これまでに発表された色は、上図のとおり。2000年から2015年までは1色でしたが、2016年は、「ローズクウォーツ」と「セレニティ」の2色。暖色と寒色のバランス、調和というコンセプトを発信するとともに、パステルカラーのイメージや使い方を刷新しました。
「カラー・オブ・ザ・イヤー2017」に選ばれたのは、「グリーナリー」。さまざまなグリーンの中でも、鮮やかなイエローグリーンは、テクノロジーとイノベーションを結びつけ、見る人の気持ちをワクワクさせます。
2016年12月15日、東京・渋谷にて、「カラー・オブ・ザ・イヤー2017 発表イベント」が開催され、1995年よりパントン・カラー・インスティテュート・エグゼクティブ・ディレクターを務める、リアトリス・アイズマン氏による講演が行われました。
人生を輝かせる色「グリーナリー」
春の訪れとともに芽吹く自然の緑、回復と復興のイメージを思い起こさせる「グリーナリー」は、フレッシュで元気を与えてくれる色、新たな始まりを象徴する色です。パントンは「グリーナリー」のメッセージとして、深呼吸、新鮮な酸素、再活性化といったさまざまなキーワードを掲げています。アイズマン氏の講演のタイトルは、「岐路に立つ色とデザイン」。グリーナリーを選んだ背景や理由、グリーナリーを活用するカラーパレットが紹介されました。
■パワー・クラッシング
インターネットが普及し、世界中の情報に容易にアクセスできるようになりました。パリ、ニューヨーク、ミラノなどで発表される、ファッションデザイナーのコレクションだけでなく、世界各地で同時多発的に生まれるトレンドに、多くの人々が関心を示すようになりました。
このような時代背景のもと、若い世代を中心に、従来の色の常識にとらわれないカラーコーディネートが注目されるようになってきました。「パワー・クラッシング」と呼ばれる、インパクトのあるカラーコーディネートには、カラーの専門教育ではタブーとされてきた色づかいも見られます。
「岐路に立つ色とデザイン」というタイトルが示すように、マインドをオープンにして、これまでのルールにとらわれない色づかいやその背景を考えることがますます重要になっています。
■子どもたちに愛される「シュレック」
パントン社のカラートレンド情報は、ファッションやインテリア、グラフィックなど、さまざまな領域のデザインで活用されます。ファッションやインテリアだけでなく、自動車、商業空間など、カラーリサーチの領域は多岐に渡ります。
「グリーナリー」が選ばれた背景として、アイズマン氏は、映画やゲームといったエンターテインメント、食品や料理といった領域でのカラーリサーチについても解説しました。
「グリーナリー」によく似た色に、映画「シュレック」のイエローグリーンがあります。「スターウォーズ」「ピーナッツ(スヌーピー)」「カーズ」といったシリーズ化されたヒット作品は、世界中の子どもから大人まで幅広い層に愛されています。映画のキャラクターや世界は、キャラクター商品、ゲーム、テーマパークといったプロダクトに展開され、日常生活に入り込んでいます。シュレックのようなイエローグリーンは、誰もが好む色ではないかもしれませんが、子どもだけでなく大人にとっても、身近になってきています。
また、日本のアニメ映画「君の名は。」のように、最新のテクノロジーが導入された非常に美しい映像も、今後のカラートレンドを考える上で、重要な示唆を与えます。美しい映像には、これまでになかった新しい色の表現があり、新しい意味が生まれます。より美しい色を求める人々の期待に応えることも、カラートレンドには求められるのです。
■自然や健康への関心の高まりを示す「森林浴」「森林浴」は、日本で生まれたライフスタイルのトレンドとして、世界中で注目を集めるようになりました。森を歩くと、さまざまなグリーンに囲まれるだけでなく、足元には落ち葉があり、色とりどりの花が咲いています。心に響くゴージャスな色の組み合わせは、衣食住に関わる、あらゆる領域のデザインに取り入れられるようになってきました。暖色でも寒色でもない中性色のグリーンは、グレーやベージュといったニュートラルカラーのような役割を担うこともあります。
