大きなビルやマンションが立ち並ぶ東京の都心部でも、中央区のあたりを歩いていると江戸時代の水運の名残がところどころ目につきます。
江戸時代に数多くあった運河や掘割などは、都市の近代化のなかでどんどんと潰されてしまったようですが、もしそれらがそのまま残されていたとすれば、いったいどのような都市になったのでしょうか?
都心の運河を小舟が行き交い、人々がのんびりと移動したり、果物や野菜を山積みにした小舟で商いをする人がいたり……歴史の軸が少し違う方向へ進めば、そのような「東洋の水の都」ができる可能性もあったのだろうかと想像すると、少し残念な気もします。
それはともかくとして、東京にかぎらず首都圏の平地は水の多いところであり、地表を流れる水だけではなく地下水も豊富です。
何年か前にはJR上野駅の地下30mにある新幹線のホームが地下水によって浮き上がる可能性があったため、約650本の杭を打ち込む緊急工事が実施されたという話もありました。
同様の事態はJR東京駅でも起こっていて、こちらはかなり前からだいぶ深刻な状況が続いているようです。
もともと湿地だったところや、本来は “水が流れるべき” ところを埋め立てたり、流れをせき止めたりして人の住む土地が広がっていったという過去の歴史がありますから、住宅や土地を選ぶ際には十分に気をつけなければなりません。
東京都心部やその周辺エリアでも軟弱な地盤は多く、掘れば必ず水が出るような某区の土地や、役所の建築指導担当者が「あそこの土地は “豆腐” だからなぁ」などと揶揄していた某区の土地などもあります。
そのような土地にもほとんど例外なく住宅が建てられ、新築や中古として売買もされているのですから、「よく知らないままで購入してしまった買主」というのも少なからずいるでしょう。
水が豊富なところに都市が発展してきた歴史もありますから、東京だけではなく、大阪や名古屋をはじめ、同様の話は日本全国にたくさんあるはずです。
購入の決断を迫られたときに都合よく雨が降ってくれるわけではありませんが、運よく雨に遭遇したならぜひ「水の流れ」もじっくりと観察してみてください。
玄関の前あたりの道路に雨水が溜まりやすい、雨がやんだ後の水はけが悪い、などといった状況が分かる場合もあります。
また、地盤に関する情報は近年、公開の動きが加速しています。せっかくの情報を見逃すことなく、住宅購入の前にしっかり確認するようにしましょう。
>> 平野雅之の不動産ミニコラム INDEX
(この記事は2006年10月公開の「不動産百考 vol.4」をもとに再構成したものです)
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