アドバイス1 用意できる老後資金で足りると考えていい
定年退職後、再就職はせずに老後資金は大丈夫かというご相談ですが、おそらく問題ないと思います。安心されていいのではないでしょうか。まず、定年退職時にどの程度資産があるかですが、投資商品の評価額が変わらないとして現在ある金融資産は6200万円。さらに、定年までの2年間の貯蓄額が約270万円、退職金が1000万円ですから、トータルで7470万円となります。
定年後の生活費については、ご両親との同居を続けるかあるいは別居か、また実家をどうするかなど不確定要素はありますが、仮に今と変わらない(ただし、終身保険の保険料は払込終了となるので差し引く)とすると、月16万円ほど。
それ以外の支出ですが、現在、ボーナスから貯蓄に回っているのが40万円。つまり、残りは全額支出している年もあるわけですが、車検費用や固定資産税、保険料の年払い等、ボーナスから捻出する固定支出はなさそうですので、原則、この月16万円で年間を通して生活できるとします。
そうすると、公的年金の支給が始まる65歳までの5年間で960万円、生活費として貯蓄を取り崩すことになります。結果、残りはおよそ6500万円。
次に、チャコさんが受け取る公的年金は16万円ですから、65歳以降は年金だけで生活できることになります。今後、予定されているまとまった支出は自宅のリフォームですが、これが言われるとおり1000万円かかったとしても、まだ手元に5500万円残ります。
また、仮に実家を出られて、賃貸住宅を借りるとした場合、それが定年時からとすれば90歳まで生きるとして30年。家賃は諸条件で大きく変わりますが、都内で1LDK、月10万円とすれば30年間で3600万円。予備の資金(医療費、旅行費用、その等)を1000万円程度考慮しても、資金が底をつくことはないと考えられるわけです。
アドバイス2 リフォームの前に相続について明確に
老後資金の心配は要らないとして、今後、明確にしておくべきことがあります。それは実家について。浴室、トイレ、キッチン等の水回りがメインのリフォームを予定されていますが、費用がかなりの額です。親御さんのためにそのくらいはしてあげたいという気持ちであれば、それも理解できますが、チャコさん自身はそこに住み続けるがどうかは不確定ということが気になります。
ましてや、ご実家そのものをどのように相続されるのか。もしお兄さんが相続されるなら、リフォーム費用はお兄さんがご両親とともに負担するのが自然です。チャコさんが今後も住むということでも、もし相続されないのなら、全額負担は一般的には不合理ではないでしょうか。また、仮にチャコさんが実家を受け継ぐとしても、リフォーム費用は親と折半する(あるいは親の資金状況に合わせた配分)という考えがあってしかるべきだと思います。
ともあれ、相続はデリケートな部分もありますが、妹さんも含め、事前に十分話し合い、兄弟間で納得しておくこと。これが、リフォームをどうするかの前提としてあると考えます。
また、リフォームについては安易に業者を選定せず、できれば数社から見積もりを取ることもおススメします。もちろん、低価格だからいいとは限りませんが、額が小さくないだけに時間をかけて行ってください。
最後に、加入されている終身保険ですが、継続して保険料を払い続ける必要性はほぼありません。十分、手元に資金はありますので、死亡保障を確保する意味はないわけです。貯蓄のつもりでされているなら、払済保険にして、その分浮いた保険料は貯蓄すればいいでしょう。また、タイミングを見て解約し、解約返戻金を老後資金に加えてください。
相談者「チャコ」さんから寄せられた感想
診断、ありがとうございました。資金的に大丈夫であることがわかってホッとしました。自身でも思っていましたがリフォームについてよく考えることが必要ですね。相続についてよく相談してからというアドバイスに納得しつつ難しーなあ……というのが本音です。ですが何事もよく考えてから決めたいと思います。本当にありがとうございました、今後の参考にさせていただきます。教えてくれたのは……
深野 康彦さん
取材・文/清水京武 イラスト/モリナガ・ヨウ
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