森林浴のように、緑に囲まれた環境では、呼吸が深くなり、リラックスやリフレッシュをうながします。リビングやオフィスに観葉植物を取り入れたり、商業施設にポケットパークや屋上庭園などが設えられるようになり、都市の中にもグリーンが増えてきてきます。
パントン社は、食品や料理においてもカラーリサーチを行っています。健康に対する意識が高まるにつれて、積極的に野菜をとる人が増えており、著名なシェフが手がける料理にも、色とりどりのグリーンやカラフルな食用花が取り入れられるようになってきました。
「グリーナリー」を活用する9つのカラーパレット
「カラー・オブ・ザ・イヤー2017」に選ばれた「グリーナリー」は、フレッシュできりっとした爽やかさのあるイエローグリーンです。グリーン系の新しい使い方をうながすシンボルとして、人々の注意をひく、スパークルな色が必要であると考え、さまざまなグリーンの中から、アクセント色になりうる「グリーナリー」が選ばれました。アイズマン氏の講演では、「グリーナリー」を活用する9つのカラーパレットが紹介されました。ここでは、4つの配色例をご紹介します。
■デイ・ドリーム
グリーナリーは、ローズクウォーツやセレニティといったパステルカラーとも好相性。パステルカラーの柔らかさ、軽さは、人々を重力から解き放つような効果をもたらします。グレーを加えると落ち着きが生まれます。
■ネイティブ・インスティンクト
アースカラーをつかったカラーパレットにも、グリーナリーはアクセントカラーとして、新しい調和をもたらします。メタリックな素材やテクスチャーにすると、ネイティブな雰囲気がより一層高まるでしょう。
■フローラ・アバンダンド
大輪の花を描いたフローラ柄もトレンドのひとつ。深みのあるパープル、豊かさをもたらすオレンジに、鮮やかなグリーナリーを組み合わせると新鮮です。
■グラフィック・インプリント
白黒のモノトーン配色は、グラフィカルなプリント柄で取り入れるのが、2017年のトレンドです。アクセントカラーは、鮮やかなイエローやグリーナリーが効果的。スポーツシーンにも好適なカラーパレットです。
「レスキュー(再活用)」というコンセプト
「グリーナリー」は、自然を想起させるナチュラルな色。グリーンの中でも、イエローを多く含んでいるので、気分を高揚させ、希望を育む色です。世界各地で都市化が進行する一方で、自然を大切にしたいというマインドも高まってきています。リサイクルやリユースに続くコンセプトとして、アイズマン氏は「レスキュー(再活用)」というキーワードをあげました。グリーナリーは、呼吸を深くして、スローダウンすることの大切さに気づかせてくれる色。古いものに新しい命を吹き込み、再活用することが、ますます重要になっています。グリーナリーが選ばれた背景には、社会的な意味があるのです。
毎年12月に発表される「カラー・オブ・ザ・イヤー」は、春にディスカッションを始め、夏が終わる頃には決定しているそうです。過去の「カラー・オブ・ザ・イヤー」から切り替えてしまうのではなく、新しい色を加えることによって、新しいカラーバランスを生み出すことが目的です。例えば、2016年のローズクウォーツとセレニティに、2015年のマルサラに、グリーナリーを合わせると、新しいカラーバランスが生まれます。
「岐路に立つ色とデザイン」という講演のタイトルが示すように、この色とこの色を組み合わせて使いましょうというカラーコーディネートの伝統的なルールにとらわれる必要はありません。しかし、色づかいに迷ったとき、「グリーナリー」は新しいカラーハーモニーを生み出すひとつのきっかけになるでしょう。
【取材協力】
- 株式会社ユナイテッド・カラー・システムズ
- エックスライト社
【ガイドからお知らせ】
ウェブアンケートを活用して、カラーリサーチを実施しています。匿名でご回答いただけますので、ご協力をお願いいたします。アンケートの結果は、今後の記事に反映させていただきます。
【関連記事】
- 今すぐ買える!? 2017年春夏トレンドカラー3選
- 2016年注目の色は?米と日本で選ばれた意外な色を分析
- 2015年のトレンドカラー「マルサラ」のコーディネート
- 2014年の色「ラディアント・オーキッド」を先取り