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薬物乱用はなぜ危険? 各薬物の種類と危険性

薬物乱用はなぜ禁止されているのでしょうか? それは依存性により薬物が止められなくなり、徐々に心身が破壊されてしまうためです。禁断症状のために人や自分自身に危害を加えてしまう可能性もあります。覚せい剤、大麻、コカイン、あへん、危険ドラッグなど各薬物の作用と危険性について医師が解説します。

清益 功浩

執筆者:清益 功浩

医師 / 家庭の医学ガイド

薬物乱用と問題になる薬物の種類

医薬品

向精神薬などの医薬品は正しく使用する必要があります(イメージ)

依存性の高い薬物を繰り返し使うようになってしまい、だんだんと効果が薄れてしまうことで使用量が増え、自分の意志では薬物使用をコントロールできなくなってしまう「薬物乱用」。薬物乱用の状態になると、心身ともに大きな悪影響を受けて、薬物を止めても回復できなくなってしまいます。

薬物のように何度も繰り返し使うようになったり、それが無いと心身の状態を維持できなくなったりする性質を「依存性」と言います。また、薬物の効果に対する抵抗力が出てしまい、効力を維持するために使用量が増えてしまうことを「耐性」と言います。

薬物乱用で危険なのは、この「依存性」と「耐性」があることです。

よく乱用が問題となる薬物として、覚醒剤、大麻、コカイン、ヘロイン、あへん、MDMA・MDAと呼ばれる薬物、医薬品である向精神薬、麻薬、シンナーなどに代表される揮発性有機溶剤、危険ドラッグなどが挙げられます。向精神薬、麻薬は、医療用に使用されますが、適応、用法、用量を守らないといけません。

持っているだけでも違法! 薬物所持の罰則

興味本位が一番危険です。簡単に止められると思ってはいけません。人の意志はそこまで強くなく、一旦薬物使用を開始してしまうと、脳にもダメージが及ぶために、意志の力で解決できるものではなくなります。覚醒剤、大麻、コカイン、ヘロイン、あへん、MDMA・MDAと呼ばれる薬物、危険ドラッグは法律で所持しただけでも罰則があります。

覚醒剤取締法、麻薬及び向精神薬取締法、大麻取締法、あへん法、医薬品医療機器等法によると
  • 覚醒剤…輸入・製造で1年以上の懲役、所持・譲渡・譲受・使用で10年以下の懲役
  • 大麻…輸入・輸出・栽培で7年以下の懲役、所持・譲渡・譲受で5年以下の懲役
  • MDMA…輸入・製造で1年以上10年以下の懲役、所持・譲渡・譲受・使用で7年以下の懲役
  • 危険ドラッグ(指定薬物)…製造、輸入、販売・授与、販売・授与の目的での貯蔵・陳列で5年以下の懲役、もしくは500万円以下の罰金またはこれを併科、所持、使用、購入、譲受で3年以下の懲役、もしくは300万円以下の罰金またはこれを併科
(一般社団法人 偽造医薬品等情報センターより引用)

なお、3年より越える懲役の場合は執行猶予が付きませんので、刑務所に入らないといけません。法で規制されているのは、薬物乱用からあなたを守っていると同時に、社会を守る必要もあるからです。

以下では内閣府の薬物乱用対策を参照しながら、代表的な薬物について知っておきましょう。

覚醒剤の作用・危険性

覚せい剤には様々な俗名があり、「シャブ」、「クスリ」、「エス(S)」、「スピード」、「ヤーバー」などの名称で取引をされることがあります。

多くは白色の粉末で、無色透明の結晶で無臭で苦みがあります。覚醒剤を溶解して注射することが多いのですが、あぶって煙を吸ったり、飲料に入れて乱用されるケースが多いようです。作用としては、名前の通り、神経を興奮させて、眠気や疲れを感じなくなりますが、効果がなくなると、その反動で激しい脱力感、疲労感、倦怠感が出てきます。そのため非常に依存性が高く、使用し続けると、幻覚、妄想などが現れ、現実の状判断ができなくなり、しばしば報道などでみられるような犯罪などを起こす危険もあります。使用者の身体にも大きな悪影響があり、血圧上昇の他、心不全リスクもあります。急性中毒になると、全身けいれんを起こし、結果として意識障害、脳出血で死亡することがあります。

