き嫌いは、流動する心の動きそのものです。好悪の感情は表情や仕草となってあらわれます。何の感情も湧いてこないこともあれば、感情がかき乱されてしまうこともあるように、それらを意識的にコントロールすることは難しいものです。感覚は研ぎ澄まし、感性は磨きあげることができますが、感情は制御しがたいものです。
しかし、目を閉じて好きな色を思い描くと、その色と結びついた記憶が蘇ってきます。記憶の中のものごとには、好悪の感情を制御するヒントが隠されています。色の力を借りて、過去と現在の感情を確かめながら、未来のビジョンを思い描いていく……カラーセラピーによく見られる手法です。
老若男女に愛される「青」色と一番人気になれない「緑」色
青は、古今東西、老若男女に愛される色です。
青や緑は、地球上の広い範囲で、多く見ることのできる色です。古代日本語の青は、青から緑の広い範囲を指しましたが、言語が進化するにつれて、青と緑に分化しました。緑も人気の高い色ですが、二番手や三番手に落ち着いてしまいがちです。
人は緑を見ていると視線が落ち着き一点に安らうのに対して、青を見ていると視線が落ち着かずさまよい続けます。草木の緑は簡単に手にいれることができますが、空や海の青は手でつかむことすらできません。青は憧れをかきたてる色、緑は安らぎをもたらす色。理想を追い求めることに迷いが生じたとき、青よりも緑を好ましく感じるのかもしれません。
対照的な生理的作用を示す「青」色と「赤」色
寒色系の青と暖色系の赤がもたらす影響は対照的です。
色は、仕事の進み方にも影響を与えます。人は赤い環境では集中力が高まり、青い環境では直感力に頼るようになります。赤も人気の高い色ですが、多くの人が赤よりも青を好むのは、赤の興奮作用よりも青のリラックス作用の方が心地よいからかもしれません。
パソコンの画面の背景を青にした実験では、単純作業がはかどり、想像力が高められることが明らかになりました。記事「リンクテキストはなぜ青い?色で考えるフリマ戦略」でご紹介したように、リンクテキストを青にすると、クリックを促す作用があります。ネットオークションに出品する際、写真の背景を赤にすると売り値が高くなります。
暗い色、濁った色を好ましく感じる理由は?
色は心の状態を映し出します
好ましいと思う色は、気分だけでなく健康状態とも結びついています。例えば、アルコール依存症の患者は茶色を好みます。鬱気味の多くの人は、自分の状態を示す色として灰色を選び、自分を幸せだと感じている人の多くは、黄色を選びます。色の好みが変わってきたら、気分や体調の変化を意識してみるとよいでしょう。
ドレスコードの「白」と「黒」
白は花嫁の色。ドレスコードも集団共有の文化のひとつです。
このように、好きな色とこれまで買い揃えてきた色が一致しないのは、色の文化的側面を無視することができないことも要因のひとつです。多くの人はドレスコードのような集団共通の文化を意識しながら色を選びます。
例えば、結婚披露宴に出席する人は白を着るのはタブーです。なぜなら、白は花嫁の色とされているからです。色の選択を間違えると、社会的な生活を営む上で、多少なりとも支障をきたします。結婚披露宴に招かれた女性が、フォーマルな黒のワンピースを着るのは間違いではありませんが、無難な選択をする人が多いことを示しています。
しかし、ドレスコードは時代とともに変化します。例えば、黒いリクルートスーツが当たり前になったのは1990年代後半頃から。それ以前のリクルートスーツに黒はなく、グレーやネイビーが定番でした。黒いリクルートスーツが定着してから、ビジネススーツにも黒が増えました。しかし黒といっても、ブラックフォーマルとは異なります。
好きな色はよい影響を与える
灰色は女性の多くが好まない色。好まない色に囲まれていると、能力を発揮することができません。
とはいえ、好きな色だからといって特定の色に固執しすぎると、心身のバランスが崩れてきます。社会的な生活を営んでいれば、苛立つこともあれば、落ち込むこともあります。リラックス作用に優れた青が心地よいときもあれば、活力を与えてくれる赤が必要なときもあります。
心と身体にはあらゆる色が必要です。その時、その場所で、あなたが美しいと感じる色、あなたが欲しいと思う色は、あなたによい影響を与えてくれるでしょう。
【参考文献】
『色の力 消費行動から性的欲求まで、人を動かす色の使い方』ジャン=ガブリエル・コース
『色彩と感性のポリフォニー』小町谷朝生
『アリアドネからの糸』中井久夫 他
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