冬季の憂うつ…原因は日光を浴びる量の不足?
ビタミンDは食品から摂れるだけではありません。日光を浴びることで、皮膚で作り出せる栄養素なのです
ビタミンDは、小腸や腎臓でカルシウムとリンの吸収を促進するため、骨の形成にかかわる疾患、たとえば「くる病」や「骨粗しょう症」予防に不可欠な栄養素であることは知られています。しかしそれ以外にも、「冬季うつ病」の改善に効果があることが分かっています。
「冬季うつ病」は、冬のあいだだけ抑うつ状態になってしまう、季節性のうつ病で、ビタミンD不足が原因のひとつとされています。冬はどうしても日照時間が短くなり、また寒さのために野外に出て日光に当たる機会も少なくなります。そのため、体内のビタミンDが不足しがちになり、冬季うつ病までいかなくても、憂うつな気分が長引くことが多くなると考えられています。
冬になるとやる気が起きず、何だか憂うつな気分になってしまう……。寒さのせいだと思い込んでいる人も少なくないかもしれませんが、じつは、日光を浴びていないことによる、ビタミンD不足が原因なのかもしれません。
日光浴と食事でビタミンDを補給する方法
冬の日照時間が極端に短い北欧では、冬季うつ病はとてもポピュラーな疾患です。そのため、牛乳など一部の食品にビタミンDの補充を義務化するなど、国の政策としてビタミンD不足問題に取り組んでいます。日本では、とくに冬場の外出が少なくなる高齢者のビタミンD不足について、近年になって注目されるようになってきました。ビタミンDの摂取量については、「現代人が不足するビタミンD」記事もあわせてご覧ください。ビタミンDを補給する方法は、日光浴をすることとビタミンDを含む食品を食べることです。
日光浴は地球上の位置にもよりますが、一般的には夏なら木陰で30分、冬なら顔や手に太陽の光を1時間ほどあてれば十分といわれています。天気のいい日はなるべく外に出て、1時間ほどの散歩をするのがいいでしょう。適度な運動は気分をリフレッシュさせて、食欲増進にも役立ちます。また、早起きをして朝日を浴びれば、目覚めもすっきりして憂うつな気分も軽くなります。なるべく週に2回以上、30分程度の日光浴を心がけましょう。
定期的に日光浴をするのが時間的に厳しい人は、食事でしっかりビタミンDを補給してください。ビタミンDは魚や卵、牛乳などの動物性食品のほか、キノコ類にも含まれています。
なかでも効率よくとれるのが、脂肪分が多い魚です。じつは、近頃の日本人が魚をあまり食べなくなったことも、ビタミンD不足の要因といわれます。サケやサンマ、カレイ、サバ、しらす干しなどは、ビタミンDの含有量が多いうえ、たんぱく質も同時に摂取することができるのでおすすめです。
キノコ類なら、キクラゲや干しシイタケ、シメジなどはビタミンDが多い食材です。キノコ類は調理に油を使う炒め物や揚げ物のほうが、ビタミンDをより効率的に吸収しやすくなります。なお、干しシイタケは太陽の光を浴びることでビタミンDを豊富に含む食材になります。機械乾燥では紫外線を浴びないのでビタミンDは生成されません。そのため購入するときには天日乾燥か否かといったこともチェックしてみてください。
必要に応じてサプリメントの活用も有効
日光浴も食品からビタミンDをとることも、日常的にはむずかしいという人は、補助的な意味でサプリメントを活用するという方法もあります。市販のサプリメントでは、マルチビタミンやカルシウムと一緒に配合されたものが多いようですが、最近では単独で商品になっているものもあります。それらは「ビタミンD3」と表示されていることが多いようです。これは魚など動物性食品に含まれるビタミンDと同じ成分で、体内ではたらくビタミンDの原料になります。厚生労働省が推奨する、成人1日のビタミンDの摂取量は5.5μg(厚生労働省「食事摂取基準/2015年版」)ですが、最近の研究では1日に25~75μgをとるのが望ましいとの説もあります。また、サプリメントで過剰にビタミンDを摂取すると肝臓に負担がかかり、尿毒症を起こす場合もあるとされる一方で、サプリメントはビタミンDの原料だから不要な分は体外に排出されるから問題ない、との説もあります。いずれにしても、厚生労働省がビタミンDの耐容上限量としているのが、成人1日で100μg。サプリメントはあくまで補助的なものなので、ラベルにある量や飲み方を守って活用するようにしましょう。
また、寒い季節に気分が落ち込みがちで、やはり「冬季うつ病」ではないかと心配な方は、「冬季うつ病の特徴・症状」「冬季うつ病の治療法・改善法」記事に詳述しておりますので、ご参照ください。
(監修:メンタルヘルスガイド 中嶋 泰憲)