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結局妖怪ウォッチは第2のポケモンになれたのか?

3年程前、ゲーム業界ニュースでは「妖怪ウォッチは第2のポケモンになれるのか?」という記事を発表しました。その時は、ポケモンのようになる可能性はかなり低い、というお話をしました。それから3年経ちまして、結局ポストポケモンのようになったのか、そうではないのか、という検証をしてみたいと思います。

田下 広夢

執筆者:田下 広夢

ゲーム業界ニュースガイド

3年前の、答え合わせ

妖怪ウォッチの図

初代のじわ売れ、2で大ブームとなり、その後は…

3年程前、ゲーム業界ニュースでは「妖怪ウォッチは第2のポケモンになれるのか?」という記事を発表しました。その時は、妖怪ウォッチはもちろん大人気だし、ポケットモンスターシリーズ(以下ポケモン)に似ているようにも見えるかもしれないけれど、実はその中身を見ていくと大きく違いがあり、ポケモンのようになる可能性はかなり低い、というお話をしました。

【関連記事】
妖怪ウォッチは第2のポケモンになれるのか?(AllAboutゲーム業界ニュース)

それから3年経ちまして、結局ポストポケモンのようになったのか、そうではないのか、という検証をしてみたいと思います。結論を先に言いますと、やっぱり第2のポケモンとは、ならなかったようです。

妖怪ウォッチ関連商品の売上が激減

妖怪ウォッチの図

過去には、妖怪メダルなどを求めて行列も起こりました

2017年5月10日、バンダイナムコホールディングスは2017年3月期の決算を発表しました。その際、各IPごと、簡単に言えば、仮面ライダーやプリキュアといった各ブランドごとの売上高も公表しています。妖怪ウォッチは、104億円で、前年度の329億円の3分の1となり、また、2018年度の計画でも63億円と、さらに縮小することが見込まれています。

バンダイナムコホールディングスにおける妖怪ウォッチ関連の売上は、ピーク時で年間500億円を超えていることを考えると、ブーム時の5分の1程度まで下がってきてしまっているというのが実情です。

一方で、104億円という数字がどのくらいの規模かと考えると、同じくバンダイナムコホールディングスの売上で比較するなら、実はアンパンマンと同じくらいだったりします。アンパンマンと言えば、幼児向けのキャラクターとしては絶大な人気を持っていますから、そのアンパンマンと肩を並べていると言う意味では、減少傾向にあるものの、いまだ人気は健在という言い方をすることもできます。

肝心のゲームソフト本編は?

ポケモンの図

妖怪ウォッチが急減していることもそうですが、ポケモンがいまだ圧倒的な販売本数を誇っていることも驚きです

妖怪ウォッチの人気を考える時、もう1つ重要な指標があります。というより、むしろこちらの数字の方がより大事でしょう。それは、ゲームソフトの売上です。ゲーム専門メディアの「ファミ通」が公表している「2016年ソフト販売本数ランキングTOP100をお届け 1位に輝いたのは……」という記事によると、2016年7月16日に発売されたシリーズ本編3作目となる「妖怪ウォッチ3 スシ/テンプラ」の2016年内の販売本数は139万7436本です。また、2016年12月15日に発売された、妖怪ウォッチ3の追加バージョンである「妖怪ウォッチ3 スキヤキ」は年末までの売上で50万9667本となっています。

【関連サイト】
2016年ソフト販売本数ランキングTOP100をお届け 1位に輝いたのは……(ファミ通)

比較として、2016年11月18日に発売された「ポケットモンスター サン・ムーン」の数字を上げますと、2016年内で324万6222本で、「妖怪ウォッチ3 スシ/テンプラ」はもちろん、追加で発売された「妖怪ウォッチ3 スキヤキ」を合算しても、圧倒的大差でポケモンが売れていることになります。

ちなみに、2014年7月10日に発売されたシリーズ本編2作目となる「妖怪ウォッチ2 元祖/本家」が累計300万本以上を販売していることを考えると、ポケモンとの比較だけでなく、妖怪ウォッチシリーズとしても、3作目にしてピークを終えている印象は否めません。3作目で失速している点を考えれば、20周年を経て今なおトップに君臨するポケモンのようになったとは、言い難いでしょう。

