どこでもできる仕事だから、ペルー時々長野。柏木珠希さん(長野県)
アマゾンで魚釣り中の柏木さん
千葉県柏市で生まれ、一時は湾岸のタワーマンションに居住していたものの、その後一人で房総を経て長野の古民家に移住。結婚後はペルー駐在の夫と南米で暮らし、帰国時は長野でスノボ三昧という柏木珠希さん。どこに住むかについては「土地にはこだわりはない」ときっぱり言う。
女ひとりで長野の古民家に移住
「中学校から私立に通っていたため、地元には友達もおらず、愛着はありません。就職せず、学生時代からやっていた雑誌などのバイトの延長でフリーランスのライターをしているため、仕事自体はどこででもできる。そんな状態で湾岸のタワーマンションに住んでいた時、長く付き合っていた彼氏と同棲を解消することになり、だったら東京ではなく、田舎に住んでも良いんじゃないかと思ったのが田舎暮らしのきっかけです」。食の安全を気にしていたこともきっかけになった。せっかく無農薬野菜を宅配してもらっても、そこでゴミがたくさん出るのは無駄。だったら、自分で作ってしまえば食の安全、ゴミ問題が同時に解決できると思ったのだという。また、当時聞いた地方でのビジネスの可能性もヒントになった。
「地方の家賃は東京の5分の1、場所によっては10分の1と安く、でも、だからといって食べ物の価格はそこまで安くはなってはいない。食べる時間もどこでも変わらない。つまり、地方では固定費をあまりかけずに商売ができるわけで、これは面白いかもしれないと考えました。実際、地方の人気飲食店の多くは移住者がやってもいます。私自身一時期古民家を改装したカフェをやっていたこともあり、地方には可能性があるんじゃないかと思ったのです」。
最初に訪れたのは千葉県いすみ市。房総と東京で二拠点生活を送っている人と知り合ったためで、ここには移住者をサポートするNPOもあり、女性のおひとりさま居住も少なくないとか。だが、畑付きの農家を探していたため、家探しは難航。そんなところに長野県で手頃な物件が出た。そこで、地縁も何もない状態で長野県への移住を決めた。
東京2時間圏なら朝スノボ、午後東京でコンサートも可能
長野で借りていた古民家。水道が凍るなどのトラブルもあったが楽しい生活だったとか
インターネット、宅配便のおかげで生活はそれほど不自由ではなく、静かで良く眠れる、食べ物がおいしいというメリットも。都会に住む友達ともSNSのおかげでリアルに会っていなくても、いつも会っているような感じとか。もちろん、地域によっては都会より濃厚な人間関係、寒さや虫の問題などもあるのだろうが、柏木さんの場合には総じて問題はなかったとか。
そして、長野にいる間にネットで婚活。海外でコンサルをしている男性と知り合う。「さびしがり屋な人で、出張もすべてついて来て欲しいと言われ、インド、フィリピン、ラオス、ベトナム、中国といろいろな国に行きました。2014年にペルー駐在になり、結婚。今は1年のうち、半分以上はペルー。横浜出身の夫もスノボ好きなので、帰国時は長野で生活、現在、家を建てています」。
東京は仕事で利用する場所
世界的に有名なペルーのマチュピチュで。アジアの国々に比べるとペルーは比較的日本に近い律義さがあるという。「アジアで2~3時間遅れが当たり前だとしたら、ペルーは30分くらい」
2011年に東京を離れて以来、世界中で暮らしてきた柏木さんだが、もう東京には住めないと思っているという。「友達もいるし、仕事には来ますが、最近、東京は仕事で利用するべき場所で住むところではないかなと思うようになりました。大体、人の流れについていけない。人を除けながら歩けないんです。以前はそれが当然だったのですが、海外ではもっとゆっくり。ペルーは比較的日本っぽく、30分遅れの印象ですが、他の国は2時間、3時間遅れも普通。東京は忙しすぎますね」。
ところで、最後に柏木さんがこうしてどこででも暮らしていけている理由をもうひとつ。フリーランスであることに加え、柏木さんは都内に不動産を所有しており、それが稼いでくれているのである。「フリーランスだと経費を使って赤字を作り、税金を払わないようにしている人が多いのですが、それでは融資は受けられない。私は自分の仕事を黒字化、借金をできるようにして不動産を購入しました。物価の高い東京の不動産で稼ぎ、物価の安いところで暮らす。これがもっとも効率のいい暮らし方じゃないんでしょうか」。
東京と、不動産とどう付き合うか。考え方は人それぞれだが、不動産は使い方次第で自分の人生に選択肢を与えてくれるものであることは確かだ。
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