お酒を飲むと赤くなる人は、なぜ骨折しやすいのか

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お酒に強い人、弱い人…飲酒の程度は人それぞれですが、「飲むと顔が赤くなる人」は、骨折リスクが高い可能性があるようです。意外な関係の理由とは?

慶應義塾大学医学部整形外科学教室・宮本健史准教授グループの研究によると、遺伝的にお酒を飲んで赤くなりやすい体質の人は、そうでない人に比べて2.48倍、骨粗鬆症による大腿骨近位部骨折をおこしやすくなるということが明らかになりました(2017年3月27日、学際的総合ジャーナルScientific Reports誌に掲載)。

同大学によると、大腿骨近位部骨折をおこした92名を大腿骨近位部骨折群(骨折群)、大腿骨近位部骨折を起こしておらず骨粗鬆症の診断基準も満たさない48名を正常群として、ゲノムDNAを回収しました。

お酒を飲むと顔が赤くなりやすい人は、アルコール代謝の過程で発生し、二日酔いなどの原因になる「アセトアルデヒド」を分解するはたらきのある「ALDH2」という酵素タンパク質が、遺伝的に活性が弱いか、あるいは欠けていると考えられています。

今回の研究では、お酒を飲むと赤くなる体質の原因とみられる遺伝子多型rs671に着目して、その保有率を骨折群と正常群間で比較されました。

その結果により、
  • 骨折群では正常群に比べてrs671保有率が高いこと
  • その保有により骨折のリスクが2.48倍高くなること
が明らかにされました。

飲酒後の顔色だけで遺伝的な体質を容易に推測できる?

今回の調査で注目すべき点は、特に「お酒を飲むと赤くなる人」は、骨折しやすい体質であること。そして、普段の飲酒量に関係なく、骨粗鬆症による大腿骨骨折をおこしやすいということが明らかにされたことだと思います。

大腿骨骨折は、遺伝性があることが知られていましたが、遺伝性についての検査を受けるハードルはまだ高いものです。今回飲酒後の顔色という誰にでもわかるチェックポイントとの関連性が明らかにされたことで、費用のかかる遺伝子レベルでの検査などを受けなくても、遺伝的に骨折リスクが高い体質かどうかということが推測できるようになりました。

もし家族や親しい人に飲酒後に顔が真っ赤になってしまう人がいたら、日頃から飲酒を控えたり、骨の健康を意識したり、生活の中で転倒防止することが大切なことを伝え、将来的な骨折予防につなげていくことには大きな意味があると思います。

骨芽細胞の機能を阻害するアセトアルデヒド

以前から、アルコールと骨の健康に関する研究では、アルコールは適量であれば骨を強くし骨折保護作用があるといった報告もある一方で、過度なアルコール摂取は利尿作用によりカルシウムを排出するとみられ、骨粗鬆症予防には過度なアルコールの摂取は控えるようにと注意が促されていました。

また近年の研究では、アセトアルデヒドが蓄積され血中濃度が高まると、過酸化脂質が増え酸化ストレスにさらされることで、骨を生成する骨芽細胞の機能不全が生じるのではないかと考えられています。

このアセトアルデヒドは、アルコールを飲んで代謝過程で発生するだけでなく、タバコ煙にも含まれています。

ビタミンEで骨芽細胞の機能障害回避の可能性

また今回の研究では、試験管レベルですが、アセトアルデヒドによる骨芽細胞の機能障害はビタミンEにより回避できる可能性が示されました。

ビタミンEは、若返りのビタミンとも呼ばれ、ビタミンCとともに活性酸素などを除去すると考えられている抗酸化ビタミンの一つです。ビタミンEは、いくらやたらこ、うなぎの蒲焼、ゴマやアーモンドなどのナッツ類、抹茶などに多く含まれています。

食品での効果についての検証は、今後の課題

では、こうしたビタミンEを含む食品を食べることで効果があると考えて良いのでしょうか。

これについて、宮本健史特任准教授に確認したところ、「ビタミンEについては、試験管レベルでの有効性が示されたにすぎず、人においては食品として何をどれくらい食べれば良いか、また日常生活での摂取のみで十分なのかは、検証ができていないのが現状」とご回答いただきました。今後の科学的検証の蓄積が期待されます。

