金利動向は「景気動向」「物価見通し」「金融政策」がポイントに
まず基本的なことを押さえておきたいが、住宅ローン金利は通常、「変動金利型」と「固定金利型」とに分かれます。「固定金利型」は、全期間固定金利型も段階金利型も、いずれも借入時点で将来の金利が決まるため、将来的な返済額もあらかじめ確定するというメリットがありますが、金利水準は変動金利型よりも高めであるのが一般的。 最長35年や50年という長期間、返済額が一定となる住宅金融支援機構の「フラット35」などが代表格です。
マイナス金利……今後、金利はどうなるのか?
史上最低の低金利が長く続いていますが、「低金利時代は変動金利、金利が上昇局面になったら固定金利に」が鉄則のため、現在の変動金利の金利の低さを享受したいという人は変動金利、そろそろ金利が上昇するかもと思う人は固定金利で組む人も多いでしょう。
しかし一向に金利は上昇するどころかマイナス金利になって上がる見通しもない状況。ここでは原則として「金利がどう決まるか」を含め、読者のみなさんが考える指標を紹介します。
変動金利の指標の一つは「日銀政策」
まず、変動金利に影響を与えるのは短期金利で、短期プライムレートに連動する。短期プライムレートは、日銀が民間銀行に融資するときの金利に銀行がプラスαのリスク分をのせて決定され、市場の資金量により金利水準が決まるため、日銀の政策に大きな影響を受けやすいと言われています。日銀が民間銀行に融資する政策金利は景気によって変動します。不況の場合は、企業活動を活発化させ、インフレを発生させる必要があるため政策金利は低金利にして、市場にお金を流しやすくするのです。一方、好景気になれば政策金利を引き上げ、景気の過熱を抑制することになります。
◆不景気 → 政策金利は低金利 → 住宅ローン変動金利は低金利
◆好景気 → 政策金利は高金利 → 住宅ローン変動金利は高金利
現在、日本経済はデフレ状態にあることから、金利を下げ金融緩和を図る政策が継続しています。しかし一方では景気対策のため財政出動が図られており、その財源として多額の国債を発行しています。国債の販売が低調になれば、債券価格は下落し金利が上昇することになります。この相反する金利上げ下げ圧力が働いており、絶えず経済情勢をみて金利動向をみなければならないということです。
固定金利は将来の景気動向・物価上下期待率に連動
一方、「固定金利型」に影響を与えるのは長期金利で、長期プライムレートや10年物国債などの長期金利を基準に決められます。これらは「将来のリスクに対する上乗せ金利」「将来の経済成長への期待率」「将来のインフレやデフレ期待率」などの要因が影響すると言われています。……と、あくまで変動・固定金利の仕組み原則を書きましたが、最近は住宅ローン資金を独自の資金調達で行う金融機関も増えています。その場合、住宅ローン金利は調達金利と金融機関の利益を加えたものになります。金融機関の経営方針や経営状況の中で、調達金利をどれだけ抑え、どれだけ利益を取れるかで金利が決まるのです。
このため、今後、自分で金利動向を予測するには、借りている(借りようとしている)金融機関の体力や経営動向についても注意しておく必要があるでしょう。
以上をまとめると、住宅ローン金利をある程度見通すには「景気動向」「物価見通し」「金融政策」がポイントになります。
【景気動向】
景気が回復し、企業の設備投資が活発になれば、市場の資金需要が高まるため金利は上昇する。景気回復については、日銀短観やGDP、鉱工業生産などの指標でおおよそ判断できますし、日本の景気先行感に期待が高まれば海外投資家が日本株を買うため、株価の同行からもある程度見通せます。
【物価見通し】
一般に物価が上昇する時は、モノの価値が上がり、貨幣価値が目減りするために金利も上昇します。この物価の判断材料には、総務省が毎月発表している「消費者物価指数」が参考になります。
【金融政策】
一般的な金融政策では、景気拡大局面ではインフレ抑制のために金利を引き上げて金融の引き締めを行います。逆に景気後退局面では、市場の流通資金を増やし、景気回復を図るために金利引き下げで金融緩和を行います。
ただし、マイナス金利のように現在は実質、日銀政策が金利を決めている傾向が強く、ここに日銀政策動向を勘案したほうがよいでしょう。