子宮頸がんと子宮体がんの違い…同じ「子宮がん」でも全く別物
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年齢別にみると、子宮頸がんの罹患率は20代から急激に増加して、40歳前後で横ばいになります。近年は、若年層での患者数が増加傾向にあります。一方の子宮体がんは、40~50代の閉経前後の年代でもっとも多く発症します。以前は、子宮がんの85%以上は子宮頸がんが占めていましたが、最近では子宮体がんの比率が増加し、また死亡率も上がっています。これは、食生活の欧米化により、動物性脂肪の摂取量が増えたことが関係しているのではないかといわれています。また、妊娠・出産経験がないことは子宮体がんのリスクを高めますので、未妊未産の女性が増えたことも子宮体がんの増加と関連している可能性があります。
子宮頸がんも子宮体がんも、全般的に自覚症状がほとんどありません。早期発見のいちばんの近道は、定期的な検診を受けることといわれていますが、その他にも発見の手がかりになる小さなサインはあります。それぞれのがんについて、詳しくみていきましょう。
子宮頸がんの自覚症状は「不正出血」「おりもの」から
子宮頸がんの多くは、性行為によってヒトパピローマウイルス(HPV)に感染することが原因で発症します。HPV自体は、じつはありふれたウイルスで、性交渉の経験がある女性の約8割が一生に一度は感染するといわれるほど。性行為によって感染しても、多くの場合は潜伏感染となり細胞に変化は引き起こしません。とはいえ、一度でも性交渉をもったことがある人なら、年齢に関係なく子宮頸がんのリスクがあるといえます。子宮頸がんは、初期の段階ではほとんど自覚症状がありません。比較的早い段階で現れる症状としては、性交時の接触出血が挙げられます。子宮頸がんは腟の奥にできるので、性交による刺激で出血を起こすことがあるためです。また、ピンク色や茶褐色のおりものが見られたときも、注意が必要です。
がんが進行すると、月経以外の「不正出血」が多くなり、悪臭を伴う茶褐色のおりものが頻繁に見られるようになります。そのほか、月経時の出血量が増える、月経期間が長くなる、などの症状が現れることもあります。その後、下腹部や下肢のむくみや痛み、貧血など、明らかな異常を知らせる症状が現れるころには、がんはかなり進行していると考えられます。
ふだんとは違う「不正出血」が見られたら、それは子宮頸がんの予兆かもしれません。できるだけ早めに婦人科を受診するようにしましょう。またそれ以前に、予防ワクチンの接種や20歳以上からの定期検診を受けるようにするなど、事前の対策をする方法もあります。
閉経後の不正出血は子宮体がんの初期症状の可能性も
子宮体がんは子宮内膜にできるがんで、子宮内膜がんとも呼ばれます。女性ホルモンのバランスの変化により、内膜の細胞が増えすぎることで子宮体がんになりやすくなります。40~50代の閉経前後に発症しやすく、「妊娠・出産をしたことがない人」「月経不順の人」「閉経が遅い人」「乳がんのホルモン治療を受けている人」「肥満の人」などは、子宮体がんのリスクが高くなるといわれます。子宮体がんの前触れとして、もっとも分かりやすいのが、やはり「不正出血」です。閉経後に不正出血が続くときは、早めに婦人科を受診するようにしてください。また、子宮体がんの場合は、がんになる前の「子宮内膜増殖症」の段階でも不正出血が見られることがあるので、早期発見につながります。ほかにも、おりものが増えるなどの症状も手がかりになります。また閉経前であっても、月経不順がある場合は注意が必要です。
子宮体がんは、子宮頸がんとは異なり、まったく症状がない状態での定期的な検査は必要ありません。子宮体がんの検査では、子宮の奥まで細長い器具を入れて細胞を採取するので、多少の痛みを伴います。「定期検診」としての検査は不要ですが、不正出血や茶色・ピンク色のおりもの、水っぽいおりものなどの症状がある場合は、検査を受けましょう。乳がんのホルモン療法中や更年期のホルモン補充療法中など、発生リスクが高い環境にある人は、定期的に検診を受けるのがよいでしょう。また、月経不順がある場合はピルで定期的な月経を来させることで、子宮体がんのリスクを減らすことができます。月経不順を放置せず、適切な治療を受けることも子宮体がん予防につながります。