【Q】こうした施工ミスは、よくあるものなのでしょうか?
私はいま注文住宅を建てようと、工務店やハウスメーカーなどの依頼先を探しているところです。ただネット上でのクチコミを見てみると、各社それぞれにネガティブな内容もあり、特に「施工ミス」についての話が多いように思いました。室内はすべて段差がないと聞いていたのですが、廊下からトイレに入るところに段差ができた。階段の途中にコンセントをお願いしたのですがついていなかった。などと……こうした施工ミスは、よくあるものなのでしょうか?
また、もし起きた場合、依頼主が泣き寝入りしなければいけないのでしょうか?
(東京都・30代・女性)
【A】多くの「人」が関わる家づくりは、コミュニケーションの質が不具合やミスに直結します
■軸となる人がいない?昔の日本の家づくりは大工と左官、とびの手など数少ない業種でつくられ、中心となっていたのは棟梁と呼ばれる大工の師匠でした。一方現代の家づくりは14~16業種の多くの職人が関わり、現場監督が中心となって工事が進められていきます。
多くの業種の職人が関わるということは、上手くコミュニケーションがつながらないと施工ミスや不具合が発生しやすいということです。昔はそのつなぐ役割は棟梁がしていて、とても信頼のおける人しかなれなかったため、誇りを持って仕事をしていたのです。
現代の家づくりはその役割を現場監督がするのですが、現場監督のあり方は会社によってさまざまです。1人で10軒以上の現場をもたせる会社、あるいは1人でひとつの現場を受け持てたとしても、現場経験が少ないので職人にタイミングの良い指示ができない若い現場監督などもいます。
建築物は他の商品と違って完成品を手にとって確かめる事ができません。ないものをつくりあげていく訳ですから、つくりあげる過程でだんごの串のようにバラバラのものを一本の串(軸)となってまとめて、つなげていく人がいないと現場はきれいに納まって(並んで)いかないのです。軸になる人が現場のコミュニケーションをつくり施工ミスや不具合、あるいは誤発注を防ぐのです。したがって、良い会社というよりも良い現場監督に出会うことが施工ミスをなくし、品質の高い家になっていくということです。
■依頼の仕方に問題がある場合も
近年会社が何か不祥事を起こすと、最後は第三者委員会を立ち上げて何が問題だったのかを調べて報告するという場面をテレビでよく目にします。これを建築でいうなら、会社内だけで設計・施工をして仮に施工ミスや発注ミスをすれば誰もチェックする人がいませんから、隠すこともできるのです。
たとえば図面に何かの器具がもれていたとします。となると必ず何処かで金額の調整を図らなければなりません。工夫することで調整ができればよいのですが、どこかで品質を落とすことも考えられます。その報告は施主には届きません。
設計と施工を分けて依頼すれば、設計事務所は内容をチェックして確かめて施主に報告をし、解を得た上で現場に指示するでしょう。つまり第三者委員会のような役割を果たすのです。依頼の仕方によっても施工ミスや不具合を防ぐことができます。
■施工ミスや不具合が起きにくい材料を使うという選択肢も
一般住宅の近年の仕上げ傾向をみると、水を使わない仕上げが多いように感じます。外壁はサイディングで内壁はビニールクロスです。水を使う仕上げにはそれなりの技術が必要。おそらく施工会社はクレームをできるだけ少なくするために、水を使わない仕上げを利用しているのだろうと思われます。
一方近年、施主の傾向は自然素材を希望する人も多くなっています。特に内壁にけいそう土、床は無垢材が人気です。
水を使うけいそう土は縮んだり、割れたり、また無垢材は節がある時もあります。そういうことを理解した上で採用することです。そうでないと理解不足から施工ミスでもないのに施工ミスと勘違いとなり、お互いが残念な結果になってしまうことがあるからです。
はじめに現場監督の力量によって建物の品質が変わる話をのべさせていただきました。そうならない様に近年はシステムバス、システムトイレ、システム階段など、空間にシステムを入れ込む工事が多くなってきました。こういった背景も施工の不具合やミスをできるだけなくしたいからでしょう。
しかしこういった流れはある反面、匠の技も失っていくということにもつながっていきます。やはり建築空間はひと手間が入ることで、そこの住む人に何らかの心地良さや思い出を与えてくれるものです。お互いの心構えをつくり、まずはしっかりと信頼関係を築くことで、施工ミスは防げるはずです。
仮に万一何かあったとしても、信頼関係があればより良い方向で解決できると信じたいですね。
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