いくら気を付けても多くの産科合併症は防げないけど……
年齢とともに、産科合併症のリスクはあがる?
妊娠高血圧症候群のメカニズムはまだはっきりわかっていませんが、早発型と呼ばれる妊娠32週前に発症する重症タイプでは、着床のときの状況が関連しています。これは初期流産のほとんどをしめる染色体異常が受精の時にすでに決まっているように、安静や食事制限などで予防することはできません。また妊娠糖尿病も、年齢によりインスリンへの感受性が低下することも関連しています。
それでも、妊娠中は、バランスのよい食事をとり、生活を整えできるだけ規則正しく、無理なくストレスの少ない生活を送ることが大切です。これは年齢によらないことですが、合併症のリスクの高まる高齢出産では特に大切になります。
高齢出産だから早産リスクが高まるとは言い切れない
高齢出産では、早産リスクが高く、低出生体重児出産が増えると言われていますが、実は高齢だけで早産リスクが高まることを裏付ける研究結果はありません。子宮筋腫などの婦人科疾患、生活習慣病の有無のほか、生活環境がリスク因子となるのです。この中で妊娠中に気を付けられるのは、生活環境を整えることだけになります。予防はできないにせよ、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病の軽症タイプでは、増悪させないために大切なことになります。
あとは、できれば相性が良い医師と信頼関係を築き、安心して医療を受けることができる環境をつくることも大切です。妊娠糖尿病では以前は厳しい食事制限が中心でしたが、それが行き過ぎると赤ちゃんに十分な栄養が届かないリスクがあることもわかっています。
今は適切な食事(カロリー)は摂って、必要であればインスリン注射で血糖値をコントロールする方が母子ともにメリットがあると考えられています。こうした説明を受けても、信頼関係がなければ、それが適切な医療介入であっても、なかなか受け入れられないことがあるからです。
最後に心配しすぎないことも大切です。リスクが高くなるといっても、何もなく無事に出産することの方がずっと多いのです。数多の情報に振り回されず、あなたができることをして、あとは自分の産む力と、子どもの育む力を信じて、医療の恩恵にあずかる覚悟をもてること。リスクがあると言われる高齢出産だからこそ、もっとも気を付けてほしいと望むことであります。
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