桐谷健太さん直撃インタビュー
桐谷健太さん、インタビューでは熱く語ってくださいました!
友人としてマキオとして生田斗真を支えた日々
――新作映画『彼らが本気で編むときは、』では、桐谷さんの今まで見たことのない一面を見られたように感じます。今回は静かで穏やかで自己主張をせず、すべてを受け入れる男性の役ですが、この依頼が来たときのこと、マキオをどう作って行ったのか教えてください。桐谷健太さん(以下、桐谷):最初に脚本を読んだとき、説明的なセリフが少なくて、映画らしい映画になりそうだと感じました。この作品の持つ独特の空気がお客さんを映画の世界に誘うような気がして、この脚本で仕事ができるのは嬉しいと思いましたね。
マキオの役作りについては、トランスジェンダーの友人がいるので話を聞いてみましたが、やはり相当覚悟をしているとは言っていました。日本ではまだ少数派なんでしょうね。でもマキオはリンコに対して、男とか女とか関係なく、リンコさん自身に惚れていると思うんです。あと彼は物腰は柔らかいけど、実は男らしいんですよ。リンコさんを傷つける人から全力で彼女を守るという姿勢が常にある。人を愛する気持ちを核に、話し方やたたずまい、これまでに彼が経験したことや感じたことを混ぜ合わせて無垢なマキオを作っていきました。
マキオ役で新たな顔を見せる桐谷さん
――生田さんとの共演はいかがでしたか? 演技の合間でも彼を支えていたのでしょうか?
桐谷:斗真とは共演経験もありますし、仕事の打ち上げでふざけてキスしちゃったこともあるし(笑)、沈黙になっても全然平気。気を使うことなく付き合える相手です。そんな僕と斗真だからこそ出せた空気感はあったと思います。とはいえ斗真は女性の役ですから、大変やったと思います。僕は斗真に「可愛いよ」と声をかえたりしていましたよ。
大変な現場でしたが、荻上監督は「この作品は私にとって勝負なんです」とおっしゃっていたので、僕は斗真が演じやすいように、監督が負担なく演出できるようにと心がけていました。
この映画に出て自分は性格変わりましたよ(笑)。以前は「俺が目立てば映画が良くなる!」と、凄い気合入れて撮影に入ったりしていましたが、この映画で「狙ったる!」なんて臨んだらマキオじゃなくなってしまう。撮影に入ったら自然と「斗真を支えて、監督の世界を壊さないように……」と考えるようになっていました。不思議な感覚でしたね。
この映画は桐谷健太のゴーイングポイント!
――荻上監督と初めて組んで、学んだことはありますか?
桐谷:「俺が俺が!」という気持ちを持たなかった時点で大きな変化ですね。この映画と出会ったタイミングと自分が変わるタイミングが合致したのかもしれません。これを僕はターニングポイントではなく、ゴーイングポイントだと思っています。
荻上監督は、具体的な指示を出さないんですよ。トモと川べりを自転車押して歩くシーンを笑顔で演じたら「なんでそんなに笑顔なんですか?」と監督に言われて「俺はいい人アピールし過ぎていた!」と気付かされました。あとワンシーンワンカットの場面があるのですが、あれは自分の演出に信念と自信がないとできない。荻上監督は根性あるなあと思いましたね。「人間は言葉で説明できるほど単純じゃない」という監督の感覚的な演出には共感できたし、現場は本当に楽しかったですね。
――桐谷さんはドラマにも多く出演されていますが、映画とドラマの演技の違いはありますか?
桐谷:僕は芝居を意識して変えることはないですね。無意識に変えてるところはあるかもしれませんが。まずはやってみせて、後は監督のやり方に合せます。具体的に演出してくださる監督ならその指示に従いますし、井筒和幸監督みたいに「もっとおもろいことやれや!」と急にカメラ回す監督にも対応します(笑)。いろんな監督がいるから、いろんな僕が引き出されると思っているので。でも最も大切なのは直感だと思います。
「海の声」がヒットしたのは想定外だった!
――2016年は「海の声」が大ヒットして、桐谷さんを歌番組でもたくさん見ることができました。ご自身では歌の仕事はいかがですか?
桐谷:すごく素敵な音に溢れた1年でしたが、自分としてはビックリです。「海の声」は最初、auのCMで2週間流れる予定で、それだけでもすごく嬉しかったんですが、CMで流れ始めたら、スタッフから「YouTubeの再生回数が凄いことになっている」と言われたんですよ。たくさんの人が聴いてくれているんや、うれしいなあと思っていたら「FNS歌謡祭の出演の話が」と言われ「FNS歌謡祭、俺が?」みたいな(笑)。そんな感じやったんです。まさか「NHK紅白歌合戦」に出られるとは思わなかったです。そしたらある方が「お前がやって来たことは変わらない、三線も前からやっていたし、思いを込めて歌ってきた。それが認められたことは努力の賜物だよ」と言われて、すごくうれしかったですね。
特に直接届く声は格別です。外出したとき、子供たちが「海の声」を歌ってくれているのを耳にしたり、おじいちゃんやおばあちゃんに声かけられたり、ファンレターに「大切な人を失ったけど、この歌で救われました」とか書いてあったりすると、「海の声」はみんなの歌になったんやなと。そういうのにジーンとします。
――俳優と歌手、これからも2つの道を続けていきますか?
桐谷:ときどき「俳優と歌手、どっちを選びますか?」と聞かれるんですが、選べないですよ。朝と夜、どっち取ります?と言われるのと一緒です。僕のことを歌手だと思っている年配の方とかいるかもしれないけど、それでもいいです(笑)。演技も歌も両方好きだし。でも「海の声」があたったから次も……ではなく、巡りあわせでご縁があれば歌いたいし、言葉が生まれれば歌詞も書くだろうし、何かが生まれる感覚を大事にしていきたいですね。
■桐谷健太プロフィール
1980年2月4日、大阪府生まれ。ドラマ「九龍で会いましょう」(2002年/EX)でデビュー。映画初出演は『ゲロッパ!』(2003年)。以降『バクマン。』(2016年)『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』(2016年)、ドラマでは「ROOKIES (ルーキーズ)」(2008年/日本テレビ)などで活躍。auのCM「三太郎シリーズ」の浦島太郎役が大人気。CM曲「海の声」は大ヒットした。2016年9月28日にはアルバム「香音-KANON-」をリリースしている。
『彼らが本気で編むときは、』ストーリー
小学5年生のトモ(柿原りんか)は母(ミムラ)と二人暮らししていましたが、母が家出。彼女は叔父のマキオ(桐谷健太)の家で世話になることになります。でもそこにはマキオの恋人リンコ(生田斗真)が。やさしいリンコにトモはなつき、3人家族のような生活はそれぞれにとって居心地のいいものだったけれど、トモの母が突然帰ってきて……。(公式サイト)
監督:荻上直子 2017年2月25日(土)公開/ 第67回ベルリン国際映画祭 パノラマ部門・ジェネレーション部門 正式出品作品
(C)2017「彼らが本気で編むときは、」製作委員会