SMAPは全方位型
ファンからのリクエストによって収録曲が決定したベストアルバム『SMAP 25 YEARS』
今回、チャレンジ精神が旺盛な筆者は編集部からのリクエストを受けてSMAPについて調べていくうちに、意外な発見があったりして、書いてみることにしました。SMAPの楽曲提供者を調べてみると、時代の流れを捉えたり、飽きさせないための発注システムなのか、かなり幅が広いです。例えば、川谷絵音(ゲスの極み乙女。)、やくしまるえつこ・永井聖一(相対性理論) 、太田光(爆笑問題)・久石譲、忌野清志郎、マーティ・フリードマンなどなど、実験的な組み合わせもあり全方位です。
SMAPは、ここまで、55枚のシングル、25周年を記念したベストアルバム『SMAP 25 YEARS』を含めて29枚のアルバムを発表しており、全容を把握するのは至難の技です。90年代の楽曲を聴いてみると、「SHAKE」「ダイナマイト」のファンキーなダンスチューンはSMAPの一つのサウンド特性となっています。また、「Hey Hey おおきに毎度あり」(関西弁ラップ)、「オイラの人生のっぺらぼ~~!」(中居正広ソロ)、「SHOGATSU Sound Machine」(ラップメドレー)などのラップ歌謡にも挑戦しています。じゃ、SMAP楽曲の中に、テクノポップ(並びにテクノ、エレクトロ)として語れそうな曲はあるのでしょうか?
小西康陽
SMAPのアルバムには、「Theme of …」というオープニングまたはエンディング曲が『SMAP 003』から収録されています。例えば、アルバム『SMAP 007 ~Gold Singer』(1995年)は007のゴールドフィンガーをもじって「Theme of 007 (James Bond Theme)」で終わります。これなんかは完全にインストルメンタルなので、SMAPである必要が別にありませんが、アルバムに作品的要素を生み出すためと考えます。2002年のアルバム『SMAP 015 / Drink! Smap!』のオープニングを飾る「Theme of 015」は、readymadeサウンドとなっています。はい、もちろん「慎吾ママのおはロック」(2000年)に関係のある小西康陽による作品です。小西康陽楽曲としては、3枚組で盛りだくさんのアルバム『SAMPLE BANG!』(2005年)収録の「クイズの女王」が、野宮真貴が歌っても全く違和感がないPizzicato Fiveサウンドとなっています。このアルバムのオープニング曲「Theme of 017」は、小西康陽ではなく、渋谷系の潮流にいる中塚武(QYPTHONE)によるスペーシィかつラテン風味もあるハウスです。また、Lady GagaのDJとしても知られるフランス生まれのエレクトロミュージシャン、SPACE COWBOYがリミックスした「はだかの王様~シブトクつよく~」などのリミックス曲も収録されており、SMAPアルバムの中ではクラブミュージック度が高い作品と位置付けていいでしょう。
中田ヤスタカ
初期のcapsule(中田ヤスタカ・こしじまとしこ)は、男女ユニットという共通点もあり、野宮真貴時代のPizzicato Fiveとつながる部分が多いです。中田ヤスタカがSMAPに初めて楽曲(「ココロパズルリズム」)を提供したアルバム『super.modern.artistic.performance』が発表されたのは、2008年。この年は、Perfumeがシングル『love the world』でテクノポップ系アーティストとして史上初のシングルチャート1位獲得となった年です。「ポリリズム」的なものを求める周囲の期待もあったのか、「ココロパズルリズム」は、オートチューン加工されたヴォーカルのPerfumeにも通じるヤスタカ節に溢れる作品です。フューチャーポップへ進化するcapsule (All Aboutテクノポップ)
少し時間は空きますが、中田ヤスタカはSMAPが大使を務めるUSJのテーマソング「Amazing Discovery」(2014年)も提供しました。 こちらは、Perfumeの方が後になりますが「Star Train」などにも通じるジワジワ盛り上げるタイプの曲です。両A面のカップリング曲「Top Of The World」は、MIYAVI(元ヴィジュアル系というべきでしょうかね)作曲、CMJK編曲。これはポップスとしては珍しい変拍子、しかも七拍子の実験的な曲となっています。
サワサキヨシヒロ
サワサキヨシヒロさんには、今年、16年ぶりのアルバム『SAWASAKI IS BACK! 』をリリースした際、インタヴューをしています。「スーパースター★」はシングル『そっと きゅっと』(2009年)は、ナイス橋本とサワサキヨシヒロによる共作(編曲はサワサキのみ)によるエレクトロディスコ。オートチューンとシンセ音が目立つ本曲は、2009年の世界水泳選手権のテーマソングということもあり、それに沿った勢いを持たせる意図で作られました。サワサキヨシヒロ IS BACK! LOVE 温泉! (All Aboutテクノポップ)
石野卓球
トリを飾るのは、アルバム『We are SMAP!』(2010年)に収録された石野卓球が作曲、CMJKが編曲をした「SMAPのポジティブダンス」。あえてこの時点での最新の音ではなく、90年代的な過剰感もあるハイパーなダンスチューンは意図的と思えます。2015年12月の『SMAP×SMAP』では、普段接点がほとんどなさそうな電気グルーヴとSMAPが全員黒いスーツ姿でコラボを果たし、「Shangri-La」と「N.O.2016」を歌唱しました。投票結果
12月21日に発売となった『SMAP 25 YEARS』は、「みんなで決める! みんなのベストアルバム」というコンセプトのもと、約400のSMAP楽曲中からファン投票での上位50曲が3枚のCDに収録されました。筆者としては「クイズの女王」と「ココロパズルリズム」の2曲を推したいのですが、今回紹介した楽曲の中で選ばれたのは、「Amazing Discovery」のみとなってしまいました。50曲の投票結果がスペシャルサイトに掲載されていますが、意外なことにベスト10には「夜空ノムコウ」や「世界に一つだけの花」は入っておらず、今回調査を始める前はどれも知らなかった曲(ちなみに「STAY」(1位)、「オレンジ」(2位)、「BEST FRIEND」(3位))というのが驚きでした。世間的に有名というよりもファンとして個人的に思いが強い曲というのが投票されたのかなぁ、と推察しています。Best Album「SMAP 25 YEARS」スペシャルサイト