アドバイス1 90歳の時点で2400万円近くが手元に残る
50歳での早期リタイア(一切働かないフルリタイア)についてのご相談ですが、結論から言えば、ほぼ問題なくできると考えます。貯蓄ペースが毎月30万円にボーナスから100万円とのことですから、年間貯蓄額は460万円。これを50歳まで継続すれば6900万円。このうち、お子さんが2人となった場合の養育費(教育費を含めた、子育てすべてにかかる費用)を差し引きます。その額は進路によって大きく異なりますが、高めに設定して1人2000万円とすると、2人で4000万円。結果、実際に貯蓄できるのは2900万円ということになります。
これに退職金1000万円と、今ある金融資産の3000万円(貯蓄、投資とも目減りしないと仮定)を加算した6900万円が、50歳以降の生活資金ということになるわけです。
一方支出ですが、リタイア後の毎月の生活費は月20万円を想定されているので、老齢年金が支給されるまでの15年間で3600万円。その時点で、残りの手持ち資金は3300万円となります。
65歳以降は老齢厚生年金が支給されます。その額はこの場で算出できませんが、仮に20万円とします(夫は50歳まで厚生年金加入。妻は老齢基礎年金を満額受給と想定)。実際は、そこから税金や健康保険料が差し引かれますので、それを3万円とすれば、結果、毎期3万円が不足します。
オレンジさんが90歳まで生きるとすれば、65歳から25年間で不足額の合計は900万円。したがって、90歳を迎えた時点で2400万円が残ります。
あとは、奥様も含め、長生きによる追加の生活費、一般的な病気や介護の費用、自宅にかかる費用(修繕、改築等)が発生する可能性がありますが、それらを考慮しても、足りなくて困るということは考えにくい。したがって、希望されるリタイアについて計算上は可能ということになります。
アドバイス2 生活費によってはリタイア後も働くことが必要
では、懸念部分はまったくないかと言えば、2点ほどあります。
まず、リタイア後の生活費です。現在の生活費から、家賃を差し引くと33万円となります。また、ボーナスから100万円を支出していますから、それを月割りし加算すれば41万円となります。
対して、50歳以降は20万円で生活するということですから、21万円削減する必要があります。これは、それだけ生活をダウンサイジングする=レベルを下げるということを意味しますが、そう容易ではありません。ちなみに、もし41万円で生活をすれば1億80万円、先の試算に生活コストを加算しなくてはいけません。そうなると、オレンジさんが64歳のとき、資産は底をつきます。
もちろん、会社員として暮らすイギリスとリタイア後の地元・北海道での生活が、同じコストとは考えにくいですが、本当に生活費の半減は可能か。あるいは、どの程度までなら可能なのか。まだ先の話ではありますが、単なるイメージではなく、細かく試算しておく必要はあるかと思います。
また、もしリタイア後、想定以上に生活費がかさむということになったら、対処法としては、働くしかありません。アルバイトで構いません。月収で6~7万円でも、家計にとっては大きなプラス。また、働くことで、新しい環境により早く慣れるという効果もあります。オレンジさんは完全リタイアを希望されていますが、場合によってはそういう選択肢もあるということを、頭の隅に置いておくべきでしょう。
もう一つが、50歳まで勤務できるかどうか、ということです。リタイアの理由は「仕事が激務」ということ。それがどの程度かは不明ですが、まだ30代で、リタイアを意識するほどハードに感じているわけです。しかも、希望するリタイアまで、まだ16年もあります。
相当に激務であれば、途中で健康を害する可能性も否定できません。仮に、そのために収入が途絶えたら、リタイア計画そのものが白紙となります。ご自身の健康管理には十分に気をつけてほしいと思います。
教えてくれたのは……
深野 康彦さん
取材・文/清水京武
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