2013年、株式会社バルクが行った「スーツに関する調査」によると、男女共「3~5着」(33.4%)が最も多いそうです。スーツがたくさん売れる時代ではなくなりましたが、きちんとした印象を与えたいとき、スーツに勝るものはありません。なかでも、オーダースーツは、自分だけの1着を手にいれることのできる満足度の高いサービスです。

実は難しい、オーダースーツの色選び

しかし、メリットばかりではありません。オーダースーツは好みのデザインや生地を選べますが、試着しながら選ぶ既製品と違って、仕立て上がりをイメージするのが難しいのです。特に難しいのが色選びです。

はじめてオーダースーツを購入される方の中には、仕立て上がったスーツをご覧になって、「えっ?こんな色だったっけ?」とおっしゃる方もいらっしゃいます。控えの伝票には、生地見本が貼ってあります。仕立て上がったスーツの横に小さな生地見本を並べると、同じ色には見えません。しかし、スーツの上に生地見本を重ねると、確かに同じ生地であることがわかります。

なぜこのような現象が起きるのでしょうか?色は私たちの目の前にあるのではなく、脳の中でつくられるからです。

今回は、オーダースーツの色選びの3つの秘訣をご紹介します。

画像よりも現物、生地見本よりも大きな生地から選ぼう

色の面積効果の例:大小の正方形は同じ色ですが、面積を変えると明るさや鮮やかさが違って見えます。

色の面積効果の例:大小の正方形は同じ色ですが、面積を変えると明るさや鮮やかさが違って見えます。

面積の大小によって色の見え方が違ってくる現象を、「色の面積効果」と呼びます。明るい色は小さな面積より大きな面積の方がより明るく、鮮やかに感じられます。反対に、暗い色は小さな面積より大きな面積の方がより暗く、くすんで見えます。

色の面積効果は、オーダースーツに限らず、カーテン、家具、壁紙、フローリング、外壁などを選ぶ際に留意したいポイントのひとつです。

例えば、2016年、紳士服のコナカが立ち上げた新ブランド「DIFFERENCE」では、スマホやタブレットを活用し、生地や仕上がりのイメージを画像でもご確認いただけるように、オーダースーツのサービスも進歩しています。しかし、画像よりも生地の現物、できれば、小さな生地見本ではなく、大きな生地をご覧いただくことをお勧めします。

オーダースーツの売り場には、スーツ1着分(3.2メートル程度)にカットした生地があります。生地を肩からかけて、鏡に映った自分の姿を見て、仕立て上がりをイメージしましょう。

光によって色の見え方が違う

自然光と照明では、色の見え方が違います。

自然光と照明では、色の見え方が違います。

色の見え方を左右するのは、面積だけではありません。光も重要な要素です。仕立て上がったスーツは、会議室(蛍光灯のような白い光)、夜の会食(白熱灯のような黄色い光)など、さまざまな場面で着用します。どのような見え方になるのか、イメージを膨らませることが大切です。

店内は、明るい場所、やや暗い場所、黄色っぽい照明、白っぽい照明など、場所によって光の条件が異なります。店舗によっては、外光が入る場所もあります。生地を選ぶときは、店内を移動しながら、鏡に映った自分の姿、そして、生地の見え方をしっかり確認しましょう。

お顔映りのよい色とは?

お顔映りがよい色を選ぶと、好印象を与えることができます。

お顔映りがよい色を選ぶと、好印象を与えることができます。

生地を選ぶ際に、テイラーによっては「こちらの生地の方が、お顔映りがよいですね」とアドバイスすることがあります。「顔映りがよい」とは、どういうことなのでしょうか?

皆さんは、日によって、肌の血色がよく見えたり、肌の透明感が上がったように感じられたり、瞳の輝きが増したように感じられることはありませんか?体調そのものに原因がある場合もありますが、服の色によって、肌や瞳の色が違って見えることがあります。

このような現象を「同時対比」と呼びます。2つ以上の色を同時に見たとき、お互いの色が影響しあい、実際とは違って見えることがあります。同時対比には、「明度対比」「彩度対比」「色相対比」「補色対比」「縁辺対比」 の5種類があります。ここでは、3つの例をご紹介します。

■明度対比
明度対比の例:肌色は全く同じですが、明るいグレーと組み合わせると暗く、暗いグレーと組み合わせると明るく見えます。

明度対比の例:肌色は全く同じですが、明るいグレーと組み合わせると暗く、暗いグレーと組み合わせると明るく見えます。

上図の2つをご覧ください。肌色は全く同じなのにも関わらず、左の明るいグレーの方が暗く、右の暗いグレーの方が明るく見えます。このように、組み合わせる色の明るさの度合いの差によって、同じ色が違って見える現象を明度対比と呼びます。

■彩度対比
彩度対比の例:肌色は全く同じですが、鮮やかなブルーと組み合わせると色みが抜けたように見え、くすんだブルーと組み合わせると色みが増したように見えます。

彩度対比の例:肌色は全く同じですが、鮮やかなブルーと組み合わせると色みが抜けたように見え、くすんだブルーと組み合わせると色みが増したように見えます。

上図の2つを見比べると、真ん中の肌色は全く同じなのにも関わらず、左の鮮やかなブルーに比べると、右のくすんだブルーの方が肌色の色みが増したように見えます。このように、組み合わせる色の鮮やかさの度合いの差によって、同じ色が違って見える現象を彩度対比と呼びます。

オーダースーツの生地を選ぶとき、生地を肩に掛けるのは、同時対比を確認するためでもあります。

生地によって肌の色が違って見えるため、テイラーによっては、より好ましい印象を与える色を見極めながら、「お顔映りがよい」といった表現でアドバイスすることがあります。オーダースーツの生地を選ぶとき、生地の色を見ることも大切ですが、自分の肌の色がどのように見えるのかも意識すると、仕立て上がりの満足度が違ってくるでしょう。

オーダースーツをあつらえる前に

本記事では、オーダースーツの色選びに役立つ色彩学の基本を、「面積効果」「光」「同時対比」の3つのポイントに絞ってご紹介しました。オーダースーツの売り場にある生地は、ネイビー、グレーが大半ですが、ちょっとした色みの違いで印象もお顔映りも違ってきます。しっかり吟味して、満足のいく1着を手に入れていただけたらと思います。

なお、弊サイトの人気記事「20秒で診断!パーソナルカラー(似合う色)診断 男性編」は、「お顔映り」の良し悪しをわかりやすく体系化したものです。

ビジネススーツの定番色といえば、「ダークネイビー」や「チャコールグレー」ですが、誰もがとてもよく似合うわけではありません。「ダークネイビー」や「チャコールグレー」がしっくりこない方は、明るさ、鮮やかさ、色みの選び方を工夫すると、お顔映りが違ってきます。スーツをあつらえるときは、ぜひパーソナルカラーもご参考になさってください。

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