『君の名は。』効果で新旧の日本文化がコラボ
左から、瀧、三葉。ヒロイン・三葉がポニーテールに結んでいる組紐に注目が集まっている。 (C)2016「君の名は。」製作委員会
2016年8月26日に公開され、今なお人気が続くアニメ映画『君の名は。』は、興行収入200億円を越え(2016年12月現在/日経QUICKニュース・日本経済新聞)、改めて日本発の社会現象として注目されています。
映画の中で、ヒロイン・三葉が髪を束ねたり、瀧がミサンガとして使うなど、物語のカギを握るキーアイテムとして、日本伝統の「組紐」が使用されています。そして今、「組紐が欲しい、組紐を組んでみたい!」という人が増えていることが、にわかに話題になっています。
そもそも組紐とは?
劇中にも出てくる「組紐台」。これで、組紐を編み上げていく。
組紐とは、糸あるいは糸の束を組み合わせてつくった紐の事で、「打ち紐」とも呼ばれます。 通常は絹糸などの繊維類を数本または数十本の単位とし、これを3つ以上そろえて束にして、ある一定の方式 (組み方) に従って斜めに交差させて作られたものです。
古くは、縄文時代の日常生活に必要とされた簡単な縄から始まり、人々の生活環境や大陸の文化の影響によって変化し、その後仏具や茶道具そして刀や鎧などの武具にもたくさん使われています。
現在も身近なものとしては、着物を着る時に使用する帯締め、または、羽織紐などがあります。
帯締めはご存知の通り、帯を固定するのに用いて、着物に合わせてコーディネートする楽しみもあります。実際見てみると、これも組紐なんだ、と思う若い方も多いのでは? 帯絞めの使い方は、記事『セルフでできる「帯締めの結び方」 帯留めあり・なし』を参照ください。
帯を固定する細い紐が帯締め。これも組紐なんだ、と思う若い方も多いのでは?
和洋の概念の枠を外した活用法
今回の映画で注目すべきは、組紐で登場人物が髪を束ねていたり、ミサンガ風に手首に巻いていたりと、いわゆる、「今までの組紐のイメージ」とは違った使い方をしている点。今まで、組紐というと「和服オンリー」のイメージでしたが、この映画によって和の小物を普段使いに、違和感なくつけられるイメージができた人も多いのではないかと思います。実際、カスタムできる人気の腕時計「Knot(ノット)」などでも、京都昇苑の組紐替えベルトなどを展開されているといいます。
そんな感覚で、例えば、帯揚げ(おびあげ)をスカーフ代わりに使ってみる、逆にスカーフを帯揚げ、大判ハンカチや手ぬぐいなどを半衿に……など今までの和洋の概念の枠を取り外し、自由な発想でファッションを楽しむという事を考えてみるのも良いかも知れません。
日本文化の新旧がコラボ
組紐がミサンガやヘアアクセに!
日本文化というと日本古来の伝統あるものを思い浮かべがちですが、今やインバウンドに象徴されるように、家電・アニメ・おたくカルチャー・カワイイなど新しい日本文化が、ドンドンと世界に発信され、世界に認知されるようになってきていますよね。
今回の映画『君の名は。』は、それら新旧の日本文化が上手くブレンド、ミックスされ、日本のみならず世界的ヒットに繋がったというワケです。
日本が誇る伝統文化を世界へ発信するための手段として、今回のこの映画のヒットは、良いお手本と言えるのではないでしょうか。
モノからコトへ
浴衣姿の三葉。 (C)2016「君の名は。」製作委員会
この映画に登場する組紐は、神社の娘として家業を守る三葉と祖母がひとつひとつ丁寧に編み、そしてこの組紐が劇中でとても重要な鍵となっています。
糸をひとつひとつ組み上げるという作業は、とても根気のいる作業。その伝統を、ヒロインが身を持って体験し受け継いでいく。そしてその気持ち、縁、繋がりというキーワードがこの映画の「奥行き」をさらに広げています。
実際、組紐を自分で体験してみると、それを組み上げるのに、どれだけの手間が掛かっているかという事が分かります。
着物に代表される、伝統的な工芸品は「とかく価格が高い!」と言われがちですが、みなそれに関わる「つくり手」の時間そして心意気が少なからず込められているものだということを、この映画を通して、少しでも分かっていただけるキッカケになればと思います。
今、時代はモノからコトへと変化しています。
ファッションやコーディネートのひとつとして手軽に着物を楽しめる時代。だからこそ、ひとつひとつ大切に作られたそのモノに込められたストーリー(コト)を、今一度見つめ直してみませんか?
■画像提供
(C)2016「君の名は。」製作委員会
■『君の名は。』公式サイト
http://www.kiminona.com/