大きく使いやすい人気の“ファミリーカー”

MINIクロスオーバー

ミニ初のプレミアム・コンパクトSUVとして登場したクロスオーバーが初のフルモデルチェンジ。2017年2月に日本でも発表、3月2日の“ミニの日”に納車がスタートした

海外では「カントリーマン」という、“昔ながら”の名前で呼ばれているミニのクロスオーバー。由緒ある、そして、響きのいい名前を日本で使うことができない、というのは甚だ残念なハナシ。“クロスオーバー”だなんて、味も素っ気もないネーミングだけれど、今やミニラインナップの主力を張る名前として、すっかりお馴染みになった。

11年の日本発売以来、この“家族で使える”ミニは、一躍、人気モデルとなった。好きというだけでは買えなかった存在であったのが、より高い実用性を手に入れて、購入へのハードルもグッと下がったからだった。もっとも、この先代は、あくまでも当時のR50系ミニの拡大版(R60)で、ベースとなったミニよりもビックだったとはいうけれど、欧州のセグメント的にはB+の領域に留まっていた。
MINIクロスオーバー

ボディサイズは全長4315mm×全幅1820mm×全高1595mm。ラインナップはFFのクーパーD(393万円)、4WDのクーパーD ALL4(421万円)とクーパーSD ALL4(493万円)、プラグイン・ハイブリッドのクーパーS E ALL4(479万円)、ハイパフォーマンスモデルのジョン・クーパー・ワークス(556万円)

そんなクロスオーバーがフルモデルチェンジし、F60系へと生まれ変わった。最大のポイントは、BWWグループの小型FF用プラットフォームを使っていること。つまり、メカニズムとしては現行型ミニよりも、BMW2シリーズのツアラー系X1の方がより近しい存在だということ。逆にいうと、BMWは、先代モデルなどを通じて小型FFのエッセンスを学んだ、とも言える。

新型クロスオーバーは、“大きなミニ”だった先代よりも、さらに長く(195mm)、高く(45mm)、幅広く(30mm)、そしてホイールベース(75mm)も広がった。結果、ディメンジョン的にもみても今や立派な欧州Cセグカー、つまり、VWゴルフと同等のクラスとなっている。もちろん、ミニ史上最大級(笑)だ。
MINIクロスオーバー

円形デザインを随所に取り入れたミニらしい仕立ての室内空間。クロームパーツなどを取り入れて高級感を演出している

17年3月に日本で発表された新型クロスオーバー。日本仕様としては4つのグレードがラインナップされている。注目すべきは、プラグイン・ハイブリッドのオール4(4WD)モデルを設定したことと、それ以外はディーゼルエンジン搭載車のみとしたこと、だろう。前者についての詳細な報告は、秋の日本本格導入まで待たなければならないが、後者の、最も売れセンになるであろうFFのクーパーDを、今回、ひとまず試してみることに。ちなみに、その他のグレードは、いずれもオール4で、150馬力のクーパーDと190馬力のクーパーSDがある。トランスミッションは全グレード、8ATだ。
MINIクロスオーバー

ステッチの入ったレザーやメモリー機能付き電動シートなども選べるなど、プレミアム・コンパクトらしい装備が用意されている

MINIクロスオーバー

旧型より広く快適になった、40:20:40の分割可倒式リアシート。前後のスライド機能やバックレストの角度調整が可能となっている

MINIクロスオーバー

ラゲージ容量は旧型より100L広い450Lを確保。ラゲージ後端にはアウトドアなどでベンチの様に腰掛けられるピクニック・ベンチも用意されるなど利便性も向上


いわゆる“MINIの走り”ではないけれど…

MINIクロスオーバー

DとSDには2Lディーゼルターボを搭載、Dは最高出力150ps/最大トルク330Nm、SDは190ps/400Nmとなる。プラグイン・ハイブリッドは136ps/220Nmの1.5Lターボに88ps/165Nmのモーターを組み合わせている

FFのクーパーDにも、もちろん、150馬力の4気筒ディーゼルターボエンジンが積まれている。数値的にはたいしたことのないように思えるかもしれない。けれども、ディーゼルエンジンの場合、馬力よりもトルクスペックがポイント。なんと320Nmものトルクを1750回転から発揮する。300Nmオーバーの最大トルクといえば、ひと昔前のガソリンV6エンジン並、だ。

はたして、その力強い走りはホレボレとするものだった。8ATとの組み合わせも抜群で、大きくなったカラダをものともせず、ぐいぐい加速する。しかも、荒っぽさは微塵もなく、スムースだ。アクセルペダルを軽く踏み込んだだけで、もう十分。あまり踏み込まずに走れるあたりも、ディーゼルの魅力。大きくなって、いろいろと対策ができたのだろう、静粛性も格段に高まった。

要するに、煩い音や煩わしい振動といったディーゼルのネガはまるでない、それでいて、過去のマルチシリンダーガソリン車級の動的パフォーマンスをみせてくれるのだから、文句のつけようもない。

全体的な走りもまた、最新のハッチバックモデルと肩を並べるもの。適度なロールをともなって、ドライバーにクルマの状況をハッキリと伝えてくれる。実に頼もしい。BMWのFFも経験を積んでずいぶんと洗練されてきたようにも感じられた。
MINIクロスオーバー

JC08モード燃費はクーパーD 21.2km/l、クーパーD ALL4 21.3km/l、クーパーSD ALL4 20.8km/l、クーパーS E ALL4 17.3km/l(EV走行は最大約40km)

もっとも、それがミニらしい走りの味付けか? と、問われれば答に窮する。ミニといえばゴーカートフィールが売り物だった。先代クロスオーバーで既にそれが多少失せていたが、新型ではほとんど感じることはできない。もちろん、意に添ったハンドリングフィールではあるけれど、そこに独特な雰囲気を感じることはできない。クロスオーバーが、ミニのなかでもとりわけ“民主化”の進んだモデルであることを考えると、そういう進化の方向性はある意味、致し方ない、というわけだろう。
MINIクロスオーバー

車間距離を適切に保ってくれるアクティブ・クルーズ・コントロールや、衝突回避・被害軽減ブレーキを標準装備。縦列駐車のステアリング操作をアシストしてくれるパーキング・アシストをオプションで採用する

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