共謀罪の最新情報はこちらの記事もご参照ください。
「共謀罪」とは何?SNSで監視される?法案の内容をわかりやすく解説
今さら聞けない「共謀罪」法案をわかりやすく解説

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(以下は2006年時点の記事です)

今話題の「共謀罪」。後半国会のヤマ場の1つといわれていますが……でもよくわからない方も多いと思います。共謀罪についての基本的知識と論点がわかるように、一問一答形式でまとめてみました。

1ページ目 【「共謀罪」と「未遂」の違いとは?】
2ページ目 【共謀罪の問題点とは?】
3ページ目 【識者の声を聞いてみよう~国会法務委員会から】

【「共謀罪」と「未遂」の違いとは?】

共謀罪とはそもそも何ですか?

共謀
何もしなくても話し合いだけで「罪になる?」といわれ、反対の声の大きい共謀罪だが?
組織犯罪を防ぐため、その犯罪が実行される前に、組織の中で話し合った段階で罪に問えるようにしようというのが共謀罪というものです。

共謀罪を設置するため、政府案による「組織犯罪規制法」の改正案(政府案)では、このような条文が新たに盛り込まれています。

政府提出改正案:
第6条の2 次の各号に掲げる罪に当たる行為で、団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を共謀した者は、当該各号に定める刑に処する。ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。
1 死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪 五年以下の懲役又は禁錮
2 長期四年以上十年以下の懲役又は禁錮の刑が定められている罪 二年以下の懲役又は禁錮
(下線は筆者による)

これにより、犯罪を目的とした組織のなかで、犯罪の共謀をしていることが発覚すれば、その段階で逮捕できることになり、実行を効果的に防ぐことができるというものです。

未遂犯とは違うのですか?

違います。

未遂犯というのは「犯罪行為の実行が成功しなかった(むずかしくいうと「既遂できなかった」)犯罪のことを指します。

つまり、犯罪行為が実行されていることが、未遂の要件となります。

たとえば窃盗罪は未遂も罰すると規定されています(刑法243条)。つまり、スリが財布を盗むために電車の中で寝ている人の財布が入っているポケットに手を触れたそのとき、犯罪行為の実行が行われているわけですから、警察官はそのスリを窃盗未遂で逮捕することができます。

しかし、共謀罪は犯罪行為の実行がなくても罰するというものです。重大な犯罪行為を未然に防ぐため、それについて話し合っている段階で、処罰するようにしようというものです。

実行がある、なし、これが未遂犯と共謀罪のもっとも異なる点といえるでしょう。

いままで、実行がなくても処罰できる規定はなかったのですか?

あります。

たとえば内乱予備陰謀罪(刑法78条)、外患(外国と図って日本に武力攻撃をさせること)予備陰謀罪(88条)は、陰謀の段階で罪に問えます。

また、実行に至らなくても、予備・準備の段階で罪に問えるものはすでに刑法に盛り込まれています。放火(113条)、通過偽造(153条)、支払用カード電磁的記録不正作出(163条の4)、殺人(201条)身代金目的誘拐(228条の3)、強盗(237条)などに予備または準備罪が設けられています。

ちなみに予備・準備は広い意味での「実行」とみなすこともあります。しかしここではわかりやすく、実行前の段階と考えておきます。

このように、実行がなくても処罰できる規定は今までもありました。ただ、共謀罪は
「準備・予備もしていない段階でも処罰される」、つまり犯罪をしようと話をするだけでも処罰されるということになるということ(または、そう解釈されかねないところ)が、従来の予備・準備罪との大きな違いです。

このようなことから、共謀罪の創設により「組織犯罪・国際テロを未然に防ぐ大きな効果が期待できる」と考える人たちがいます。その一方、「このような刑罰が市民生活を畏縮させないだろうか」という懸念を持つ人たちも、いるわけです。

なぜ、共謀罪規定を作ろうとしているのですか?

国際テロと刑法
国際テロや組織犯罪に対応するため、各国が「刑法の足並みをそろえる」……このための「義務」が「共謀罪の創設」と説明されている
2000年に国連で採択され、2003年に国会で承認した国際組織犯罪防止条約で定められた義務を果たすためです。

国際組織犯罪防止条約第5条には、「組織的な犯罪集団が関与する重大な犯罪の実行を組織し、指示し、ほう助し、教唆し若しくは援助し又はこれについて相談すること」を犯罪とするよう各国に義務づけています。

これが、共謀罪規定設置の目的です。

増加する一方の国際組織犯罪、そしてその利益が国際テロリストに渡り大きなテロが起こることを防止しようというのがこの条約の狙いです。

ただ、死刑廃止条約(1989年)のようにある刑罰を廃止しよう、という条約はありますが、この条約は世界的に「刑法システム」を統一しよう、というけっこう大掛かりなものです。

そのため、この条約自体がそもそも国家の主権を侵すものだという批判はあります。

これに対して、国際組織犯罪やテロ対策のためには、各国が「刑法システム」について足並みをそろえるべきだという考え方もあります。国によって刑法の体系がけっこうまちまちなので、なおさら、ともいわれています。

次ページでは、もう少し深く、共謀罪規定の問題点と政府の主張について見ていきましょう。