建築家・設計事務所/建築家住宅の実例

緑を満喫するオープンテラスの家[鎌倉長谷の住宅]

鎌倉の観光地に近い落ち着いた住宅街の一画。狭い路地の奥で背後に山があり、二方向に隣家があるという環境をうまく生かして完成した、鎌倉らしさのある土地に建つユニークな住宅です。

執筆者:川畑 博哉

10年前から鎌倉にお住まいだったGさんご夫妻。以前、建築家の川辺直哉さんが設計した同じ鎌倉の材木座の家の建主と知り合い、その作風が気に入り川辺さんに家造りの相談をしていました。
ネットでこの土地を見つけた当初、不動産業者は道幅が狭く車が入れず、東側に山を背負い、南側と西側に隣家が建っていて陽当たりに恵まれないという理由で、購入を勧めませんでした。
しかし、ご実家が山に近いという環境で育ったGさんにとっては、車を持たないライフスタイルなので駐車場は必要なく、西側の強い日射しが入らず、加えて地代もお手頃という願ってもない好条件だったのです。


路地の奥の長い庇の家

外観
緑に向き合うガラス窓の上に張り出す庇の裏にはカーテンレールが仕込まれている。
外観
外壁はリシン吹付け、屋根はガルバリウム鋼板。1階の木の外壁はレッドシーダー張り。手前の張り出しが自転車置場の目隠しになっている。
玄関
足元はモルタル金ゴテ仕上げ。壁柱の奥にレッドシーダー張りの玄関ドアがある。手前のドアはキッチンに直結する勝手口。

鎌倉の2つの観光名所を結ぶ道から入った、自転車と人しか入れない狭い路地を行くと、突き当たりが急に広くなり、そこに大きな切妻屋根が印象的な家が建っています。ここがGさんご一家の住まいです。
路地から少しセットバックした正面の外観は、横に長く伸びた庇のある1階に家型の2階が載った、ユニークな佇まいをしています。
庇の下は手前が玄関へのアプローチ、奥はダイニングのガラス窓になっています。実は庇の裏にはカーテンレールが仕掛けられていて、屋外用のカーテンを引いて窓を開け放てば、オープンカフェのような空間に早変わりするのです。


背後の山と一体になるダイニング

食堂
造り付けの靴箱収納が玄関とダイニングを分ける。窓側の低く抑えた天井の高さは1.9m。
食堂
南側の吹抜けからダイニングのガラス窓越しに路地を見通す。床は60cm角のスレートタイル。天井は構造用合板にベイマツ材の梁を表しにしている。
居間
南西に位置する落ち着いた雰囲気のリビング。ヘリンボーンのフローリングには床暖が入っている。
台所
ダイニングとリビングの両方向に開かれ、コンパクトにまとめられた約4帖のキッチン。レンジの上の壁には調理道具用をかけるレールが取付けられている。
トイレ
トイレの床もヘリンボーンのフローリング。便器の上には収納が造り付けになっている。

1階は全体の約4割が南北に伸びる約12帖の広いダイニング、約3割が東南の角の約8帖のリビング、約2割が約4帖のキッチン、残りの1割が収納とトイレになっています。
ダイニングとリビングは床材を変化させたひと続きの空間になっています。キッチンはセミオープンタイプで、ダイニングとリビングに大きく開かれています。
南北に約8mに渡って伸びるダイニング。その東側の壁の8割がガラス張りなので、居ながらにして裏山の緑を眺めることができます。さらに外に1.3mほど張り出した庇の下はテラスとなり、ガラス窓を開けて外部用のカーテンを引けば、Gさんが望んでいた「外と内が一体となったオープンカフェのような空間」を楽しむことができるのです。


天井高7mの吹抜けが光と風を呼び込む

吹抜け
自然光が差し込むダイニングの奥の吹抜け。
吹抜け
2階から吹抜けを見下ろす。ペンダントランプはartek社製。
吹抜け
吹抜けの上部には2つの窓が開けられている。天井は構造用合板にベイマツ材の梁を表し仕上げ。
吹抜け
吹抜けを見上げる。リビングの真上にスタディールームがある。
廊下
階段を上がりきったところにあるスタディールーム。壁から張り出したランプはflame社製。

ダイニングの奥の東南の角は吹抜けが1階と2階をつないでいます。家の中で最も条件の良い位置に設けられたこの空間の天井の高さは約7m。上部の2つの窓からは裏山の樹木越しの自然光が1階までふり注ぎます。
ここには鉄製の軽快な階段が2階まで伸びていて、上がりきったところにあるスタディールームは、床に座って寛げる癒しの場でもあり、寝室への通路にもなっています。


高い本棚が立ち上がるスタディールーム

2階
天井まで本棚が立ち上がるスタディールーム。FRPの窓の奥はロフト。
2階
天窓付きの明るいロフト。FRPの窓から階下に光が降り注ぐ。
2階
ロフトの下は子供の遊び場に使われている。
寝室
寝室の東側の窓から裏山の樹木越しに朝の光が入る。上部はロフト。

吹抜けの階段を上がりきった2階には、スタディールームと寝室と洗面室とバスルームがあります。スタディールームは約4mの高い天井まで届く造り付けの本棚が圧巻です。本棚に向かいあって上部はロフト、その下は子供の遊び場になっています。
寝室は朝の光が入る北東の角にあり、ここにも高い天井を利用して上部に収納を兼ねたロフトが造られています。洗面室とユニットのバスルームは寝室のすぐ隣に控えています。
現在の住まいに大変満足しているというGさん。これからも緑豊かなオープンテラスや、おおらかな吹抜け空間の中で、お子様の成長を見守りながら豊かな暮らしを満喫されることでしょう。

[鎌倉長谷の住宅]
所在地: 神奈川県鎌倉市
構造・規模: 木造 地上2階
竣工年月: 2016年10月
敷地面積: 165.38m2
建築面積: 50.28m2
延床面積: 81.53m2
設計・監理: 川辺直哉建築設計事務所/川辺直哉
構造設計: 多田脩二構造設計事務所


川辺直哉[川辺直哉建築設計事務所]プロフィール

東京藝術大学大学院修士課程修了後、石田敏明氏の元で建築の実務を経験し、2002年に独立。「施主の要望をそのまま実現させるのではなく、その先にある、新しい暮らしの姿を描き出したい。」をポリシーに、戸建て住宅のみならず、集合住宅の設計にも意欲的に取り組んでいます。
川辺直哉建築設計事務所
Tel.03-6273-7803
http://www.kawabe-office.com

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川辺直哉 [Kawabe Naoya]


これまで登場した川辺直哉建築設計事務所の住宅

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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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