山田孝之のカンヌ映画祭 画像は公式サイトより引用
『赤羽』に『おこだわり』
テレビ東京のフェイク・ドキュメンタリー路線は2015年の『山田孝之の東京都北区赤羽』に始まります。2014年夏、スランプに陥った俳優・山田孝之は清野とおるのエッセイマンガ『ウヒョッ!東京都北区赤羽』を読み感動。「赤羽に行けば本当の自分に出会える気がする」と映画監督・山下敦弘に撮影を依頼。ドキュメンタリー作家の松江哲明もスタッフに加え、マンガの実在する登場人物たちや原作者との交流を描いていく、というフィクション・ノンフィクションの境目がわかりにくい作品でした。
『山田孝之の東京都北区赤羽』 画像は公式サイトより
『その「おこだわり」、私にもくれよ!!』 画像は公式サイトより
予想の斜め上を暴走する『山田孝之のカンヌ映画祭』
そして『山田孝之のカンヌ映画祭』で『山田孝之の東京都北区赤羽』メンバー再結集。山田孝之は山下敦弘をふたたび呼び出し、大きな映画賞をとったことがないのでカンヌ映画祭の最高賞パルム・ドールを狙って、アメリカの殺人犯エド・ケンパー(母と祖父母を含め10人を殺害)をモデルに映画を制作したいと監督を依頼。
ここまでは『赤羽』『おこだわり』と同じような路線だなと思っていたら、次の展開がすごかった。主演俳優として連れてきたのはランドセルを背負った芦田愛菜! たしかに映画『パシフィック・リム』でヒロインの幼少期を演じて、世界に通用する俳優なのは間違いないのですが。ここから視聴者の予想の斜め上を突っ走り始めます。
この後、三人はパルム・ドール二度受賞の今村昌平監督が設立した日本映画大学にカンヌの傾向と対策を聞きにいく、パイロットフィルム(試験作)を制作する、スポンサー集めをするなど準備を進めます。基本構図は自分の道を突き進む山田孝之、信じてついていく芦田愛菜(性的な話になると席を外したりしながら)、暴走気味の山田孝之に困惑する山下監督。
ドラマ収録の合間に夏期講習へ行っていた
この構図でおもしろかったのは第5話「山田孝之、カンヌを下見する」。脚本がすすまない山田孝之がイメージをつかむためカンヌを下見すると言い出す。しかし芦田愛菜は「プールとかラジオ体操とか夏期講習があるから……ラジオ体操とか友達と皆勤賞狙ってて、行かないとハンコももらえないし」と行けないことを伝える。それに対して山田孝之は「勉強は教えられないけど、ラジオ体操なら教えられるし」「ラジオ体操のハンコは、最悪ハンコ屋に行ったら作れるし」とハンコを押すカードのフォーマットを調べ、となんとしても行こうとする。そこで山下監督が「(愛菜ちゃんは)ズルとかしたくない人だから」とそういうことじゃないんだとフォローし、芦田愛菜抜きで行くことに。
ここでドラマは「ラジオ体操」にフォーカスしましたが、「芦田愛菜、名門私立中学に合格」のニュースを聞くと「夏期講習」が重要だったというのがわかりました。ドラマ中でも空き時間があると勉強していました。
名門校のお受験は子役のトレンドに?
人気子役が名門私立中学に行くことに対し、意外という受け取られ方をしていますが、先行事例はあります。一世代前の人気子役・大橋のぞみは「学業優先」という理由で13才で引退しています。それに芦田愛菜は兵庫県西宮市出身、ブレイクして東京に引っ越すまで住んでいました。西宮は関西で一二を争う中学受験の進学塾・浜学園も本拠を構えるなど教育熱心な土地柄。そういった土壌もあるのではないかと。
芦田愛菜は現役子役のトップランナー。ブレイク後に影響されて子役志望者が増えたといわれています。今後の子役の針路にも影響を与えそうです。しかし進学する学校では芸能活動はできるんでしょうか。できないとしたらカンヌ映画祭はどうなる?
豊作の金曜日
『山田孝之のカンヌ映画祭』はテレビ東京金曜0時52分からの放送。テレビ東京ではこの直前の0時12分から放送しているドラマが『バイプレイヤーズ~もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら~』。遠藤憲一、大杉漣、田口トモロヲ、寺島進、松重豊、光石研の6人の俳優がテラスハウスするという、こちらもドキュメンタリードラマ要素があり好評。テレビ東京ではもう一つ、北大路欣也、泉谷しげる、志賀廣太郎の三人が演じる、20時からの『三匹のおっさん3~正義の味方、みたび!!~』も安定路線で楽しめます。またTBS22時の『下克上受験』は中学受験がテーマ。阿部サダヲが子役とからむと、『マルモのおきて』に続いておもしろくなります。裏のNHK22時『お母さん、娘をやめていいいですか?』は波瑠・斉藤由貴で母娘の不穏な関係を描き、目が離せません。『山田孝之のカンヌ映画祭』も含め、豊作の金曜日です。