若いファミリー世代のための実用ミニ
3ドアや5ドアモデルより一回り大きな、プレミアム・コンパクトセグメントとされた2代目。旧型より全長290mm/全幅115mm拡大、ボディサイズを全長4270mm×全幅1800mm×全高1470mmとした
従来のミニクラブマンは、数あるミニファミリーのなかでも、筆者が最も好きなモデルだった。小柄なミニハッチバックのホイールベースを若干長くし、基本の2ドアはそのままに、リアサブドアを片側に1枚と観音開きテールゲート付きのラゲージスペースを備えた、それはとてもユニークで実用的なコンパクトカーだったからだ。その昔のミニカントリーマンやミニトラベラーを彷彿とさせる佇まいも気に入っていた。だから、新型が登場した今なお、中古車で旧型を狙う手も大いにアリだと思っている。
逆に言うと、新型クラブマンは、旧型とは全くキャラクターの異なるモデルへと進化を果たしたのだった。
第3世代(F54~世代)となったミニは、ベースモデルも大型になり、ほとんどCセグメントと遜色ないサイズに“成長”した。当然、そのエステート(ワゴン)版となるクラブマンも、ずいぶんと大きくなっている。現在、ミニファミリーで最も大きなモデルは最新型のクロスオーバー(本国ではカントリーマン)だが、クラブマンの全長も今やVWゴルフ級であり、実質的にはCセグメントモデル(VWゴルフ級)だと捉えてもらっていい。
実際、観音開きのスプリット・ドアこそ継承しているものの、キャビンアクセス用のドアは全て前ヒンジのノーマル乗用車タイプとなり、全体的な見た目の印象も、エステート風というよりは、“ちょっと背の低いハッチバックモデル”、といった体だ。今や、5ドアモデルさえ存在するミニファミリーにあって、新型クラブマンの位置づけは、若いファミリー世代のための実用ミニ、ということになるだろう。
グレード構成は他のミニとよく似ていて、基本的にはエンジン出力の低い順に、One(102ps)— クーパー(136ps)— クーパーS(192ps)、となっている。クーパーとクーパーSには150psと190psのそれぞれ2Lディーゼルターボの用意もあり、また、231psを誇るJCWや、4WDのクーパーSオール4も用意されている。ちなみに組み合わされるミッションは、6ATと8AT。
“らしさ”は薄まるも“小気味のいい乗用車”に
ワンには102ps/180Nmの1.5L直3ターボ、クーパーは136ps/220Nmの1.5L直3ターボ。クーパーSとクーパーSオール4は190ps/280Nmの直4ターボを搭載する。ディーゼルは2L直4ターボで、クーペーDが150ps/330Nm、クーパーSDが190ps/400Nmとなる
乗り味は、旧型はもちろん、現行ハッチバック系とも随分と違って、よく言えば“小気味のいい乗用車”であり、悪く言うと“ミニらしい味付けが薄い”となる。現行のミニでは、3ドアハッチバックでも、操縦感覚としてのいわゆる“ゴーカートライド”感はかなり薄まった。
それでも、他のコンパクトモデルに比べると、まだしもキビキビと走る感覚は残っていて、なるほどミニだなぁと思える場面も少なくはなかった。ところが、さすがにクラブマンまで大きくなると、クロスオーバーがそうであったように、見た目にも乗り味にも、ミニらしさはかなり薄まって、そのぶん、スタンダードな乗用車的に乗りこなすことができるようになった、というわけだ。
もっとも、そんなことは、これまでミニに乗ってきた人にだけ分かってもらえる話であって、初めてミニな方には関係ない話。むしろ、扱い易くなったぶん、憧れのミニを実用的に楽しめる、とも言えるだろう。
MNIドライビング・モードは標準に加え、スポーツモードとグリーンモードが設定可能に。グリーンモードにはコースティング機能が備わる。JCWは231ps/350Nmの2L直4ターボと8ATを搭載、専用チューンのスポーツサスペンションや4WD(オール4)などを備える
家族や友人と楽しむドライブに最適の一台。オススメは、せっかくなのでディーゼルターボを。大きさからは想像できないほどの力強さと長距離ドライブの安楽さを、ぜひとも体験してほしい。