それでも、たくさん売れている

妖怪ウォッチの図

大きく減っていますが、イコール人気が無くなってしまった、ということではありません

妖怪ウォッチが第2のポケモンになるのが難しい理由は、冒頭で紹介した3年前の記事にほとんど書いております。そこに付け加えるとすれば、レベルファイブは妖怪ウォッチを丁寧に育てるとしながら、非常に短い間隔で新作や、そのバージョン違いを投入し、一気に消費させてしまったことが挙げられるでしょう。一気に人気がでて、一気に消費し、そして、一気に飽きられてしまった印象がどうしてもぬぐえません。

もっとも、こういう書き方をしますと、どうしても「もう妖怪ウォッチは売れてないんだな」という印象になってしまいますが、それは間違いであることはお断りしておかなければいけません。前述した通り、減ったとはいえ、関連玩具の売上はアンパンマン相当です。アンパンマンと言えば幼児向けのトップブランドと言って差し支えないポジションですから、まだまだ人気は非常に高いと言えます。

また、ソフトの売上に関しても、「妖怪ウォッチ3 スシ/テンプラ」の139万7486本というのは、大差とはいえ「ポケットモンスター サン・ムーン」に次いで2016年の家庭用ゲーム機におけるソフト売上第2位です。

2016年の数字に関していえば、周辺玩具に関しても、そしてゲームソフトに関しても、まだまだかなり売れている、人気があるIPであるということが言えると思います。ただし、問題なのはこれが下降線をたどっている、という点でしょう。

ここで粘って、定番になれるか

妖怪ウォッチの図

定番になれるかは、これからの粘り次第かもしれません

整理しますと、玩具、本編のゲームともに、急激に販売が落ちているということがまず言えます。ですが、2016年時点に関して言えば、それでもまだ人気があるということは事実です。第2のポケモンになるのは中々難しいようですが、だからと言ってコンテンツが消費されきったわけではありません。

バンダイナムコホールディングスにおける妖怪ウォッチ関連の売上はアンパンマンと同等というお話をしました。ガイドにはもうすぐ5歳になる娘がいますが、幼児周辺のアンパンマンというのは、それはもうものすごい密度で存在しています。本屋さんや玩具売り場はもちろんのこと、あらゆる商業施設、そして、病院や、公共の施設などでも、幼児がいるところには、必ずと言っていいほど、アンパンマンがそこに居ます。ガイドはスーパーなどで、アンパンマンが目に入ると子どもが欲しがって動かなくなるので…と、避けて駐車場に向かうファミリーを見たことがありますが、そんなことを考えると、何か迷路の攻略のようになってしまいます。

これはどういうことかというと、これは、アンパンマンでビジネスをする人間のみならず、幼児の近くにいる大人たちがみな、アンパンマンに絶大な信頼を寄せているということなんですね。小さな子どもはみんなアンパンマンが好きに違いない、アンパンマンがいればご機嫌が良くないだろう、と思って、幼児がいくあらゆるところにアンパンマンが配置されているわけです。結果、センセーショナルな話題で大きな注目を集めることが少なくなっても、子どものそばにはいつも彼がいます。これは大変にパワフルです。

妖怪ウォッチの対象年齢はアンパンマンよりも上ですし、売り方も違いますから、アンパンマンと同じように、と簡単には言えないんですが、定番化する為には、多くの信頼を得て身近な存在になる必要がある、ということは間違いないように思います。そしてその為には長い時間と関係づくりが必要です。そう、ここからじっくりやれるかが重要であるはずなのです。これまで、何度もヒットを飛ばしながら、定番として続く長寿シリーズにしていくことには苦戦しているレベルファイブ。妖怪ウォッチは今度こそと、定番化を狙ったタイトルでした。そのことを考えれば、本当の戦いはこれからであるともいえます。

2017年12月16日には、映画第4弾となる「映画 妖怪ウォッチ シャドウサイド 鬼王の復活」が公開されます。今回はなんと、30年後の世界ということで、主人公が一新される上、おなじみのキャラクタージバニャンも、なにやらおどろおどろしい姿を見せています。ここから、新しい妖怪ウォッチが展開される、その急先鋒となるようです。

ブームは陰りを見せた妖怪ウォッチですが、さらなる展開で復活を見せるのか、そしてここで粘って定番化していくことができるのか、次のチャレンジにも期待したいと思います。

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