リスクは米国の長期金利急騰
米国のNYダウは2万1000ドル台まで上昇したものの、日本株は上値が重い状態が続いています。新年度以降の株価の見通しをフィデリティ投信の運用本部長である丸山隆志氏に教えていただきました。「グローバル経済は自律的な成長が今後も続く見通しで、株式投資には良い環境が継続すると見ています。ただ、株価の上昇が続いてきた面もあるため、ポジティブサプライズ的な材料は見込みにくい状況です。短期志向の投資家などは、きっかけ次第で利益確定の売りに出る可能性もあるでしょう。利益確定の売りが出たとしても株を大きく売り込む材料は見当たりません。金融システムも不安視される大きなリスクはないため、調整局面があれば買いたい投資家がたくさんいるのも心強いと考えられます」(丸山氏)
ただ、世界経済を牽引する米国経済が加熱気味に推移し、長期金利が急騰した場合は株式が売られる可能性はあります。米国の長期金利の動きには注意すべきとのことでした。
市場ではなく企業に投資
投資するときの注意点についても聞いてみました。「銘柄を選択する面では確実なものを選ぶべきです。確実なものとは、最低限配当金はきちっと株主に還元する。外部環境に左右されず利益をあげられる企業(銘柄)を選択すべきでしょう」(丸山氏)
丸山 隆志氏 フィデリティ投信株式会社取締役、運用本部長・最高投資責任者、2015年10月より現職。
現在はジャスダック市場や東証マザーズ市場が堅調に推移していますが、その背景も外部環境に左右されない銘柄を選ぶことと関係があるのかについても解説をしていただきました。
「おっしゃる通りです。米国の政策次第で米ドル/円相場は大きく変わる可能性もあります。また、昨年のブレグジッド、トランプ大統領の誕生など、事前の予測以外のことが起こりました。新年度も早々にフランスの選挙、秋にはドイツの選挙があるなど、マーケットを不安定にさせる要素が多いのも事実。投資で言うところの『森より木を見よ』、言い換えれば市場ではなく企業(会社)に投資することが、中長期投資では重要になると考えるべきでしょう」と丸山氏は続けます。
フィデリティ・日本変革ファンドに期待
立場上、個別の投資信託を評価するのは難しいでしょうが、あえて市場ではなく企業に投資する投資信託として「フィデリティ・日本変革ファンド」を紹介していただきました。同ファンドは、2015年の運用成績は芳しくはなかったものの、2016年から中小型株市場が堅調に推移していることを受け急速に運用成績を改善させています。運用成績が劣っていたというよりも、市場並みの収益でした。アクティブ運用といいながらも、インデックス的な成績でした。
「『市場ではなく企業に投資すること』が少し時間はかかったものの実を結んだ、言葉が適切かわかりませんが、同ファンドのコンセプトに市場が追いついてきた感があります」(丸山氏)
日本の経済成長率は低いものの、そのような環境下でも飛躍する企業はあるということ。その企業を「変革」と称し、またその企業価値に着目されるべく種を撒いているということです。
変革が期待できるファンドのコンセプトはわかりますが、一方で運用が開始されてから3年半近くが経過していますが、純資産総額がなかなか増えないようです。
「情報開示が徹底していなかった面は否めません。ただ、今後は積極的に行っていきたい」(丸山氏)
最後に戦艦ファンドである「フィデリティ・日本成長株・ファンド」についてお聞きしました。確定拠出年金制度でも取り扱われていて、また日本株のアクティブファンドの中では純資産総額が最も多い、言い換えれば投資家の数も最も多いファンドです。
「運用成績を向上させるべく最善を尽くしているので、今後に期待してください」(丸山氏)