骨折予防というだけでなく、日常の食事でビタミンEを含む食品が不足しがちだと考えられる場合は、意識的に摂取することも良いでしょう。しかしビタミンEを多く含む食品はカロリーの高い傾向があるので、偏った食べ方にならないようにしましょう。

ゴマやアーモンドなどは、ビタミンEだけでなく、マグネシウムやカルシウムなどのミネラルも豊富な食材で風味も良く、和え物やサラダに適量かけるといった使い方で、あくまでもバランスの良い食事を心がけましょう。

大腿骨近位部骨折予防は健康寿命の鍵

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骨折の中でも、高齢者の大腿部の骨折は、その後の寝たきりや要介護になるリスクも高くなります。、

骨粗鬆症による大腿骨近位部骨折の患者数は高齢者で増大し続け、2014年は19万件発生し、さらに増加し続けて2030年には約26万人と予想されています(大腿骨頸部・転子部骨折診療ガイドラインより)。

また2015年の日本人の平均寿命はさらに更新し、女性86.99歳、男性80.75歳となりました(2017年3月1日厚生労働省が5年ごとに発表している「完全生命表」で確定)。

平均寿命が延びる一方で、自力で生活ができる健康寿命との差は、平均で約10年もあるのです。脳卒中や認知症のほか、骨折、特に大腿骨近位部骨折は寝たきりや要介護の要因となるため、その予防は重要です。

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65歳以上の要介護者などの性別に見た介護が必要となった主な理由
(資料:厚生労働省「国民生活基礎調査」(平成25年)


骨の健康は、若い頃からの生活習慣の意識付けも大切

特に女性の場合は、閉経を迎えると女性ホルモンの減少により、骨の新陳代謝のバランスが崩れ、骨粗鬆症になりやすくなります。

だったら、骨の健康の心配は、中高年以降の問題と思うのは大きな間違いです。骨密度は約20歳がピークで、加齢とともに低下します。若いから大丈夫なのではなく、若い時から骨の健康を心がけることが重要なのだと思います。時に若い女性は、「やせ」願望が根強くありますが、痩せている人は栄養不足の状態や、また体重が軽くて負荷が少ないため骨密度が低くなると考えられています。

お酒を飲めば赤くなる体質は今さら変えられませんが、骨粗鬆症や骨折のリスクをできるだけ抑えるための配慮はできるはずです。栄養バランスのとれた食事をベースに、カルシウムやマグネシウムなどのミネラル、ビタミンD、ビタミンK、タンパク質などの栄養素を不足することなく摂取すること、喫煙や飲酒を控えるなどを心がけましょう。詳しくは、「若い女性にも忍び寄る骨粗鬆症…食事での予防法」でもまとめていますので、ご参考になさってください。

閉経後の女性を対象にした調査では、ビタミンD不足が骨粗鬆症性骨折のリスクを増大するという指摘もあります。近年は紫外線の害を避けようと、美肌を維持するために日光を避ける傾向があります。ビタミンDは、日光を浴びることで皮膚で生成されますが、日光に当たらない生活を続けている人はビタミンDを意識的に摂取したほうが良いかもしれません。

運動などで骨に負荷をかけることも骨芽細胞の骨形成を促すことに役立ちます。これらは骨だけでなく体全体の健康維持にもつながりますので、生活習慣を見直してみましょう。

関連リンク/
若い女性にも忍び寄る骨粗鬆症…食事での予防法(食と健康)

参考/
・プレスリリース(慶應義塾大学)
・アルコール(久里浜医療センター)
・公益法人骨粗鬆症財団
・アルデヒド脱水素酵素遺伝子変異による骨密度低下の早期治療、予防法の確率(科研費)
平成11-12年度タバコ煙の成分分析について(厚生労働省)
・第22回生命表(完全生命表)の概況(厚生労働省)
高齢化の状況(内閣府)
平均寿命と健康寿命をみる(厚生労働省)
脂溶性ビタミン(厚生労働省)
その他