溶連菌とは……咽頭炎や猩紅熱(しょうこうねつ)を引き起こす
学童期の子どもに好発する病気の1つです
学童期の子どもが38~39度の比較的高い熱を出し、喉の痛みを訴えた場合、ただの風邪ではなく「溶連菌感染症」も疑われます。
溶連菌は、正しくは溶血性連鎖球菌と呼ばれる細菌です。この細菌にはさまざまな種類がありますが、溶連菌による感染症のほとんどがA群溶血性連鎖球菌によるものと考えられています。
A群溶血性連鎖球菌は、喉の炎症や化膿性の皮膚感染症など、菌が侵入する場所や組織によってさまざまな症状を引き起こします。よくみられるのが、喉に感染して咽頭炎や扁桃炎を引き起こしたり、紅く小さな発疹を伴う猩紅熱の原因となってしまったりするケースです。また、中耳炎や肺炎、化膿性関節炎、骨髄炎や髄膜炎などを起こすことも知られています。
典型的な症状であるA群溶血性レンサ球菌咽頭炎は、年齢にかかわらず起こり、とくに学童期の子どもに最も多く、3歳以下の乳児や成人では症状が見られるのが少ないのが特徴です。流行する時期は、「冬」と「春から初夏にかけて」の2つのピークがあります。
溶連菌感染症の特徴「イチゴ舌」の症例画像・風邪との見分け方・違い
溶連菌感染症の特徴的な症状の一つである「イチゴ舌」。イチゴのようなツブツブが確認できます
猩紅熱になった場合は、発熱が始まって12~24 時間後に、体や手足に小さくて紅い発疹が出たり、日焼けのような発疹が現れたりします。これらの皮膚の発疹は、とくにわきの下や左右の脚の付け根など、皮膚のしわの部分に多くみられます。さらに、額と頬が紅く紅潮し、口の周りだけ真っ青にみえるようになります。その後は、1週目の終わり頃から、皮膚の皮むけが顔から始まり、3週目までに全身に広がっていきます。
診断は、綿棒でのどをこすって、検査キットを使用して、溶連菌がのどにいるかどうかを検査します。10から15分程度で判明します。
溶連菌感染症の合併症・後遺症・リスク
気をつけたいのが、合併症です。肺炎、髄膜炎、敗血症などの化膿性疾患、あるいは発熱と関節の痛みなどがみられ、時に心臓への合併症がみられるリウマチ熱、尿がでなくなって身体がむくむ急性糸球体腎炎などの非化膿性疾患を生ずることもあります。こうしたリウマチ熱や急性糸球体腎炎を起こしやすい溶連菌の種類は判っているのですが、その検査方法が実験室でないとわからないこと、時間がかかることから、溶連菌感染症の場合は、抗菌薬による除菌が望ましいとされています。劇症型の溶血性連鎖球菌感染症は、近年、「人食いバクテリア」として恐れられている壊死性筋膜炎と連鎖球菌性毒素性ショック症候群です。これらは、組織の壊死などを起こし、敗血症性ショックをきたして生命の危機につながる病気です。その発症の仕組みなどはまだ明らかになっていませんが、重篤な病態を引き起こすものとして、病気の仕組みの解明や治療法の確立が急がれています。
溶連菌感染症の治療法……症状が消えても薬を飲みきること
A群溶血性連鎖球菌の感染症治療には、原因を退治するために抗菌薬による薬物療法が行われます。これに合わせて、皮膚の症状などを和らげる薬が処方されることもあります。ここで重要なのが、「処方された薬は最後まで飲みきる」ことです。通常、溶連菌感染症の治療に用いられる抗菌薬は、一部を除いて10日間(ペニシリン系抗菌薬は10日間、セフェム系抗菌薬は5日間)飲む必要があるといわれます。ところが、薬を飲み始めると2~3日で熱が下がり、喉の痛みも和らいできます。すると、「もう治ったみたいだ」と自己判断して、薬を飲むのをやめてしまう人も少なくないのです。
しかし、途中で薬を飲むのをやめてしまうと、リウマチ熱や急性糸球体腎炎などの合併症につながってしまうことがあります。「処方薬は決められた用法で決められた期間で飲みきる」ことは、服薬の基本中の基本です。
予防としては、感染した人との濃厚な接触をさけることがもっとも大切です。また、こまめなうがいや手洗いもしっかり行いましょう。感染しても適切に抗菌薬で治療すれば、24時間以内に感染力はほぼ無くなります。
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