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今さら聞けない「共謀罪」法案をわかりやすく解説

最近、ニュースでよく耳にする「共謀罪」。法案をめぐって賛成派と反対派が議論を戦わせていますが、そもそも共謀罪とはどんな罪なのでしょうか。わかりやすく解説します。

西村 創

執筆者:西村 創

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共謀罪とは?その法案の内容を知っていますか?

「共謀罪」とは、「犯罪組織が犯罪の計画を立てた段階で罪になる」というものです。

「共謀罪」とは、「犯罪組織が犯罪の計画を立てた段階で罪になる」というものです。

最近、ニュースでよく耳にする「共謀罪」。賛成派と反対派が議論を戦わせていますが、そもそも共謀罪とはどんな罪なのでしょうか。わかりやすく解説します。

「共謀罪」の内容と反対派の意見

「共謀罪」とは、「犯罪組織が犯罪の計画を立てた段階で罪になる」というものです。たとえば、国際テロ集団による爆破、暴力団による殺傷や、いわゆる振り込め詐欺のような組織的犯罪などを実行する前の段階での検挙・処罰することが可能になり、国民の被害を未然に防ぎやすくするための法案です。

さて、そのような法案であればぜひ可決してほしいと多くの人は思うはずです。では、なぜこの法案に対する反対派が多くいるのでしょうか。それは、この「共謀罪」が拡大解釈され、個人の思想や表現が侵害されかねない危険があると考えられているからです。

たとえば、友人や同僚たちと一緒になって特定の人間を陥れようと話し合っているのを耳にした第三者に通報されて逮捕される。また、警察が捜査をするという名目で、私たちを盗聴したり、SNSでのやりとりを監視したりといったように、プライバシーを侵害する可能性もある。ひいては、監視社会になりかねない。そのような意見が少なくありません。

しかし、「共謀罪」は正確には「組織的な犯罪の共謀罪」といい、「組織ぐるみで犯罪計画を立てる」ことが罪になります。ここで言う組織とは国際的テロ集団や暴力団、詐欺などの犯罪集団を指しています。たとえ一般人が集まって悪だくみをしても、共謀罪にはあたりません。一般人は共謀罪の対象外ということになっているわけです。ただし、一般人かどうかを決めるのは政府であり、「誰でも捕まる可能性がある」ということを完全に否定はできません。

また、日本弁護士連合会も「共謀罪」には反対声明を発表しています。日本の現行法には犯罪の準備段階を処罰する法として、すでに殺人予備罪、強盗予備罪などの予備罪というものがあり、人権侵害の恐れがある「共謀罪」を新設する必要はないと主張しているのです。

これに対して法務省は、「組織的な犯罪集団が関与する重大な犯罪には多種多様な犯罪があり、現行の予備罪では適用の範囲外である。たとえば、犯罪組織が行うことが容易に想定できる詐欺罪や人身売買に関する犯罪等については、現行法上、予備罪が設けられておらず、犯罪組織が振り込め詐欺を行うことを計画したり、売春組織が人身売買を計画したりしている場合にも、予備罪で処罰することはできない。そこで、”組織的な犯罪の共謀罪”を新たに設けることが必要である」と説明しています。

なぜ今、「共謀罪」が議論されているのか

2000年に国連総会で「国際組織犯罪防止条約」という国境を越える犯罪を防ぐための条約が採択されました。この条約には187国が加盟していますが、日本はまだ加盟できていません。日本には「共謀罪」がないからです。条約を締結するには「共謀罪」を成立させるという条件をクリアする必要があります。

「条約に締結すれば、各国協力のもと、国境を越えて暗躍する国際テロ集団を封じ込めることが可能になり、また日本国内でテロを起こされるリスクを減らせる」と政府は説明しています。また、政府は東京オリンピック・パラリンピックが近づいた今なら、テロを防ぐために国民の理解を得られると考え、この法案の可決を急いでいると考えられています。

これに対して民進党は、「国際組織犯罪防止条約は、もともとマフィアや暴力団が行うマネーロンダリングや人身売買を処罰することを目的としてつくられた条約で、テロ対策とは関係ない」と説明しています。さらに、国連が出している条約立法ガイドには、「新しい犯罪の創設や実施は各締約国に委ねられている」と書いてあり、日本は現行法で条約に加入すべきだと主張しています。ちなみに、条約締結のために共謀罪を創設した国はノルウェーとブルガリアだけとなっています。

安倍晋三首相は、「条約の国内担保法を整備し、本条約を締結することができなければ、東京オリンピック・パラリンピックを開けないと言っても過言ではない」と言っています。これに対して、反対派は「条約締結は国際オリンピック委員会の要請ではなく、開催条件でもない。オリンピックに便乗して共謀罪を成立させようしている」と主張しています。

「共謀罪」、2017年現在の状況

現在、「共謀罪」は呼称と内容を変更し、2017年5月23日に「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新たに設ける「組織犯罪処罰法改正案」として、衆議院を通過して参議院に送られています。

この動きに対して、民進党は共産党など他の野党とも連携し、「共謀罪」の廃案をめざしています。政府は、6月18日までの今国会で成立させる方針を確認していますが、審議日程は厳しくなっていて、会期の延長も検討しているようです。

【「共謀罪」をもっと知りたい方は】

現法案の詳細については「「「共謀罪」とは何?SNSで監視される?法案の内容をわかりやすく解説」を参照ください。

過去の共謀罪についての論点と国会審議については「難しい「共謀罪」一問一答でわかりやすく!」を参照ください。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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