「扶養」はサラリーマン世帯にはとてもありがたい制度
「扶養に入る」とよく言います。税務上の話であったり会社から出る手当の話であったり、出てくる場面は様々なのですが、社会保険の世界で「扶養に入る」と言えば、病院にかかる時の健康保険に扶養する家族を入れることを指します。保険料無料で本人とほぼ同じ医療の給付を受けることができる、非常にありがたい制度です。中でも、夫や妻、つまり配偶者についてはもう一つ恩恵があります。それは国民年金の第3号被保険者(以下「3号」といいます)になることができるということです。3号は、保険料無料で国民年金を支払ったのと同じになるという破格の制度です。よく「サラリーマンの妻」などといい、妻の分の保険料を夫が会社で負担しているというイメージがありますが、実際は厚生年金という制度全体で広く薄く負担していますので夫は妻の分の保険料を直接的には出していません。サラリーマン世帯には、健康保険の扶養制度と並んで非常にありがたい制度と言えるでしょう。
夫が退職すると3号ではいられなくなる!
ここからは扶養する側=夫、扶養される側=妻として話を進めますが、逆でも同じです。3号は、正確には国民年金第2号被保険者(厚生年金に加入する原則65歳までの人、以下「2号」といいます)の被扶養配偶者と位置付けられます。ですので、当然ながら夫が在職中のみその恩恵を受けられます。夫が退職すると妻は3号ではいられなくなります。3号でいられなくなると自分で保険料を毎月支払う第1号被保険者(以下「1号」と言います)に切替となります。
この1号への切替は、実は自動では行われず、市役所か年金事務所に出向いて自分で手続きしなくてはなりません。そのままにしておくと、年金事務所からお手紙が届いて手続きを促されますので、それから手続きをしても大丈夫です。ですのでほとんどの場合は心配しなくてもいいのですが、その通知の意味がわからず無視してしまったり、夫の就職がすでに決まっていて数日のブランクに過ぎないからと手続きを放置してしまうことも考えられます。
また、夫が退職後会社の健康保険を任意継続し、引き続きその扶養に入る場合もありますが、こちらの扶養はあくまで健康保険のみ。3号にはなれませんので注意が必要ですね。
手続きを放置すると将来面倒なことになるかも!?
3号から1号に切り替える手続きをしないでしまうと、後々問題を引き起こす可能性があります。本来は1号なのに、その手続きを取らないと、当然保険料の支払いができず、未納となってしまいます。将来もらう年金額が減額となったり、障害年金をもらう時に不利になったり、いいことはありません。それに加え、年金をもらう段になって非常に面倒な手続きをさせられてしまうかもしれません。というのも、ここで1号への切り替え手続きをせず、夫の再就職と同時にまた3号になった場合、妻の年金記録はずっと3号だったことになってしまいます。実際はたった数日であっても1号の期間があるはずなので、その記録は誤りということになります。これを「3号不整合」といいます。訂正するには、1号の記録を作り、その後再度3号になる記録を作り直さなくてはなりません。つい最近の出来事であればいいのですが、場合によっては数十年たってからこの手続きをすることになってしまいます。夫が転職していたり、離婚していたりするとさらに困った事態に…。
このようなことがないように、夫の退職でたとえ1日でもブランクが開く場合は、必ず1号への切り替え手続きを行いましょう。
ちなみに、1号に切り替えた後、同じ月内に3号になった場合は1号の保険料はかかりません。月をまたぐと1号の保険料がかかってきますが、夫が退職した場合は保険料免除が認められやすくなりますので、「払えない!」と放置せず、市役所や年金事務所で相談をしましょう。
夫の退職以外にも1号に切り替える手続きが必要!?
夫の退職以外にも、妻が1号になるケースがあります。それは、夫が在職のまま65歳になった場合です。2号は、年金受給権がある人の場合、65歳で終了となります。3号=2号の被扶養配偶者ですから、夫が65歳になるとこの条件を満たさなくなり、1号に切り替えが必要となるのです。夫は退職するわけでもなく、扶養から外れるわけでもないので、手続きが必要かどうかわかりにくいのですが、必ず手続きを行いましょう。こちらも年金事務所から手続きを促す通知が届きますので、その後に手続きをとっても大丈夫です。
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