大麻の作用・危険性

マリファナ、ハシッシュ、ハシッシュオイルなどの名称があり、茶色または草色の乾燥した大麻はマリファナと呼ばれています。乾燥した大麻をキセル、パイプなどを使用して、タバコのように吸うことが多いのですが、食べたり、液体にして飲むことでも乱用されています。

作用としては、気分よく陽気になることが多いようですが、感覚が過敏になってしまうために、感覚のバランスが崩れて体調がおかしくなったり、思考に一貫性が無くなって感情的になったり、幻覚、妄想が出てきたりします。また、陽気な状態ではなく、やる気のない状態に陥ることもあります。生殖機能への影響もあります。

MDMA・MDAの作用・危険性

MDMAもMDAも白色粉末です。主に口からの摂取で乱用されています。MDMAは「エクスタシー」、MDAは「ラブドラッグ」などの俗名があります。正式名は、MDMAは3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン、MDAは3,4-メチレンジオキシアンフェタミンです。幻覚や幻聴などを起こします。不安や不眠、錯乱状態になったり、記憶障害になります。体への影響としては、腎臓や肝臓への機能を障害し、血圧上昇や心不全、けいれんや脳卒中を起こしたり、高熱を出したり、筋肉への障害も起こしたりします。

コカインの作用・危険性

無色の結晶、白色の結晶で無臭で苦みがあります。鼻からの吸引や口から摂取で乱用されています。作用としては、神経を興奮させ、気分が高まり、眠気や疲れを感じなくなりますが、作用時間が短いために、何度も乱用する傾向が見られます。乱用の結果、幻覚が表れます。急性中毒になると呼吸困難を起こします。

ヘロインの作用・危険性

白色粉末で、無臭です。けしという植物からあへんができますが、このあへんから作られます。注射したり、火であぶって煙を吸ったり、吸い込んだり、口から摂取したりして乱用されます。作用としては、神経が抑制されるため、酔ったような感じになります。それが陶酔感になるため、依存性が高いと言われています。ヘロイン中毒になると、ヘロインが無いと、激しい筋肉痛、骨の痛み、寒気、嘔吐、失神などのいわゆる禁断症状が起こすことになります。禁断症状を解消するためにヘロインを摂取し続けなければならないという悪循環に陥り、大量にとると、呼吸困難や意識障害で死亡することもあります。

あへんの作用・危険性

黒褐色でアンモニアのような臭い、苦みがあります。あへんをキセルに塗って火であぶって煙を吸ったり、口から摂取することで乱用されています。あへんもヘロインと同様、神経を抑制し、慢性中毒になると、脱力感、倦怠感、錯乱状態となり、衰弱していきます。イギリスと清の戦争であるアヘン戦争で、アヘンによって清が負けたことは歴史でも習った記憶があるかと思います。国をも亡ぼすことにもつながるのが薬物乱用・依存の怖さです。

シンナーなどの有機溶剤の作用・危険性

シンナーは塗料を薄めるための有機溶剤で「毒物劇物取締法」で規制されています。シンナーなどを乱用すると、神経が抑制され、酔った感じになり、だんだん集中力、判断力がなくなり、無気力になり、幻覚や妄想などの症状が出てきます。さらに体に障害を起こし、心臓、肝臓、腎臓、生殖器などに影響します。特に脳への影響は大きく、脳細胞を破壊しますので、破壊された脳は元に戻りません。

危険ドラッグの作用・危険性

ハーブ

ローズマリーなどはアロマに使用されているハーブで安全です(イメージ)

以前は合法ハーブ、お香、アロマなどの名前で販売されていた危険ドラッグ。覚醒剤、麻薬、大麻などの上記の規制薬物の構造に似せて作られながら、法律の規制を逃れようとする薬物です。構造が似ているために、同じような作用が起こり、もちろん心身に与える危険性も同様に高いです。

さらに、上記の違法薬物と同じでないために、さらに予想されない作用まで伴い、危険性が高まっているものもあります。明確な法規制が無いだけで、決して合法で安全なものとは言えないわけです。

薬物乱用の予防法・対策法

自分の健康は、自分で守らなければなりません。特に薬物乱用は、自分のことだけではありません。周りの人を傷つける可能性も高いのです。そして薬物乱用は、自分は止められると思うから、一度くらいなら大丈夫という過信が最も危険です。

決して、最初から手を出さないのが一番の対策です。
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