2016年8月5日に開幕するリオ五輪。8月21日まで開催されます。

2016年8月5日に開幕するリオ五輪。8月21日まで開催されます。

色彩は視覚言語のひとつ。スポーツ競技においても、重要な役割を担っています。

例えば、国際的なスポーツの祭典「五輪」。その名のとおり、マークそのものが、ブルー・イエロー・ブラック・グリーン・レッドの輪を重ねて連結した形になっており、ヨーロッパ、南北アメリカ、アフリカ、アジア、オセアニアの五大陸を表しています。カラフルな国旗やユニフォームは、華やかな祭典を色鮮やかに彩るだけでなく、国やスポーツ競技を示すひとつの記号となっています。

特にユニフォームの色彩は、味方、敵などのチームを判別する上でもっとも有効な視覚言語の役割を果たしています。サッカーなど人気の高いスポーツ競技においては、サポーターを中心に観客が応援するチームのユニフォームを着用し、集団への帰属意識を示します。フィールドとスタンドに一体感が生まれ、多くの人々が熱狂するのは、色彩記号の力がなせる技と言えるでしょう。


赤と青、勝利へと導くのはどちらの色?

■サッカーのチームカラーと愛称
サッカーのユニフォームには、ホームカラーとアウェイカラーがありますが、ホームカラーの印象が強く、カナリア軍団(黄色:ブラジル代表)、アズーリ(青:イタリア代表)、オレンジ軍団(オランダ代表)といった愛称で親しまれています。

日本代表の「サムライブルー」と韓国代表の「レッドデビル」がスタジアムを埋め尽くす、サッカーの日韓戦。

「レッドデビル」という愛称は、韓国代表だけでなく、ベルギー代表やイギリスのクラブチームの強豪、マンチェスター・ユナイテッドも同じ。その他にも、バイエルン・ミュンヘン(独)、リヴァプール(英)、アヤックス・アムステルダム(蘭)といった、ヨーロッパのクラブチームの強豪が、赤いユニフォームを採用しています。

日韓戦で日本代表が敗れるたびに、ユニフォームの色が取り沙汰されるのは、青いユニフォームよりも、赤いユニフォームのほうが強く感じられるのかもしれません。

■レスリングの試合結果の統計学

2012年のロンドン五輪後、「中核競技」から除外され、夏季オリンピックでの競技存続問題で注目を集めるレスリング。「観客よりも選手のほうが多いのではないか」と揶揄されることもありますが、大幅な改革を経て、2024年大会でも競技が実施されることになりました。

レスリングの選手は、コーナーの色(青と赤)と同じ色のユニフォームを着用します。1896年、アテネで開催された第1回目の五輪が始まってからの全試合を見てみると、赤いユニフォームの選手が勝つ割合が67パーセントとなっています。

サッカーやレスリングの事例では、赤のほうが勝利へと導く確率が高そうですが、他の競技を対象とした実験では、異なる結果も得られています。

特に、サッカーのような団体競技は、選手やチームの実力差を考慮するのは容易ではありません。「サムライブルー」に対する不満の声は、よい成績を残せなかったときの理由付けの域を出ないのではないでしょうか。


色が審判に与える影響とは?

■テコンドーの試合で、審判の判定に与える色の影響
2000年のシドニー五輪で正式競技種目となったテコンドーの試合も、一方の選手は赤い防具を、他方の選手は青い防具をつけます。試合の勝敗は、技の種類により決められたポイントを多く獲得した選手が勝利するポイント制です。

42名のベテラン審判員を対象に実施された実験では、まず、審判員の半数に試合のビデオを見せ、次に残りの審判員に同じビデオを見せました。このビデオには機械操作が加えてあり、選手の防具の色を入れ替えてあります。同じ試合であるにもかかわらず、青い防具をつけている選手の方が、赤い防具をつけている選手よりも、13ポイント多く獲得しました。

競技の種目も研究方法も異なるので、単純に比較するのは賢明ではありませんが、レスリングとテコンドーで異なる結果が導かれたのは興味深いですね。

■サッカーの試合で、反則を取られやすい色とは?
テコンドーと同じような要領で、サッカーの審判員を対象に実験が行われました。審判に見せるビデオには、笛を吹くかどうか判断が分かれる場面が含まれています。第1グループの審判員が見たビデオでは、問題となるプレイを行った選手は黒いウェアを着ています。第2グループの審判員が見たビデオでは、当該選手のウェアは別の色に変えられています。

この実験では、黒いウェアの選手に対して、笛を吹いたりカードを出したりする頻度が多くなりました。

テコンドーとサッカーに関する2つの実験は、審判員自身は気がついていなくても、色は、公平さを求められる判定において、影響を与えていることを示しています。


相手チームをひるませる色

■ゴールキーパーのユニフォームの色
団体競技においても、1対1の場面があります。例えば、サッカーのペナルティキックでは、鮮やかな色のユニフォームを着た選手のほうが、優位に立ちやすいことが明らかになっています。

ゴールキーパーにとって、ペナルティキックを止める自信を持ちやすいのは、相手の選手が赤ではなく白のユニフォームを着ているとき。反対に、ゴールキーパーが鮮やかな色のユニフォームを着ていると、攻撃側の選手は萎縮します。

近年、ゴールキーパーが蛍光色のユニフォームを着用するケースが増えているのは、色の与える影響も考慮されるようになったことを示しています。


リラクゼーションとサイキングアップ

このように、スポーツ心理学では色が与える影響について、さまざまな研究が行われています。

スポーツ競技には、レスリングやサッカーなど、ある程度精神的な緊張や興奮水準を高め,闘志をかき立てることが重要な種目もあれば、射撃やアーチェリーなど、精神的な安定が重要な種目もあります。

そこで、緊張・不安・興奮という心の感情を抑える「リラクゼーション」に対して、緊張や興奮を高めて気分を盛り上げ、最高の状態へもっていく「サイキングアップ」が注目されています。試合が始まる前に、サッカー選手が円陣を組んだり、ラグビーのニュージーランド代表が「ハカ」と呼ばれる戦いのダンスを踊るのは、サイキングアップの実践例です。

サイキングアップやリラクゼーションに色の効果を活用する方法として、ユニフォームの他、ロッカールームの内装なども事例があります。リラクゼーションに適しているのは、青で、闘争心を高めるためには、赤が効果的。ピンクは、相手チームの闘志を鈍らせるのではないかと考えられていますが、スポーツ競技に取り入れられるケースは滅多にないようです。


【関連記事】


※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。