マンションから和室が消える? 多様化する間取りのニーズ
分譲マンションの供給が本格的にスタートした昭和40年代。ファミリー層向けの3LDK タイプの居室は、和室が主流でした。その後、ライフスタイルの変化とともに、洋室が普及し2LDKタイプでの和室が消え3LDKタイプでは、居室2つが洋室で、和室が一つという間取りが主流になってきました。近年の首都圏の分譲マンションを見ると、3LDKでもすべて洋室にする間取りが圧倒的です。マンション購入層の中心が2人から3人家族が中心になっていることや寝室でベットを利用する人が多くなっていることもその要因です。一方、先日訪ねた仙台では3LDKの間取りの多くは和室を採用しています。ファミリー層が購入の中心であることや住居の主流が一戸建てで和室ニーズが強いことも和室を採用する理由のようです。
ライフスタイルが多様化する中で、十人十色の間取りニーズがあります。オール洋室の3LDKの間取りが首都圏で主流となっているのも、家族のニーズに合った使い方が床がフローリングの部屋の方がしやすいこともあるでしょう。
家族に合ったカタチに自在にカスタマイズするシステム
多様化する間取りニーズの中で、マーケットに登場したのが同じユニット内で間取りの選択ができるメニュープランシステムです。洋室とリビングダイニングを一体化しリビングダイニングを広くするなどの選択が可能です。3LDKに和室があることが主流だった10年前も和室を洋室に変更するメニューは、多くのマンションで用意されていました。また、予め用意された建具やフローリング、面材などを選択するカラースキームを採用するマンションも増えてきました。とは言え、100の家族には、100通りの間取りニーズがあるのは当然のこと。戸建て住宅で、建築費が抑えられる建売住宅よりも個別のニーズが反映されるもののコストがかさむ注文建築ニーズが高いのであれば、マンションも同様のことが考えられます。そうしたニーズをカタチにしたのがオーダーメイドマンションです。ミオカステーロ八王子2(山田建設)が採用している自在空間システムも家族のニーズを設計変更で具現化するオーダーメイドの一つです。その流れを見て見ましょう。
1.住戸の選択
2.基本プランから住まいをセルフカスタマイズ
3.カラーの選択
4.住戸プランの確定
5.工事費の確定
6.設計変更工事請負契約書締結
7.内覧会・引渡し
例えば、夫婦別々のウォークインクロゼットが欲しい、水回りの床仕上げをタイルに変更したい、子供の勉強スペースをキッチンのそばに作りたい、掃除用具を入れる収納が欲しい、といったニーズを間取りや仕様の変更によって具現化しています。
過去の事例では、洋室から趣のある和室への変更や本やCDをすっきり収納できる造作棚の設置、LDに間接照明を設置するなど細やかなニーズに応えています。カスタマイズした分の設計フィーや工事費はかかりますが、家族にフィットした住まいを実現できることに対するニーズは高く利用者の満足度も高いようです。こうした間取りのカスタマイズを行う上でポイントになるのが、間取りの自由度が高いユニットであること。ミオカステーロ八王子2は、66.15平米~77.10平米の全6タイプすべてが7m~8.1mの間口のワイドスパンプランで、開口部が広く間取りの自由度が高くなっています。最近注目されている中古マンションのリノベーションも間口の狭い間取りや壁式構造で撤去できない構造壁がある場合は、間取りの変更に制約が出てきます。オーダーメイドなプランニングをする上で、間取りユニットが大切な点は押さえておきましょう。また、低層部から上層部へとマンションの工事は進んでいくので、多くのマンションはメニュープランやカラースキームに期限があります。カスタマイズできる分、早期の決断が必要である点は留意しましょう。
長寿社会を迎える中で、家族のライフスタイルも様々です。戸建て住宅では当たり前だった間取りのカスタマイズは、もっとマンションに普及しても良いと思います。身長の高低で使い勝手が変わるキッチンの高さや洗面化粧台の高さの選択は、既に多くのマンションで採用されています。理想のマンション選びの選択肢の一つに間取りの自由度を加える時代も近いかも知れません。