4,000万ダウンロード突破!
とうとうスマートフォンに登場したマリオ。今はiOSでのみ遊べます
このすさまじいダウンロード数はAppStoreの新記録だそうです。まだ、Android端末には配信していないことを考えると、最終的にはさらに大きなダウンロード数を記録しそうです。
さて、4,000万ものダウンロードがあったということですが、これはあくまで無料ダウンロードで、ごくわずかな一部分しか遊べないものです。そのうちどのくらいの人が、1,200円の課金をして、ゲームを購入したかが気になります。米国の調査会社App Annieによると、リリース3日後までで、ダウンロードした人の中から1,200円の課金をした人は4%程度だといいます。これをどう評価するかはなかなか難しいところではありますが、少なくとも、ダウンロードされた数に対して、課金した人の数がとても多い、とは言えない数字でしょう。
実は、先ほどご紹介したニュースリリースに気になる一文があります。それは、マリオシリーズの生みの親と言われる任天堂の代表取締役クリエイティブフェロー、宮本茂氏による発言です。以下、プレスリリースより一部引用します。
【関連リンク】全世界の多くの方々に新しいマリオをお届けできたことを、大変嬉しく思っています。購入して得られる内容を十分に理解いただくには、もう少し時間が必要かもしれませんが、購入を決めていただいた方が徐々に増えていることを実感しています。
iPhone & iPad向け『SUPER MARIO RUN』App Store最速・配信開始より4日間で全世界4,000万ダウンロード突破のお知らせ(任天堂)
これをそのまま素直に捉えると、とりあえず無料で4,000万ダウンロードは突破したけれど、1,200円を払う価値があると思ってもらえるにはもう少し時間がかかりそうだ、ということだと思います。
スーパーマリオ ランは、マリオの認知度の高さ、その人気を見せつけ、大変多くの人にダウンロードされましたが、その一方で、ゲームのポテンシャルを生かしきれずに、購入に結びついていないケースがかなりあるように思います。では、どこに問題があったのでしょうか?
あまりに早く終わる体験版
無料で遊べるんだ―と思うと、3つのステージはあっという間にクリアできてしまいます
普通にゲームをスタートして、1-1から進めていくと、驚くほど簡単に、そして短時間でクリアできます。そして課金しないとこれ以上遊べないと言われた時、多くの人が不安になるのだと思います。
1,200円払って後悔しないだろうか、この先は本当に面白いだろうか。この時、これまでのスーパーマリオシリーズを楽しんで、任天堂の作るゲームに信頼を置いている人なら、迷うことなく課金できるかもしれません。むしろ、1,200円でマリオシリーズが遊べるなら安いものだ、というぐらいに思う人も少なくはないでしょう。
しかし、みんながみんなそういう人ばかりではありません。
スマホのゲームは、気に入ってからお金を払う
まずは無料でお気に入りになったら、そこからお金を払うかどうかを考えてもらえます
しかし、モバイル端末向けのゲームは必ずしもそうではありません。特に、無料部分があるゲームというのは、無料部分を遊んでもらってからが勝負となります。遊んでいるうちに、そのゲームが好きになって、面白いと思って、そして、このゲームならお金を払っても惜しくないと思った時に、課金をする決断をします。
おそらく、スーパーマリオ ランをダウンロードした人の多くは、スーパーマリオ ランというゲームがお気に入りになるずっと手前でお金を要求されたことに戸惑った人が少なくないんじゃないでしょうか。
アクションゲームが大好きな人だけがたどり着ける
キノピオラリーを遊んでいくと、キノコ王国を自分の好きなように発展させていくことができます
面白くなるのはその先。各ステージに散りばめられている特別な色のコインを集めるやりこみ要素や、時間内により華麗にたくさんのコインを集める「キノピオラリー」といった対戦要素にこそ、その面白さが詰まっています。
ただクリアするだけなら簡単だったはずのステージが、より華麗に、よりたくさんのコインを手に入れながらクリアを目指そうとすると、自ずとステージの構成を巧みに利用する必要ができ、結果、非常に多彩なアクションが生まれます。ただタップしているだけなのに、これほど違いが出るのか、というアクションゲームの面白さ、練習して上手になる楽しさがそこにはあります。
無料で体験する部分でも、1-3までの範囲でやりこみ要素やキノピオラリーはプレイできるので、丁寧にゲームの隅々まで遊んでみれば、奥の深さを垣間見ることができるのですが、多くのユーザーはそこまで用心深く遊んではくれないでしょう。この面白さに気がつく人は、かなりゲームに慣れている人です。
普通にステージクリアを目指していたら、あっという間に無料部分が終わってしまった、という人の方が多いのではないでしょうか。
ゲームの価値を認めてもらえるか
スマートフォンというプラットフォームの中で、ユーザーに価値を認めてもらう必要があります(イラスト 橋本モチチ)
しかし、スーパーマリオ ランを遊んだ人の意見を見てみた時に、こんなどこにでもあるゲームに1,200円なんて絶対払わないという人と、その緻密なステージの作りこみは流石任天堂、という人が同時に出てくるあたりは、少なからずゲームの面白さを伝えるのに失敗しているせいで、損をしている部分もあるように感じます。
冒頭紹介した任天堂のリリース文の続きで、宮本茂氏は以下のようにも述べています。
任天堂は、スーパーマリオ ランを安心して遊んでもらうために、買い切りにしたとしています。現状、収益的にうまくいっている多くのゲームは、ガチャなどの手法で、お金を一切払わない人がたくさんいる一方、1人からよりたくさんのお金を回収できるモデルを採用しています。しかしその手法が過剰になることで、社会問題にもなっています。スーパーマリオ ランはそういった方法をとらず、1人1人から少額で、ただしより多くの人にお金を払ってもらおうとしています。今後はさらに多くの方に、片手で遊べるマリオの魅力を感じていただき、お子様にも安心して与えていただけるゲームとして、幅広く受け入れていただくことを目指したいと思います。
重要な点は、多くの人に広く価値を認めてもらって、みんなから少しずつお金をもらってゲームを売ることができるのか、ということです。
しかし、人によってはそもそもスマートフォンのゲームなんかにお金を払いたくないと考える人もいます。もしかすると、スマートフォンのゲームが一般的になった今、そういう人はすごく多いのかもしれません。パッケージのゲームを買うのに比べればすごく安く遊べる、という人もいますが、価値観はそれぞれですから、お金を出したくないと思えば買わないのです。
だとすれば、任天堂はその価値観をゲームの力でひっくり返す必要があります。触ってみたらもっともっと遊びたくなってしまい、1,200円ぐらいなら安いから購入してしまおう、と思わせれば勝ちなのです。
今はまだそうなっていません。それはとても難しいことかもしれません。しかし、チャレンジは大いに支持したいと思います。より多くの人にゲームの価値を認めさせることができるのか、期待を込めて見守りたいと思います。
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