もうだいぶ前のことになりましたが、2003年10月に東海道新幹線「品川駅」が開業したとき、駅が立地する「港区」と、駅名になっている「品川区」の地元商店街同士が対立してお互いに譲らず、別々に開業記念の催しをしていたことが報じられていました。
首都圏に住んでいれば知っている人も多いでしょうが、新幹線の品川駅だけでなく、従来のJR品川駅も、十数年前に「品川の再開発」として話題になっていたところも、実はぜんぶ港区なのです(再開発エリアのほんの一部だけが品川区にかかっています)。
ついでにいうと、京急「北品川駅」は品川駅の南に立地しています。
なぜそのようなことになったのかといえば、明治初期に日本初の鉄道が新橋~横浜間で開業して品川駅が造られることになったとき、当時の品川宿住民から猛反対され、当初予定された位置から変更した結果、大きく港区側へ入り込んだところに駅が建設されたのだそうです。
品川駅の場合は、宿場町の馬やかごの利用が減ることへの反発だったとみられていますが、当時は新しく鉄道を造るというと地域住民はこぞって反対するのが相場だったようです。
陸蒸気で空気が汚れるとか、火事の原因になるとか、汽車の音で鶏が卵を生まなくなるとか、さらには鉄道自体が「化物みたいで気味悪い」などといった、いまでは考えられないような理由での反対運動や建設妨害(実力行使)もあったとか。
そのような時代背景もあり、わざわざ人家から離れ、うらさびれた不便なところに新しく駅を造ることも多かったのでしょう。
初めは人があまり住んでいないようなところに新駅が造られ、時代が進むにつれて駅を中心にしたエリアが発展してきたようなケースは、全国にかなり多くあるのかもしれません。
反対運動が原因かどうかは分かりませんが、品川駅の場合と同じように、JR目黒駅は目黒区ではなく品川区にあり、JR新宿駅はその一部が渋谷区になっています。また、JR板橋駅は板橋区と豊島区に、JR三鷹駅は三鷹市と武蔵野市に、それぞれ半分ずつかかっています。
現代ではご存知のとおり、新しく鉄道駅ができるといえば誘致合戦が繰り広げられ、開業すれば周辺の不動産価格を上昇させる働きもします。
高度成長期とは違ってこれから開業する新線や新駅はそれほど多くありませんが、その動向には常に注意していたいもの。住宅を購入する場合でも無関心ではいられません。
>> 平野雅之の不動産ミニコラム INDEX
(この記事は2006年8月公開の「不動産百考 vol.2」をもとに再構成したものです)
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