紫外線の種類で異なる肌へのダメージ
「日焼け止めは日差しが強い日だけでOK!」という考えには要注意です
問題となる2つの波長のうち、地表に届く紫外線の90~95%を占めるのがUV-Aです。肌への作用は緩やかですが、照射量が多く浸透力が高いため、皮膚の奥の真皮にまで届いて蓄積的なダメージを与えます。UV-Aは肌の弾力を失わせ、メラニン色素の合成を促し、「光老化」と呼ばれるシミ、シワ、たるみの原因になるものです。
一方のUV-Bは紫外線の5~10%と量は少ないですが、短時間でも表皮の細胞を傷つける強いエネルギーをもっています。肌が火傷したように赤くなったり、メラニン色素が沈殿して黒ずんだりするのは、このUV-Bの仕業です。またシミやソバカスの原因にもなります。
日焼け止めに表示される2つの記号の意味は?
日焼け止めには、「SPF」と「PA」という記号と、それぞれに指数を示す数字が表示されています。皆さんはこの意味を知っていますか?SPF(Sun Protection Factor)は紫外線防御指数のことで、「SPF25」「SPF50」というふうに、セットで表示された数値がUV-Bの防止効果を表します。数値は2~50で、上限は「50+」。この数値は、紫外線を浴びて皮膚が赤くなるまでの時間を何倍に延ばせるかを表したものです。
人の肌は紫外線を浴びてすぐに、その影響が出るわけではありません。肌への作用が強いUV-Bでも、皮膚に影響が出るまでに、個人差はありますが10~20分程度のタイムラグがあります。
たとえば、赤くなるまで20分ほどかかる人が「SPF30」を使うと、20分×30=600分で、10時間ほどの日焼け防止効果が期待できるわけです。10分で皮膚が赤くなる人なら5時間となります。つまり、SPFの数値は、日光に当たる時間と、自分の皮膚の強さを考えて選べばよいわけです。
PA(Protection grade of UVA)はUV-A防御指数のことで、紫外線を浴びたときに、皮膚が黒くなる反応を指標にしています。防御グレードと呼ばれる「+」の数が多いほど黒くなりにくいということで、次の4段階で定義されています。
・「PA+」はUV-A防御効果がある
・「PA++」はUV-A防御効果がかなりある
・「PA+++」はUV-A防御効果が非常にある
・「PA++++」はUV-A防御効果が極めて高い
PFAとPAを選ぶポイントは?
紫外線の強さは、季節や場所によって、また1日の中でも時間や天候によって変動します。日本の場合、UV-Bがもっとも多くなるのは7~8月。よく、「5月の紫外線は真夏と同じ」と聞きますが、これは正しいとはいえません。UV-Aはオゾン層で吸収されずに1年中、地表に降り注いでいるので、やはりUV-Bが増える夏のほうが、全体の紫外線量は多くなります。ただし、紫外線量は4月をすぎた頃から夏と同じくらいになりだすので、日焼け対策はこの頃から始めたほうがよいといえます。1日のなかでの紫外線量(強さ)は、気象庁のつくば観測地の7月の平均データで見ると、朝8時頃から強くなりはじめ、正午頃にピークを迎え、午後3~4時頃以降に弱くなっています。朝の通勤・通学時も油断はできません。曇りや雨の日は、快晴のときに比べると、うす曇りで80~90%、曇りで約60%、雨の場合は約30%の量になります。ただし、雲のあいだから太陽が出ている場合は、雲からの散乱光が加わって、快晴時よりも多い紫外線が観測されることがあります。いずれにしても、曇りや雨でも注意は必要だということです。
また、地表で反射する紫外線もあります。同じ場所でも地表の状態によって反射率が異なるため、紫外線の強さも違ってきます。紫外線の反射率は、草地やアスファルトで約10%以下、砂浜では10~25%、新雪の場合は約80%にもなります。水面は10~20%と反射率は高くありませんが、水は紫外線の約95%を透過するため、水中でも紫外線対策は必要です。
SPFやPAの効果を考えて日焼け止めを選んでも、注意しなければならないことがいくつかあります。日焼け止めは、汗をかいたり洋服などでこすれたりして、薄れたり落ちたりします。水に強いタイプの日焼け止めもありますが、使用する環境による落ちにくさは数値化されていないので、やはり3~4時間ごとに塗りなおすことをおすすめします。
また、SPFやPA数値の高い日焼け止めは、紫外線に対する効果は大きい反面、肌への負担も大きくなります。海水浴や屋外でスポーツをする場合は数値の高いものをつかい、あまり日に当たらない日には数値の低いものにするなどつかい分けて、肌トラブルを抑えるようにしましょう。
(監修:美と健康ガイド・蘇原 しのぶ(皮膚科・皮膚外科医))